「おじいちゃん、たまには夕飯を作ってよ。」
今日、トルコ旅行のお土産を孫と一緒に引き取りに来ると言った後、娘は妙なことを言う。
「男の人に作れるかしら、私がテストしてあげる。」といっているようにも聞こえた。ようし、こうなったらおじいちゃんのフルコースだ!
娘はそれにつけ加えた。「彼女はコロッケが好きよ。」
ぎょっ!コロッケ・・・・あれはなかなか手間の掛かる料理である。
戦後、肉のないときに少ない肉を多く見せるために開発された安い料理の代表のように言われている。しかしれっきとしたフランス料理(croquette)である。Croquetteの語源はクロケット(croquet)という名のスポーツで用いられる用具に形が似ていること、「カリカリした物」というクロッカーから名づけられたなどの説がある。
ただこの歳になるまで何度もフランス料理を食べに行っているが、コロッケをメインにすえたものは経験していない。日本人が安物料理と先入観をもっていることを慮っているのだろうか。コロッケ自体が、本国でどちらかというと添え物として出されたからか。
日本には明治の文明開化期に伝わったが、大正6年東京帝劇で上演された喜劇「ドッチャダンネ」の歌中で「コロッケの唄」が歌われた。「ワイフ貰って嬉しかったが、いつも出てくるおかずがコロッケー、今日もコロッケー明日もコロッケー、是じゃ年が年中コロッケー・・・・」とコロッケの連呼、コロッケの名を日本中に広めた。
私がコロッケを始めて自分で作ったのは、会社から派遣されてイギリスのチェスターで一人住まいを始めた頃である。NHKの今日の料理の和風、中国風、洋風3冊を持っていった。洋風の最初にコロッケの作り方がでていた。それにジャガイモとひき肉のコロッケに始まって、マカロニコロッケまで12種類。そのときに思った。コロッケはそれだけで、専門店が開けるのではないか。
もっともそれでも作るのはジャガイモコロッケだけである。
ジャガイモはゆですぎるくらいにゆでる。ジャガイモの水分を十分飛ばし、マッシャーでつぶす。ひき肉は私は脂身の少ないあいびきを使う。ひき肉とたまねぎのみじん切りを十分に炒め、塩コショウで味を整える。両者をまだ暖かいうちに手で混ぜ合わせ、ナツメッグを多めにふる。食べやすい適当な大きさにまとめ、小麦粉、溶き卵、パン粉の順につける。パン粉は大目の方がいい。後は揚げるだけである。ジャガイモに少しばかり牛乳やバターを入れるとまた少し変わった味になるかもしれない。
ペシャメルソースを使ったコロッケを一度作ってみたいと思う。バターを鍋で溶かし、これに小麦と牛乳を少しずつ混ぜて、具をいれる。これを器に取り、さめるのを待って、固めるというのだが、固まりそうもない。普通は冷蔵庫に入れて凍らせるらしいが、いかにも面倒くさくて自信がない。
ところで夕食のメニューはどうなったかって?
コロッケをメインにしたフルコース?はいろいろ考えた。
解説したジャガイモコロッケ8個、特上のひき肉と男爵薯を使ってますぞ。サンマの刺身、トルテイージャ、ほうれん草とコーンのバターいため、それに蜆の味噌汁、デザートは果物という構成にしたが、我ながら、何だ、これは、和風か、西洋風か・・・・ま、それでもみんな、雑食性の娘や孫の口に次々に消えて行き、最後に残った二つは、娘が亭主に食わせるのか何か知らぬが持って行ったからよしとするか。
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