ロイヤルシートなどというとさぞ豪華な席を予想するだろう。ゆったりとしたふかふかの席。席に着くなり美女がおしぼりかなにかを持ってくる。ガラス越しに見えるのはロマンチックな映画のシーンか、それとも野球かサッカーの試合か。そして件の美女は「他にごようは?私などは・・・」と言うか、どうか。
しかし庶民派の私が望むそれはそんな高級なものではない。安い喫茶店のここちよい席。ただしそういった喫茶店で私の望むロイヤルシートは一つしかない。
青梅街道に面したドトールのガラス向こうの二人用の席。そのうしろの10人も座れる円形テーブルはいけない。入口から入って左にあるかべに面した席もいけない。
しかしロイヤルシートは大抵埋まっている。
3回に1回くらい見つけると、私は入るなりそのテーブルの上にカバンを置き、それからおもむろにカウンターに行き注文。注文するのはハム入りのバゲットとコーヒー。席に持ち帰りカバンから文庫本を取り出す。カバンは向かいの席に置き、よほど図々しい奴でなければ来ないようにする。至福のとき・・・・。
私はタバコがきらいだ。人と群れるのがきらいだ。ドトールは狭いせいか、禁煙席というのがない。ますます一人で離れている席がいい。奥にも二人用の席はある。しかしここでなければダメなのだ。実を言うと最近目が少し悪くなってきたらしい。少し暗いと読みにくいし、目は疲れる。だからここしかない・・・・。
近くにヴェローチェとい喫茶店があるがここも同じ。ここは1階が禁煙席、2階が喫煙席、もちろん1階の青梅街道に面した4つの席が好きなシートである。
マンガ喫茶というのがあるそうだ。バッテイングセンターのケージよろしく席がそれぞれ分離していて、それぞれにはパソコンがおかれている。席の照明も調節できるとのことだ。図書館?があり、マンガも自由に読める。空間を売る商売として、今、はやりなのだそうだ。料金は時間性ということだ。いつか入ってみたいと思う。
しかし何となく気に入らないような気がする。第一に壁に向かっているのが気にいらぬ。目の前は広い空間であって欲しい。第二にひとりでいる事が好きでありながら、人の様子は見てみたい。聞いてみたい。あの学生風は何を勉強しているのだろう、あのアベックはどういう関係なのだろう、おばさんたちは亭主をどういう風に批評しているのだろうなどなど。我ながら人間というのは勝手な動物だとは思うけれど・・・・。
ところで、私は今、特別なロイヤルシートに座っている。
なぜといって足をゆったりと伸ばせるオットマンチェアー。すぐそばに美女。ガラス越しの陽光がまぶしい。美女の顔が私にぐんとせまってくる。マスクをしているのが少し残念だけれど、目はきらきらと輝いている。耳元の控えめなピアスが愛らしい。白いコスチューム、胸元を覗き込むとやわらかな乳房が今にも見えんばかり。私の両の手は、だらんと下がったままだが、少し動かせば彼女の大腿をつかまんばかり。
ただひとつ問題は、彼女が右手にきらりと光る刃物をもっていることだ。「お口を、あーんとあけてください。」え、・・・・・何の話をしているんだって?歯医者にきまっているでしょ!あ、いた、た・・・・。
註 ご意見をお待ちしています。
e-mail agatha@bekkoame.ne.jp
home-page http://www.bekkoame.ne.jp/~agatha