自衛隊員ほど気の毒な商売はないと時々思う。何時爆弾が飛んでくるかも知れぬイラクにやられ、災害があれば飛んでゆくなど、世のため、人のため、働いているように見えるのに世間様の評価があまり高くないようだ。それを反映してか陸上自衛隊の定員は16万人だが、大きく定員割れしているのだという。
しかし今の私たちの幸せはやはり自衛隊あってこそ、という面が否定できない。中国潜水艦の領海侵犯問題、北朝鮮のスパイ活動、今回の拉致被害者のホネがインチキだった事件、そういったことに多少でも言おうとすればやはり軍事力の裏づけは必要だ。
新防衛大綱が閣議決定した。その内容が新聞発表されたので、喫茶店で読みふけった。家に戻って不足のところをインターネットで調べるなどした。
最初の防衛大網が作られたのが1976年、この頃、日本周辺では米中ソの一種の均衡状態が成立する一方、依然として朝鮮半島では緊張状態が継続していた。こんな中で自らが周辺の空白地域への侵略を招かないよう必要最小限の防衛力を保持する、との考えから基盤的防衛力構想が示された。
二度目の大網は戦後50年の1995年に策定された。すでに冷戦終結で世界的な武力紛争の可能性は遠のいていた。極東ロシア軍にも削減の動きが出始めたものの、依然として核戦力を含む軍事力が存在したから、基盤的防衛力構想を踏襲、防衛力の規模、機能を見直し、合理化を一層すすめることとした。
そして9年後の今日、2001年9月に米国の同時テロが発生、国際的なテロ組織対策、大量破壊兵器の拡散防止などが差し迫った課題として浮き上がってきた。日本周辺ではロシアの脅威が消える一方、北朝鮮の大量破壊兵器や台湾海峡等をめぐる中国との関係が対処せねばならぬ問題として浮かび上がった。
今回は予算の厳しい中、決定過程では防衛庁と財務省とが鋭く対立した。方針は、従来どおり日米安全保障条約を重視し、その元で動くことは変わりない。武器輸出三原則を見直すのも日米の技術開発をスムースに進めるためのものだ。
「米国との安全保障体制は、わが国の安全確保に不可欠なものであり・・・」
「日米の役割分担や在日米軍の兵力構成を含む軍事態勢等の安全保障全般に関する米国との戦略的な対話に主体的に取り組む。」
一方で国際連合の枠組みのもとでの国際社会との協力関係を重視する姿勢が打ち出された。
特に変わったのは陸上自衛隊の役割である。陸上自衛隊は5000人減らされ、15万5000人(この数は人口2300万の北朝鮮が120万であること等と比較すると驚くほど小さい)装備と機動性を重視し、少数精鋭で行く。北海道の守りを薄くし、沖縄など西側にシフトした。一方でテロ発生時や海外派遣などに対応するために、中央即応集団を設けている。
防衛力の在り方で、「新たな脅威や多様な事態への実効的な対応」として5つの項目をあげている点を注目。これだけでも何を重視しているかはっきり分かる気がする。
(1) 弾道ミサイル攻撃への対応
(2) ゲリラや特殊部隊による攻撃への対応
(3) 島嶼部に対する侵略への対応
(4) 周辺海空域の警戒監視及び領空侵犯対処や武装工作船への対応
(5) 大規模・特殊災害への対応
このうちミサイル防衛では、攻撃があった場合、イージス艦(海軍)がレーダーによって探知、追尾し、大気圏外でミサイルSM3により迎撃する。それをかいくぐってきた場合、大気圏再突入時に地上レーダー(空軍)がパトリオット迎撃ミサイルPAC3を発射して対応する。しかし北朝鮮が弾道ミサイルを発射した場合、発射から着弾までに10分程度しかなくなる。そこで日本として発射までの意思決定の手続きをどうするかが課題になってくる。またミサイルが日本ではなく実は米国を目標としていたような場合に、攻撃することは憲法が禁止する集団的自衛権の行使に繋がるからややこしい。
今回の見直しについて野党は「米軍と一体になって世界のあらゆる地域に軍事介入する体制をめざすものだ」「武器輸出三原則の見直しに踏み込むことに抗議する。」などと反発している。私はここでは防衛大網の内容やその反対意見にコメントを加えるつもりはない。ただ自衛隊の仕事というのは大変だな、十分尊敬に値する、国民も国防に対する意識をもう少し持つべきではないか、と考えている。みなさんはどう思いますか。
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