郵便ポストに一通のロイド銀行からの手紙。急いで開封すると、英文でごちゃごちゃと書いてあるが、要は「15年前にお預けいただいた物品の保管期限がきれました。5年分の保管費用を至急お支払い願いたい。お支払いいただけない場合、当該物品は処分されます。」
父は3年前に亡くなったが、変わった遺言をした。
「あれについては、ほかの相続人には内緒で、君一人で、納戸の奥にしまってある黄色い油紙に入った文書を読んでから、結論を出して欲しい。」その文書は3センチも厚さがあり、しかも仏文で書かれていた。私がようやく読み終えたのは昨年秋である。
1989年から91年にかけて、私はイギリスに単身赴任していた。父は何度か来英したが、私と過ごす時は少なく、同行した仲間とロンドン、パリ、ギリシャ、アラブ諸国など、幅広く跳び歩いていた。しかし仕事の内容については一切私に語らなかった。
文書はその仕事の内容を裏づけ資料とともにまとめたもので、オフィシアル用と個人用の2種類があった。しかもその内容たるや驚きであった。
「私(父)は、若い頃から油絵が特技で、いくつもの賞を獲得し、現役時代は少し休んでいたものの、絵筆は休ませず、定年後はいっそうそれを発展させるとともに、多くの画の会の幹事等になった。次第に顔役になり、あるときから政府の機関で嘱託として助言するようになっていた。1990年ころ、日本はまさにバブルがはじける直前だった。私は群馬県の委嘱をうけて、専門家数人で中世国際絵画調査団なるもの形成し、ルネッサンス期ヨーロッパ絵画の購入のための調査を行った。
そんなとき、アラブ系のザリナモという男から「ダヴィンチのモナリザを買わないか。」と持ちかけられた。荒唐無稽な話で相手にしなかったが、熱心さに負けて、話だけは調査団として聞くことにした。ギリシャのある島での会見で、彼が言うには、1911年にルーブル美術館からモナリザが盗まれた。あれを行ったのは有名な国際絵画窃盗団DOVE(ドーヴェ)である。しかし世間が騒がしくなり、処分も出来ず、返却せざるを得なくなった。密かにDOVEから相談を受けたザリナモのの父は、返却役を引き受けた。しかし優れた贋作画家でもあった父は、そのまま返すのは惜しいとモナリザの贋作を作り、よく知られているように、あのイタリア・フィレンツエのホテルに置き去りにした。」
ついでながら、とザリナモ氏は、モナリザにまつわる秘密話を聞かせてくれた。モナリザは実は2枚ある。一つはルーブルにあるモナリザで、あれはジョコンダ夫人がモデルと言われるが、実は彼女の姉アナコンダがモデルで、作者はラファエロである。本物のモナリザは、スイス銀行地下に眠っているとのことだった。
この商談は、結局は向こうの言い値が天文学的であったために、いくらバブル絶頂の日本とはいえ、一地方県では手が出なかった。しかしモナリザは無理だったが、幾つかの作品をザリナモ氏経由で手に入れた。」
ここまでがオフィシアルレポートである。この前、北野武がナビゲーターとなって、「ルーブルの秘密・モナリザは2枚あった」という放送があったが、スイスのものは、番組で言っていたアイルワース版モナリザのことなのだろう。
しかし個人用レポートには、もっととんでもない事が書いてあった。
「ヨーロッパ各国の買い付け先を回るうちに、贋作画家のエルミアと入魂になった。すると一行の一人がすごいことを考えた。「エルミア氏に贋作のモナリザを描いてもらい、ザリナモ氏の所有するモナリザとすりかえよう。」
この計画と実行の詳細は省略するが、簡単に成功してしまったのである。しかもいまだにザリナモ氏が騒がないところを見ると、すりかえに気づいていないらしい。
ところでそこまでは大成功だったのだが、本物の処分ルートに困った。日本政府などに公表するわけには行かぬ。闇ルートで流せば、ザリナモ氏が気がつきかねない。気がついたら最後、気の荒い性格、莫大な財力をもっており、我々が逆にねらわれることは必定だ。結局しばらく調査団5人で共同保管することにした。今後の処置について、他の4人と相談して欲しい。4人の氏名、住所などは以下の通り・・・・・。」
ルーブルにあるものも、ザリナモ氏の手元にあるものも、みな偽者、本物はロイド銀行の金庫室に眠る、しかも作者はラファエロ・・・・・・。
ところが、私が昨年から今年にかけて4人に連絡すると、なんと二人は既に不審な死をとげ、二人は連絡が取れない。さあ、私は、ロイド銀行からの督促にどのように答えたらいいのだろう。もっと心配なことは息子の私自身、ザリナモ氏に命をねらわれているようなことはないだろうか。困った、困った・・・・・。
え、この話の信憑性ですって。それについてはこの書類をくるんであった黄色い油紙に暗号文が書いてありました。これを解けばすべて明快になるようです。暗号の間の空間と最後の!マークが気になる。最近ヒットしている小説「ダヴィンチコード」に掲載されているフィボナッチ級数とは、関係がないかもしれません。
13,15,20,9,18,15,14、 ,1,16,18,9,12, ,6,15,15,12!
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