295「華氏911」(9月23日(金)曇り)

マイケル・ムーア監督の話題の「華氏911」を見る。
あまりに過激に反ブッシュとアンチ戦争一辺倒であるため、全米配給ミラマックスが親会社のデイズにーからの政治的圧力で全米での配給を拒否、一時は公開が危ぶまれた。しかしカンヌで国際映画祭最高賞パルムドール、国際批評家連盟賞をダブル受賞したことが追い風となって、権利を売却、約1000館で全米公開された。

大統領に選出されるも、不人気と成ると仕事を放り出してゴルフ三昧のブッシュは、911事件以来突然ハッスル、ビンラデインをかくまっているとアフガニスタンをつぶした。さらに大量破壊兵器を隠し持っている、アルカイダの拠点などと非難し、一方的にイラクに戦線布告、しかしそれはイラク民衆の途方もない反発を産んだ。それらが生み出す悲劇をイラク市民、アメリカ兵双方についてこれでもか、これでもかと描き出す。911事件を叫び声だけで示すところも優れているし、個々の画面にも迫力がある。加えて後半では息子を失ったあるアメリカの母親を描くなどドラマ性も十分。ブッシュの選挙での勝利が多分に怪しげだ、ビンラデインとブッシュに関係があった、チェイニー副大統領が代表を勤めた石油会社がこの戦争で莫大な利益を得た、など多くの耳新しいエピソードがちりばめられているところも面白い。

しかしながら私は感じるのだ。まずこの映画を「ドキュメンタリー映画」とは呼びたくない。ドキュメンタリーは、事実をいろいろな角度から伝えて、見るものに判断させ、納得させるものと思うが、この作品はそういった総合的捕らえ方はしていない。
「エンターテイメント作品」とも呼びたくない。ブッシュの行動が誤っていたにしても、それなりに行動する理由があったはずだ。そこを認めず茶化しているように見える。ブッシュをあざ笑い、バカにするほどの太っ腹を、私は持ち合わせてはいない。
呼ぶとすれば「プロパガンダ映画」とよぶべきもののような気がする。なぜなら監督の強烈な意見がセットされていて、それに沿った内容をこれでもか、これでもかと流し、最後はお涙ちょうだい的に家庭のドラマまで見せるのだから・・・。

イラク戦争は結果として間違っていた、結局は貧しく力のない人たちが戦争の犠牲になる、そういうようなことはよく分かる。それだけでこの映画はカンヌで賞を得ただけの価値はあるのかも知れぬが、私自身が共鳴するか、と聴かれるとどうも答えにくい。

あれこれ考えながらウエッブサイトを開くと、ようようの意見が出ている。その中で目に付いたもの・・・・もちろん私の恣意的選択、コメントはあえて述べない。
「反米映画じゃなくて、反ブッシュ映画だからな。ブッシュが政権を維持するため、またはその背後にある利権のためにアメリカ人やイラク人の意見をないがしろにしたのではないか?というのが本作のテーマであるわけだが・・・。」
「ネオコンとか福音派とかには全く触れなくてよいの?ブッシュとラデインに関係があると暴露するなら、その関係あるラデインがなぜ911を起こしたか考察してほしかった。」
「イラク戦争は間違ってるなんてことはアメリカ識者の中でも結論になってるの。だけど、アメリカ世論はイラク戦争礼賛、日本の世論もイラク戦争追従 世論は何も考えないままなの。だからそういう無知な市民に考えさせるために、ムーアは華氏911を作ったわけ。」
「違うよ。無知な市民が「反ブッシュ」で思考停止するようにムーアはこの作品をつくったんだよ・・・・ブッシュ共和党を取り上げるが少なくともそれに対する民主党の問題も描くのが当然だろうよ」
「911の支持者はお花畑な無責任馬鹿ばかり。日米同盟の下で繁栄と安定を享受しながら反米を叫ぶって滑稽だね」
「日本人ならブッシュが負けたら笑えないだろ。現政権が日本に対して弱腰だと批判する反日アゴ野郎に勝たれたらたまらん」
もし、読者でもう見たという人がいるならご意見をお聞かせ下さい。

なお911は広告には「自由が燃える温度」などとしているが、9月11日とひっかけているだけで大きな意味はない。ちなみに華氏911度は摂氏488度。かって「華氏451度」という映画があったことを思い出す。あちらは本の発火する温度で消防士の映画とか。またこの映画に対抗して、共和党支持の監督が「摂氏41.11」を製作、ワシントンで公開される予定とか。摂氏41度は熱で脳の機能が停止する温度だという。

註 ご意見をお待ちしています。
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