298「イチロー、すごい」(10月2日(土)晴れ)

イチローがアメリカでとうとう年間最多安打記録を更新した。すばらしいの一語に尽きる。プレッシャーの中で、無安打の日がなく、最後は3安打の固めうち、技術とその落ち着いた心意気に感激し、脱帽する。「シスラーが作った記録は154試合で作った、162試合で作ったって意味がない。」などと言う者もいるそうだが、これはこれ、素直に喜びたい。

イチローは本名鈴木一郎。1973年10月愛知県生まれ。右投左打、外野手。愛工大名電で甲子園に2度出場し、いづれも初戦敗退。1992年、ドラフト4位、年俸430万でオリックスに入団。決して最初からトップの位置にいたわけではない。
2年の下積生活を経て、仰木監督就任の1994年、200本安打(最終成績210安打、歴代1位)を達成し、打率.385で首位打者を獲得。以後7年連続首位打者獲得。
2000年12月、14億円の移籍金で大リーグ、シアトル・マリナーズと契約。日本人野手として始めての大リーグとなる。そして30歳にして今回の年間最多安打記録。まだまだ若くこれからの活躍が期待される年齢である。
彼独特の振り子打法は、足を投手側に上げてゆるやかにタイミングを取りながら、足が戻る反動を利用し、打つ瞬間の軸足が投手側の足になるといううち方。王選手の一本足打法を思いだす。女流プロゴルファー樋口の華麗なスイングを思い出す。
一方今回対象となった記録を保持するジョージ・シスラー選手は1883年生まれ、ミシガン大学を卒業後、ブラウンズに入団。当初は投手として、後に打者として活躍。1920年37歳でア・リーグで.407という驚異的記録で首位打者となり、257安打をはなっている。

新聞報道によれば、イチローの記録を「内野安打のおかげ」「ソフトボールのような走りうちに価値はない」とからかう向きもあるとか。イチローの身長は、はっきりしないが180センチくらいらしい。2メートルの巨漢が並ぶ中ではちびっ子である。その中で能力を発揮しようとした結果、あのようになったことで気にすることはない。
打撃は、飛んできた球に強く振ったバットを正面から当てればよい。ただ投手の手元から捕手のミットに納まるまでに0.3秒かそこらしかない。最初の3分の1くらいで曲がったり沈んだりする。それをよく追って判断し、バットの振り出しを若干修正する。正確に修正するためには「呼び込んで打つ」という技術が必要という。その結果、たとえば外角に来た球はあのように体を開き気味にカットするように流し打ちすればいい・・・・言うはやさしいが、実際は大変。「野球少年ですよ。」とコメントを求められた佐々木投手が言っていたが、練習のたまものなのだろう。イチローは、その上足が速い。あの足で凡打を何本安打にしてしまったのだろう。守備もいい。何度華麗な守備を披露、味方を救ったことか。なんという選手なのだろう。

記録を達成した安心感からか今回は記者会見の舌もなめらか。イチローの言葉には、なかなか印象深いものが多い。シアトルでの一問一答の中から
「僕がこちらに来て思うのは、体がでかいことに、それほどの意味はないということ。大リーグでは、僕は一番小さいけれど、こういう記録ができた。日本の子どもにも、アメリカの子どもにもいえると思うけれど、大切なのは、自分の持っているものを生かすこと。そう考えられるようになると、可能性が広がっていく」
この言葉は我々一般の人間にも何かしらその生き方に示唆を与えているように思う。老いを嘆いても仕方がない、野球の能力がないことを嘆いても仕方がない・・・。

最後にイチロー効果に注目したい。最下位のマリナーズは多くのお客を呼べたし、何より米国人の日本人に対する理解を深めた。ふとヨンサマのおかげで韓流ブームが日本におこったことを思い出す。あれが両者の偏見とわだかまりを減らした効果は計り知れない。ナントカ賞をあげる、などというのも今後でるかも知れぬ、などと思ったりする。

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