63歳である。よくまあ、ここまで元気に生きてきたと思う。
先日ガールフレンドのAさんと天気もよいからどこかへ、と考えた末、靖国神社に行った。遊就館というのが庭の一画にあり、1階ホールにはゼロ戦戦闘機やあの戦場にかける橋で有名になった泰緬鉄道で使われた機関車、大砲などが展示されている。その隅に500円で生年月日を入れるとその日の毎日新聞の1面、2面を印刷してくれる機械がセットされている。Aさんが早速やってみたところ昭和17年の彼女の誕生日の新聞が出てきた。
私もよほどやろうか、と思ったが、1日だけじゃ大したことも分かるまい、とケチンボウを決め込んだ。しかし何となく気になり、我が家に戻り、毎日新聞社の「昭和史全記録」を紐解く。昭和16年5月、日本は12月に真珠湾攻撃を行うが、もうこの時期にはその準備段階ともいえる行動を次々に打ち出している。次のような記事が載っていた。
「国民生活動因本部」大政翼賛会内におかれ、興亜奉公日をさだめ、鉄・銅の回収運動、食料増産運動、貯蓄奨励、新生活運動などをおこなう。
「国防保安法と防諜週間」スパイ活動を紹介し敵愾心をあおり、戦争の実態・批判を噂・デマとして封殺するためあらゆる策がとられ始めた。国民は見ざる・言わざる・聞かざるが生活の知恵としてささやかれた。
「予防拘禁所創設」治安維持法の強化で、過激思想を放棄せず、再犯の恐れがある者はぶち込んでしまおう、というもので、宮本百合子等多数がこれで拘束された。
さらに酒が切符制に満25歳以上の男子に3ヶ月で4合半を配給とすることが決められた。また待合・芸妓置屋などが業務用の米の配給をうけるため、飼い猫や飼い犬、たとえば「ミイ子2歳」「玉吉6歳」などと申告し、摘発を受けている。
そうした一方生めよ、増やせよ、を推進している。「婚費貸し付けと子宝手当て」がそれで、結婚費用1000円までを貸し付け、返済は子ども1人で250円カットされるなどの制度である。6人以上の多子家庭には平均月10円の「子宝手当て」を出すことにしている。こんな制度、今の日本で導入する、というのはどうかなあ?
一方米国はドイツとの戦闘に備え「国家非常事態宣言」を行い、臨戦態勢をルーズベルト大統領が宣言している。
囲み記事に「日米戦力比較」がでている。日米交渉のため渡米した大佐で中央銀行理事であった井川という人が、アメリカの戦力を説明している。
・石油産出量 一億1000万バーレル 日米比率 1対数百
・飛行機生産 十二万機 日米比率 1対5
・船舶保有量 一千万トン 日米比率 1対2
・工務労働者 三千四百万人 日米比率 1対5 等々
これだけ、分かっていながらよくもあの戦争をはじめたものと感心する。
唯一の明るいニュースといえば巨人軍が22勝6敗の圧倒的成績で5季連続優勝、巨人軍川上哲治一塁手が4度位目の首位打者に輝いたくらいである。
この本には書いていないが、この月、もう一つ重大な事件が起こった。
24日に横浜のとある病院で半分死にかけた赤ん坊が生まれたのである。出てくるときにへその緒が首に巻きついたのだ。医者が逆さにして、尻をポンとたたくと水を吐いた後、オギャアと小さな声をあげた。それから60年余り、その子が、密かに太平洋戦争を終らせ、戦後の復興をなしとげ、バブルを膨らませ、そしてはじけさることを誰が予想したしたろうか。誰も予想をしなかったし、そんなことには全然ならず、3年前に定年を迎え、今惰眠をむさぼっている・・・・。
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