264「有機ELの研究」(5月20日(木曜日、雨))

第3チャンネルで「勝つための国家プロジェクト」。山形大学城戸教授を中心とする有機ELの研究をやっていて興味深かった。なおこれについて京セラがこの分野に進出することに関連し、1月15日の日記で書いている。また1月30日には青色発光ダイオードの発明者中村氏に200億円の支払いを命じた判決について書いた。

現在山形大学では、2007年に有機ELで60インチの大型デイスプレイを作る事、紙のように曲がる有機ELを作る事を目標に、50億円の国家予算がついたプロジェクトが進行している。大手企業12社が参加している。
有機ELはある有機媒体に5-10Vの直流電圧をかけると、光の3原色である赤色、青色、緑色に発光することを利用する。しかし3つを混ぜても、光のように白色にはならず、赤色を発光するものしか作れない事が悩みの種だった。
教授は1985年米国での研究生活を終えて帰国してから、この研究に取り組み始めた。どうやったら白色有機ELを作る事ができるか。
あるとき学生が調合比を間違えたところ、赤みがかった白に発光した。学生は「失敗した。」と思ったが教授はひらめいた。調合比率を変えれば白色有機ELが出来るかもしれない!その結果赤色や青色をだす成分を減らすと見事に白色に光る事が分かった。3原色をフィルターとするパネルを作る技術は液晶開発で完成していたから、バックに出来上がった白色発光体フィルターを挿入し、有機ELパネルが出来上がった、という。

さら教授によれば「有機ELは究極のデイスプレイである。この技術はテレビや携帯電話の画面ばかりでなく電球など一般光源として広く用いられる事が期待される。」
教授が85年に戻った当時、大学は荒れており、ひどいものだった。教授は実験装置を少ない予算で手作りした。「装置を作る事が勉強です。人の作った機械で製品を作り、壊れれば修理を依頼するようなことをする。そうすると技術は機械メーカーにしか残らない。」これはそのとおりと実感する。
現在は、国家プロジェクトにまでなったからなかなか立派な実験装置を所有している。

研究は集中研方式というのをとっている。
各企業の研究員が山形に全員集まり、そこで一緒に研究をする。従来の研究方式は分散型で与えられた予算を企業や研究機関で分割してそれぞれが研究し、成果を持ちよるものだったが、その方式だと責任を取るところがない、トップ企業が参加せず、2番手,3番手のみの参加というケースが多い。集中方式はそれを防ぐ事が出来る。そして「今では一つの企業だけで海外の巨大な勢力に対抗できない。勝つために力を集中せよ。」
これはそのとおりだが、大学側の論理という感じもする。企業はやはり自分のところで技術を育てようとする、そこをどう調節するか。

番組では現在抱えている有機ELの問題点を指摘していなかった。
寿命が短い、大型化、量産化が難しい、そんな理由で現在ではまた携帯電話のデイスプレイくらいにしか使われていない、とは1月15日に書いたとおり。その辺を克服し、一刻も早くプラズマデイスプレイ、液晶デイスプレイを追い越す技術を確立し、技術立国日本の復権を図ってもらいたいものである。

参考「京セラが有機ELに参入」(1月15日(曇り))
株を少しでも持っていると、日経新聞のでる当該会社の記事はひどく気になる。
京セラが有機ELに参入するという記事があった。また日立造船の株価が少し上がったがこれも同社が造船のみでなく有機ELを手がけ始めたからだと言う。そこでウエッブサイトで分かる範囲でしらべてみた。
昔は画像表示装置を言えばブラウン管つまりCRTであった。たった一つの電子銃から発した電子ビームを振り画面の左上から順次走査していった。しかしこの方法だと大型デイスプレイになったとき、発光の時間的ずれが生じ画面のちらつきを感があらわれてしまう。
液晶デイスプレイは2枚のガラス板の間に特殊な液体を注入し、電圧をかけることによって液晶分子の向きを変え光の透過率を増減させる。液晶自体は発光しないから、背後に仕込んだ蛍光灯(バックライト)の光を使って表示を行う。デイスプレイの厚さは5センチ前後、消費電力が半分以下、目に優しく、当初心配された寿命も60000時間と大幅に延び普及した。唯一つ問題だった大型化も今では数十インチのものが作られ大幅改善。
PDP(プラズマデイスプレイ)は、分かりやすく言えば微細な蛍光灯の集合体。電極を備えた2枚のガラス基盤に電圧をかけて放電させ、紫外線を発生させる。これがRGB3色のセルで構成され蛍光体を一斉に発光させて映像を再現する。そのためセルをつないで行けばいくらでも大きなデイスプレイを作るころが出来る。CRTに比べれば厚さ10分の1、重量6分の1、LCDの欠点であった視野角も広い。価格が問題だったが、それも最近は1インチ1万円に近くなっている。しかし消費電力はLCDが標準150Wに対し、PDPは250Wと大きく、基本的には小型化が難しい。
しかしこれらの分野では日本は韓国や台湾企業の攻勢にさらされている。有機ELは日本が新たな薄型表示装置事業の柱として期待しており、三洋電機や東北パイオニア、さらにはソニーが本格的な生産に乗り出そうとしている。
これは電圧をかけると発光する物質を利用したデイスプレイ。発光体をガラス基盤に蒸着し5-10Vの直流電圧をかけて行う。発光体にジアミン類などの有機物をつかうことからこう呼ばれる。別に無機ELというのもあってこちらは硫化亜鉛などの無機物を使う。こちらは高 輝度の青色発色体が未発見であることからカラー表示が難しいなどの問題点があり用途が限られている。自己発光の素子である事から、バックライトを必要としない。視野角の制限がなく、レスポンスもLCDより早く,低消費電力で高輝度、薄型化がはかれるデイスプレイとして期待されている。
問題は大型化、寿命、量産化などのようだ。
寿命は進歩したとはいえ6000-10000時間程度。
大型化についてウェッブを調べたところ、ソニーが2001年に14インチの有機ELテレビを開発する、これが有機EL技術のブレイクスルーになるだろう、というような発表を行っていた。しかしその後これについて報道がないところを見るとまだ無理らしい。したがって当面は携帯電話用、デイジタルカメラの表示用などに出荷されている。
今回京セラは台湾の奇美電子から関連特許などを取得、ライバル企業より3割程度安い生産技術を利用して2005年末までに量産を開始する。具体的には基盤にアモルファスシリコンTFT(薄幕トランジスタ)を使い、液晶パネルなどにも利用されている生産技術を応用すると言う。パネルの寿命も年末までに20000時間程度まで引き上げるそうだ。
なかなか技術は難しい。うまく行けばいいのだけれど・・・・。16日の日経夕刊のトップにプラズマTV大画面化、電機各社、相次ぎ60インチ級、液晶とすみわけの文字が躍った。それによると32インチを境にそれ以上は現状ではプラズマTVの方が安いようだ。世界市場の80%を占める松下など4社はこれまでは40インチ前後が主流だったが、60インチも増強するという。もし小型を有機ELがしめるとすると、液晶とあわせてこれから三つがすみわけをするのだろうか。

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