ラジオ体操の指導員は全部で10人くらいおり、毎朝3人で、当番制になっている。私の指導日は水曜日と木曜日。そのときは決めに従って、上下白で決め、それなりに心してゆく。ところが昨日、今日雨、特に今日はどしゃぶりである。
しかし私は妙正寺公園には雨でもゆく。6時頃に家をでて公園に向かう事が生活のアクセントのようになっている。
池のカルガモはむしろ雨の日のほうが元気に見える。いつか偶然に9羽も残ったカルガモの子達は、その後7羽に減ったが、いまだに水に突き出たコンクリート辺りに寄り添っている。いまだに母鳥が池の中で警戒している。
ノーベル賞を受賞した小柴博士は地元下井草の出身、その記念に植えられたカイノキの柵の上に女のこの麦藁帽子がぽつんと雨にぬれている。私の子ども時代、この公園は田んぼだった。あぜ道を通って私は小学校に通ったものである。蛙がなき、秋にはたわわに実った稲穂のあたりをイナゴが飛び回っていた。そのかわり水が出ると冠水し、巨大な池みたいになってしまう。公園になったのは昭和40年代だったろうか。以来周辺住民の憩いの場となっていたわけだけれど、小柴博士がノーベル賞を受賞したのを機会に、山田区長きもいりで整備した。ツツジの植樹が行われ花と緑の公園などと名づけられた。「(小柴博士の)科学と自然の散歩道」と称するここを基点とする散歩道も計画中とか。
雨がいつも体操をする広場のうえを川のように流れている。縁石をたどりながら、少しでも足元がぬれないように歩く。黄色いレインコートを着たおばさんが一人向こうの方に歩いているが知らない人のようだ。
昨日はA老人が来ていた。83歳だそうである。私と一緒に指導員の講習会を受けた。ペア体操では、男は妙正寺公園からは二人よりなかったから、よく組んで行ったものである。背中合わせに組んで相手をしょい上げる運動をするが、私が老人の上に乗るとなにかおこりはしないかと、ひやひやした。Aさんは、今年もあの講習会を受けているのだそうだ。「みんな何回も受けるんだね。見たような人にずいぶん会うよ。」雨の中、公園の周りを一緒に5周も歩いた。若い頃、陸上の選手だったとのことで、お元気そうだがペースメーカーを埋め込んでいるとも聞いた。
耳が遠いとのことだ。補聴器をつけておられる。それでも「語尾が聞き取りにくい」のだそうだ。「でも余計な事が耳に入らないでいいや。」
「一人で生活しているんだって、大変だね。」とおっしゃるから、「Aさんはどうなんですか。」と聞く。病気の奥さんと二人だが、息子さん夫婦が近くにいるらしい。「カミさんの指示であれこれ食事を作るよ。」とおっしゃっていた。人それぞれ事情があるもの。
「お元気ですね。」というと「Bさんにはかなわない。」Bさんは85歳だそうだが、元気一杯、ラジオ体操でも大きな声を上げられ、背筋と手先をぴしっとのばして、素晴らしいフォームで体操をされる。いつも真ん中におられるから、いい目標で、私はBさんの方を見ながら体操をする。
AさんもBさんも、今日は雨が激しすぎるからか、それとももう帰られたか、みあたらない。私もあと20年経って、彼らのように元気でいたい。そしてこの公園を愛し続けたい。
今日は人と話すこともなく、鴨にもう一度さようならをし、傘をくるっとまわして公園を後にする。雨は一向に弱くなりそうもない。
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