年内に一度と、久我山病院にもう1年も入院している義母を見舞いに行く。86歳、大正6年くらいの生まれらしい。高齢で水泳をやるなど、とても元気だったけれど、数年前にご亭主をなくしてから元気が亡くなったように思う。癌の疑いで入院し、腸を切ってからすっかり弱ってしまった。「ちょうどいいところにきた。水をおくれ。」というから水差しを口に持っていってやる。2,3回やったころに若い看護婦が来て血圧を測った。細い骸骨みたいな手になっている。「手を動かさないとそのまま固定してしまいますよ。」
「何も食べさせてはいけないんですね。」と聞くと「さっき娘さんが来てかぼちゃを召し上がりました。」そういえば口の周りにかぼちゃらしきものが少しついている。身内のものが差し入れる分くらいはいいらしい。「やっぱりおなかですか。」と聞くと「いや、それより肺です。肺炎になりそうなのです。」看護婦が帰ってから「もう帰っていいよ。」としきりに言う。もう一度水をやってたちあがると「本当にありがとう。救世主だよ。」と妙なことを言ったあと「お医者が水を飲ませるなというのか、あの看護婦飲ませてくれないんだよ。」ええっ!
せっかくここまで来たからと、玉川上水に沿った小道を歩いて井の頭公園にでる。樫やこならの枯葉のにおいがする。まだこんなところで畑を掘り返した土のにおいがする。水辺近くでチイチイとやかましく小鳥が鳴いている。時々マラソンをする人などと行き違う。
私もあと20年で義母さんのようになってしまうのかなあ。本当のことを言うと、私は義母さんの訃報がいつ届くかと心配している。この冬を越せるだろうかと心配している。
公園をすぎると急ににぎやかになる。昼飯を取ろうと考えていたレストランは2件とも「満席でございます。」と断られる。駅ビルは1階も2階も込んでいること、込んでいること。一塊3000円以上もするタラバ蟹の足の周りにまでお客が数人。
今日の日本経済新聞トップは「街角景気活気づく消費」とある。
「年の瀬を迎えた街角で、景気の改善がはっきりしてきた。ボーナスの増加で家計の懐に余裕が生まれ、年末商戦は活発だ。株高による資産効果もあり、バブル期をほうふつさせる光景もみられる。」
以下25万円するモーツアルトのCD全集に予約100件、一人当たり3万円前後する高級料理店「ひらまつ」の客の半分は30代、池袋西武のクリスマス用の特設玩具売り場の売上高は前年を4割上回る勢い、新宿伊勢丹のメンズ館では高級紳士靴の売り上げが2割増の勢い、タクシー大手日本交通の1日1台当たり売り上げも前年より2割増・・・・景気のよろしい話で一杯である。
定率減税の縮小や年金保険料の引き上げで来年度の家計負担は全体で3兆円増える程度増えるが、日本総合研究所は「家計の所得は総額で4兆円増え、負担増を相殺する。不安材料を克服できれば息の長い景気拡大につながる。」・・・平和な世の中だこと。
来年はどうなってしまうのかなあ。予想通りゆけばよいけれど、変化の早い時代。一寸先は分からない。楽しめるうちに楽しんでおいたほうがいい。昔みた「熱いトタン屋根の猫」という映画を思い出す。人生とはトタン屋根の上で意味のない踊りを踊り続けるようなものなのか。それが出来なくなれば・・・・。
註 ご意見をお待ちしています。
e-mail agatha@bekkoame.ne.jp
home-page http://www.bekkoame.ne.jp/~agatha