東北大学教授を最近定年された斉藤先生は、ヒートアイランド研究の権威である。
その斉藤先生は、この6月から河北新報にエッセイを書かれているが、縁あって、発表された原稿を送ってきてくださった。既に10回を重ねているが、なかなか興味深い。
東京は昨年夏39.5度という史上最高温度を記録した。しかしこれに留まらず先生の未来予測によると、2030年頃の夏夕刻6時の気温は大手町で43度を越え、熱中症にかかる人が急増するだろう、とのことだ。(3 ヒートアイランド)
文明は日ごとに進歩しているように見えるけれども、実は人類が解決できない喫緊の課題が、いくつも残されたままである。
ヒートアイランドのほか、石油枯渇も重大な問題だ。世界的な石油不足を見込んですでに、1バレルあたり65ドルを越え、人々を驚かせている。これからの石油生産について、楽観論者は探査技術の進展や新しい油田の発見によりかなり先のことと考える。しかし中国やインドなどの経済が発展し、多く石油を使うようになると予想されるから、油断はできない。先生は、石油生産ピークを2025年頃ではないか、とされている。すると石油が不足してゆくそれ以降、人類はどのエネルギーに頼ろうとするのだろうか。(10 石油がなくなる日)
CO2問題も解決できていない。産業革命の頃 CO2 濃度は280ppm程度だったが、昨年は376ppm、このまま人類が化石燃料を使い続けると、約300年後には1000ppmに達すると予測されている。この結果、気温が6-7度上昇するほか、異常気象の頻発、食料不足、海面上昇などで地球は危機に瀕し、人類の生存すら危ぶまれる。しかも悲しいことに人類は、一旦CO2が上昇してしまうと復元できないことである。(1 地球と人類の未来)
このようなことから先生は長年スーパー省エネ車の研究を行っておられる。
「効率が70%近い高性能タービン発電機を搭載し、最大効率点だけで発電し、フライホイールやキャパシターなどに蓄え、車輪に組み込んだモーターに供給する。またルーフなどの太陽電池で年間4000km走行する。・・・・最近のシミュレーションと走行テストでは、この車の燃費は、170km/lとでた」(4 燃費が170km/リットルを超える車)
経済面、顧客の好みなどいろいろあろうが、出来るだけ早く実用化して欲しいものだ。
先生は一方でご自分の経験からハイブリッド車が18km/lと意外に低いことを指摘しておられる。また燃料電池を@化石燃料を用いない A再生可能エネルギーが使える B高効率 C耐久性 D低コスト の5つの尺度で評価し、あまり評価できないとされている。(5 燃料電池の時代は来るか)
先生が、このような状況で見据えておられるのは、自然と共生するソーラー経済時代ではないかと思う。太陽日射は平方メートルあたり1キロリットルとエネルギー密度は低いが、その供給量は、現在の人類エネルギー消費量の12000倍にもあたる。これを技術力で克服し、再生可能エネルギーだけで日本・世界をささえる「ソーラー経済」が構築できる、とされる。そのための技術のひとつとして薄いデイスクを組み合わせたソーラータービンを提唱している。(6 ソーラー経済 7 ソーラータービン)
ソーラー経済時代を現出し、人類の未来を救うには、やはり独創力が必要である。独創を生むには根気、覇気、夢、ロマンなどが必要で、入試の偏差値では図りえない部分がある。独創で得られたものを育てるには、「シロートの提案でもよいものは取り上げる」と言う土壌が必要である。その例として、無名のジョン・ホーボルトの月軌道ランデブー方式を採用したNASA(米国宇宙航空局)の勇気が紹介されている。(9 独創を生み出す力 10 スペースシャトル計画の裏舞台)
今までに10回、いづれも示唆に富むエッセイと感じた。この先も楽しみである。
定年された後、先生は「日本ヒートアイランド学会」を設立されたそうだ。多くの人の参加を求めておられるようで、興味のある人は一度問い合わせてみたらどうか。(問合せ先03-5823-3563 会費は一般は無料)なおこの河北新報に掲載されたエッセイは、私のもとにコピーがあるので、希望者にはメールで送ります。
註 ご意見をお待ちしています。
e-mail agatha@bekkoame.ne.jp
home-page http://www.bekkoame.ne.jp/~agatha