413「下流社会」(12月9日(金)曇り)

話題の書らしく、書店でみつけて読んだ。
著者・三浦展は1958年生まれ、三菱総合研究所をへて、「カルチャースタデイズ研究所」を設立して独立するかたわら、著作活動に励んでいる。
この書で著者が言う若者は次のふたつであろうか。     
新人類世代    1961-65年生まれ 昭和ヒトケタ世代(1931-37年生まれ)の子たち
団塊ジュニア世代 1971-75年生まれ 団塊世代(1946-65年生まれ)の子たち

昭和30年頃より始まる高度成長時代は、一億総中流化・平等化の時代であった。企業の商品開発もそれに向けて行われた。ところが最近、中流が「上」と「下」に二極化する傾向がでてきた。階層化の「2005年体制」ともいえるが、実際には1985年ころからその兆候が見えてきた。
商売も「すべての人の売れる」ばかりでなく、15%といわれる上の層に対して売る努力が求められる時代になった。その典型はトヨタのレクサスであろうか。
この書では団塊ジュニア系、時には新人類系を若者としているようだ。この層について、著者自身、あるいは著者と関係ある機関が行った様々な調査を許に豊富なデータを示しながら、その傾向を分析している。

著者によれば、比較的上昇志向の強い女性は、ミリオネーゼ系、お嫁系に分けられる。前者は自己啓発志向、がんばり志向で海外経験も豊富、後者は優れた男子と結婚し、親子ともども現在の階層と生活水準を維持あるいは発展させようとするタイプである。上昇志向は強くない層はかまやつ女系、ギャル系に分けられる。前者は手に職志向が強く、自分らしく生きたいと考えるタイプ、後者は結婚志向が以外に強く、子ども2,3人の家庭を夢見るがチャンスは少なく、しばしば「出来ちゃった婚」に陥るタイプである。そして実際には主流で、その中間あるいは混合になる普通のOLに分類される。
男性についても、4つに分類する。もっとも仕事志向、上昇志向の強いヤングエクゼクテイブ系は、趣味は広く、家庭中心主義、子育てについて特に女の子に外国語教育を望む。ロハス系はスローライフ志向で、比較的高学歴・高所得だが出生志向が弱く、マイペースで行きたいと考える。SPA!系は特に勤勉ではなく、才能もないが、仕事をするしかないので仕事をしている。フリーター系は、多くは自分らしく行きたいといいながら年をとってゆくタイプで、衣食住すべてにお金はかけられないが、自分の好きな趣味にはお金を集中投下するタイプである。

新人類時代以前と比べて、団塊ジュニア世代は少年期に豊かな生活を送ったが、成長の見込めない社会の中で,後は悪くなるだけ、との下流意識を持つものが急増している。
階層社会における結婚を展望すると、夫婦あわせて、男性だけの場合年収500万円が一つの分かれ目になる。そして700万円以上ではDINKSが多く,逆に500-700万では子どもがいる場合が多い。ここではまさに高収入を取るか、子どもをとるか選択を迫られている状況が現出する。年収がたとえば300万以下である場合は生活満足度が低く、独身生活者が多いことも特色、逆に高所得者は既結婚率が高く、生活もいちおう満足しているようである。上位の層に入るために女性の場合、大学をでて正規社員となる事が望ましく、派遣社員、フリーターは子育て、結婚にきわめて不利である。
皮肉なことに下流こそ自分らしさを求める。自己能力感があり、「個性を尊重した家族」も下流に多い。ただ自分らしさも、下流ではひきこもりに走りがちで、その表現は「一人でいるのがすき」「のんびりした」「こだわりが強い」が多く、上流の「明るい」「てきぱきした」と言ったものが影を潜める。

以上のように階層分化と上流、下流の特色を述べている点は、特に子を持つ親たちには興味深く参考になると思われる。ただ判断は統計学的には問題があろうし、身分格差を思わせる階層社会という言葉で表現することには抵抗を感じる人がいるかもしれない。著者自身新人類直前の上流ということになるのだろうが、その視点からの見方であることも否定できない。「おわりに」にある「下流社会化を防ぐための「機会悪平等」」に、いくつか具体的な案がでているもののまとまってはいないように思えた。活力ある社会を作るために、総中流化・平均化がよいと考えるところにも疑問がわくし、是正するところは下駄履き入試のような小手先のものではなく、公教育そのものの改善、奨学制度など根本的なところで考えなければいけないように思った。

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