正月3日目、幼いころから親しい知人の家にゆき、昼飯をご馳走になりながら、楽しいひと時をすごした。
「マイレージがたまったので、ホンジュラスに蝶を採りに行ってきた。」
「ホンジュラス、そりゃ、どこにあるんだい。」
グアテマラ、ニカラグア、エルサルヴァドルに囲まれた中米の国。面積約11万平方キロ、日本の約3分の1。人口720万人、首都テグシガルパ。ヨーロッパ系・先住民混血91%,その他9%。スペイン語。伝統的にカトリックだが信教の自由を憲法上保障。1502年コロンブス発見、1821年独立、1982年民政移管、2002年マドウーロ大統領就任。
それにしてもなんでそんなところに目をつけたのか、を考えているうちに、彼は、シカゴで1年仕事をして戻ったばかりだ、と気がついた。シカゴからなら、中央アメリカは日本から台湾に行くようなものなのかもしれない。
「自身も蝶採集の好きなガイドを雇って、熱帯雨林の道を結構歩いた。1時間に1度くらいはモルフォ蝶が飛んでくるという岩の上に陣取ったが、前は川、左右は滝。妙な棒がおいてあったが、落下防止のためだそうだ。二度目に青い羽を光らせながら飛んできたときに、もう少しで採れそうだったが、足を滑らせて失敗した。」
それにしてもホンジュラスねえ・・・・・。近年、私と彼は1年に1度くらい一緒に旅行している。
「また、一緒に旅行しようよ。だけど君と蝶々採集は無理だなあ。だって熱帯雨林の道なき道を何時間も歩くんだから・・・。」
言われなくても私は辞退する!
思い起こしてみると、彼は子どもの頃から昆虫採集が好きだった。あの頃はむしろ蜂に凝っていた様におもう。ずいぶん表彰もされたようだ。
一方で、彼は私など足元にも及ばぬ器用さをもっている。庭いじりや日曜大工が大好き。書斎の机もヴェランダも自分で作っている。今日は階段の壁に埋め込みで作った本棚を見せてもらった。外からたたいて、ここは中が空洞と分かったから、そこをくりぬき、丁度CDか文庫本の入る本箱をつくり、小さな受け柱を作ってその上にセットしたらしい。散水栓も作った。プラスチックの水道管を分岐してのばし、二俣コックをとりつけ、一方にはタイマーまでつけて、庭の草花に時間が来ると自動的に散水するようにした。思わず「僕もやってみようかな。」というと「面白いよ。だけれど一つだけ注意しなければならない事がある。やり始めたら完成まで完全にやらないと、家中の水が出なくなるよ。」
そんなだから採集した蝶の後処理なども完全である。採った蝶々は一度冷蔵庫にいれておくとかなんとか、いろいろノウハウを聞かせてくれたが理解しきれぬ。
書斎の机の下から、そおっと展翅版を取り出し、これが今回、そっちは前回ブラジルで採ってきたものだ、とみせてくれた。きれいな、もちろん見たことのない蝶が沢山!
「蝶々採集を通じて仲間と知り合い、飲んだりするのも一つの楽しみだ。」ともいう。それはそうだろう。「しかし僕はこれで商売しようとか、論文とかを書こうとかいう気にはならない。」純粋に趣味として満喫しているのである。
奥さんが時々皮肉交じりで言うのだそうだ。「あなたが亡くなったらその標本,どうなるか分かっている?みんなゴミ箱行きよ。」すると彼が怒る。「うるさい、過程が大事なのだ。採集して整理して・・・・・。」
これはしかし男と女の物事に対する考え方の違いのように思う。女はもちろん例外はあるが、役に立たないことはしないように思う。目的志向である。そこに行くと男はバカみたいに(ゴメン、ゴメン、XXさん・・・)夢を追い求める。私の周りを見渡すと、油絵に没頭する、つりに没頭する、はては謡曲だ、尺八だ、写真だ・・・・と夢中になっている。そういえば勤めていた会社でオエライサンになった某君はずばり、彼と同じ蝶々が趣味だといっていた。みな趣味のおかげで豊かな人生を送っているように見える。感心すると同時に尊敬し、そういった人たちの情熱が羨ましくなる。
私にはなかなかその情熱が生まれない。ところがこの気持ちを別の友人に話したところ「そんなことはないさ。君だって、大して読まれもしない通信を熱心に書いているじゃないか。それにどこを鍛えているか知らないが、ラジオ体操だって・・・・」黙れ!黙れ!
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