水曜日に、ごみ収集車が去った後に、ビニール袋が二つも転がっていた。今月のゴミ当番は、隣の家の老夫婦であるから本来は関係ない。しかしだしたのは、私のアパートの人間かも知れず心配である。そう分かりでもしたら、おばさんたちは烈火のごとく怒り、意地悪バアサンよろしく電話で文句を言ってくる。
そっとのぞいてみるとマールボロのタバコの箱に、ビニール袋に入れた残飯だの、発泡スチロールのトレイだの、紙切れだの、ごちゃごちゃに詰まっている。金曜日が可燃ごみの収集日、持って行ってくれれば一番いい、だめでも土曜日が不燃ごみだからそのときには持って行ってくれるだろう、とそのままにした。
ところが木曜日に、からすにつつかれたのか、中身のゴミが散乱している。残飯に目をつけたらしい。仕方なく家から箒を持ち出して集め、新しいビニール袋に入れる。しかし誰だろう。隣の老夫婦もその向こうもこんなことをするとは考えられない。アパートも大半はゴミの出し方については周知させているからこんなことはしない。第三者かもしれぬ。もしアパートの人間とすれば、マールボロのタバコやインスタント食品の容器からして新しく来たY君かも知れぬと考えた。
とにかく面白くないから調べてみようとあけてみる。スーパーの清算書、銀行や郵便局のご利用明細などがあるがその中に氏名は記録されていない。よくこういうことを悪いと知りながら行うが、発覚すると困るから荷札等ははがして出す奴がいる、その伝かも知れぬ、と思ったりする。ところがマールボロの下から化粧水の瓶が出てきた。続いて女性らしい丸文字で書かれた紙切れが出てきた。メモらしく
・ドレミファソラシド・・・ふるえるように ・低い音はあごを少し下げるとよい ・口の開き方をしっかりしないとちゃんと声がでない ・はっきりした発音 パピプペポ、バビブベボ ・メロデイをしっかり聞く ・自分でどーゆーふうに歌いたいか決めておく。
ここにいたって、そういえば1年位前に北海道から引っ越してきた20過ぎの歌手志望の女性がいることを思い出した。なかなかの美人だった、かな?さらに検査を続けると、バイオフォトニックスキャナーという栄養診断か何かの紙切れが出てきた。5月13日に受けたらしい。携帯電話の番号とともに名前が書いてあり、犯人はきまった。
きっと忙しくてこんなことになったのだろうな、と思うが甘い顔もできぬ。決められた日にだせ、カラスが突っついて困る、との注意書きと栄養診断の紙切れをはりつけて部屋の前においておいた。幸いに彼女の対応はちゃんとしており、今日あたり分類されて出されたようだ。これにて遠山の金さんではないが一件落着・・・。
最後に、しかしゴミというのは情報を撒き散らすものだな、と改めて気がつく。これであの彼女の預金口座の番号も、財政状態も、携帯電話の番号もみんな分かってしまった。音楽修行はまじめにやっているらしいこと、外国タバコをすっていること・・・・これは男友達に後処理なのか、食事はコンビニが主体だが、サラダくらいは作るらしいこと、エトセトラ、エトセトラ・・・・・。
今晩あたり彼女に電話してみようかしら。「お茶でも飲みに来ませんか。私は今一人です。」
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