279「世界の中心で、愛を叫ぶ」(7月18日(日 晴れ))

「一番前の席しかあいていませんが、よろしいですか。」いいよ、と答えて切符を買い、中に入ると2番目の列の席が一つあいていた。「そこ、あいてますか。」「あ、どうぞ。」と若い女性が席をあけてくれた。
「偏差値、低いから結局近くの高島にしちゃった。」高島というのはどこにある学校なのだろう。右隣の女性は大学生になったばかりらしくボーイフレンドとの話に夢中。左隣の女性も彼氏と一緒。後ろを見ると狭い劇場は、こういった若いアベックと女性客でほぼ満席・・・・・何か場違いなところに来た感じがする。
新宿で映画でも見ようと、探してなんとなく「世界の中心で、愛を叫ぶ」を選んだ。ところが後で聞いたところ、今時、大ヒットしている映画なのだそうだ。

台風29号が接近するとき、朔太郎(大沢たかお)の婚約者律子(柴咲コウ)が失踪した。偶然に見つけたテレビ画面から律子の行く先が四国高松と分かり、朔太郎が追う。しかしそこは初恋の相手アキ(長澤まさみ)との思い出の残る場所。
12年前、高校生だった朔太郎(高校時代=森山未来)とアキは一緒にバイクで遊び、ラジオ番組に投稿し、ウオークマンで交換日記をやり取りするうちに恋に陥った。そして無人島での一泊・・・しかし白血病と診断されたアキに残された時間は少なかった。ウエデイングドレスをつけて写真を撮り、最後に台風が接近する日、朔太郎は髪の抜け落ちたアキを病院から連れ出し、あこがれのオーストラリアの神聖なる土地ウルルに向かおうとするが、アキは空港ロビーで倒れた・・・・。
現在。思い出の迷宮をさまよう朔太郎と律子はやがて隠れていた「真実」を手繰り寄せる。そして伝えられなかったアキの最後のメッセージが、彼らを空港で再会させ、さらにあのウルルにいざなう・・・。
朔太郎が髪の抜けたアキと会うあたりで、場内からはすすり泣く声が聞かれた。
「人が死ぬということは大変なことだよ。残された人間のできるのは、後片付けだけだ。」「天国は生きてる人間が考え出した言葉だよ。」「死んだ人は生きている人の心にシミのように残る」など、写真館の主人重蔵(山崎努)の言葉がなかなか印象に残った。映画のプロットはそれに近いことを自分自身も経験したから妙に切なかった。

朔太郎とアキの恋をロケした庵治町は、インターネットによれば、瀬戸内海国立公園の東中央部にある東西3.7キロ、南北4.3キロの美しい半島。三方穏やかな海に囲まれ、沖には兜島、鎧島、高島、稲毛島などの無人島が存在する。人口6700、香川県屈指の漁業の町、北に海をへだてて小豆島、西には源平の古戦場屋島が見られるという。町の様子もうまく紹介され、ちょっと行きたくなる。
監督は今日本映画界で注目されている行定勲、主題歌「瞳をとじて」は平井堅、原作は片山恭一で、2001年4月に出たが、02年から03年にかけて大ヒット、04年3月には171万部を突破した・・もっとも世代の違う私は、監督をギョウテイと読むのかユキサダと読むのかかさえ知らない・・・・。

しかし出口に向かう若者たちは「思ったよりよかった。」など一応に満足した様子だった。言ってみれば純愛路線、ラブストーリー・・・・でも現在は核家族化が進み、個人主義化が進み、なんとなく殺伐とした時代、だからこそ逆にこういう話が受けるのかも知れぬ、などと勝手な解釈をする。

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