「トルコへの旅行が充実していた様子がよくわかりました。
EU加盟を目指すトルコですが、やはりネックは「キプロス承認」ではないでしょうか。(中略)キプロスはギリシャ系とトルコ系に分断されており、ギリシャ系のみがEUに加盟することになり、今後が注目されますね。」
10日の「メルハバ!トルコ旅行の感想」を通信に載せたところ、読者の一人から上述のようなメールをもらった。
若さを保つ秘訣は、何にでも好奇心を持ち続けることではないか、と思い始めている。地球の裏側の問題であるけれども、「トルコのEU加盟問題」はあまりよく知らないので機会に調べてみようと考えた。
トルコのEU(当時のEC)加盟を前提にした連合協定は、すでに1963年に締結され、加盟申請は1987年にさかのぼる。1996年には関税同盟が締結され、1999年には加盟国になりうるとの決定がされているが、しかしいまだ加盟交渉すら開始されていない状態である。その阻害要因の第一はメールに指摘のとおりキプロス問題である。
地中海東部に浮かぶキプロスは、愛と美の女神アフロデイテ(ヴィーナス)誕生の地として知られ、驚くほど多くの見所の詰まった島である。・・・機会があったら是非行きたい。面積9251平方キロ、四国の約半分ほどの面積で人口約80万人、80.7%が南部に住むギリシャ系住民でギリシャ正教徒、11.0%が北部に住むトルコ系住民で当然のことながら回教徒である。
1960年英国より独立を宣言したが、74年にギリシャ軍部指導によるクーデターが勃発、時を移さずトルコ軍がキプロスに侵攻した。1983年に北部のトルコ占領地域は一方的に「北キプロス・トルコ共和国」独立を宣言した。現在EU加盟国はすべてキプロス共和国を認めているが、トルコは北キプロス・トルコ共和国を代表と認めている。2004年にキプロス共和国はEUに加盟したが、北キプロス・トルコ共和国地域はキプロス問題解決まで停止されることとなった。
これらの歴史的経緯をふまえてEU側(欧州委員会)は、キプロス共和国の承認、これに関連してギリシャとの紛争収支が、トルコのEU加盟条件の一つとしている。
しかしトルコのEU加盟の阻害要因はキプロス問題だけではないようだ。
司法制度・人権保護の改善が問題視されている。特に国家治安裁判所の権限、管轄および実務、防御権の水準、また警察や司法当局による暴行・拷問が批判の対象になっている。2002年のエルドラゴン政権成立以来、これら影を潜めているといわれるが批判はやまない。また最近は離婚に対する刑罰再導入や不貞を働いた者に対する取り締まり強化などの動きもでているという。
人口・国土の上で大国であることも問題だ。トルコは780578平方キロ、日本の約2.07倍の大きさで加盟すればEU内で一番広い国になる。人口は6784万人(2000年国勢調査)だが、国連の予測では2050年までに1億人に達し、これもEUの中で最大となる。
しかし経済力が弱く、特に農業従事者が多い。トルコ国民の「平均所得は、EU市民平均の13%にすぎず、物価水準を考慮した購買力も23%に過ぎないとされる。加盟が実現すれば400万人のトルコ人が豊かな生活を求めて現加盟国に移住すると分析する者もいる。
オスマン・トルコ帝国のヨーロッパ侵攻に対する恐怖心を現在でも持っているものが多い。宗教が違うこともあって、EUの中でも特にドイツには多くのトルコ人が移住しているが、現地の人や社会に完全に溶け込んでいるとはいえない状況である。
さらに本来トルコはヨーロッパに属するのか、という問題を指摘する声もある。EUに加盟するのはヨーロッパの国のみであり、わずか5%の領土しかヨーロッパに位置していないトルコは基準に合致しない、というのである。
トルコがEUに加盟した場合、EU側に利点がないわけではない。国際舞台におけるEUの外交・安全保障能力の強化、キプロス問題の解決及びバルカン半島や中東における和平の実現、異教徒間の交流の促進、イラン・イラクに隣接していることから、石油を初めとするエネルギー資源の調達が容易になる等々。
もちろんEU加盟はトルコ側の強く望むところだが、今後どうなることか・・・・。どこの国も平和に見えてもそれぞれに問題を抱えているものですな。
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