Tombe la neige!
「雪が降る」のこの出だしを、アダモが歌うのを聞いたとき、「雪の降る町を」を思い出し、西洋人と日本人では、何となく雪に対する思いが違う、と感じた。
ラジオ体操には雨が降っていても必ず出かけるようにしている。確かにラジオ体操は出来ない。しかし朝早く家をでて妙正寺公園まで500mほどであるけれども歩くことによって、1日を少しはさわやかに迎えられるような気がする。しかし朝起きると雪。6時5分、厚い襟巻きと革ジャンを着て、つりのために買った青いブーツを履き出かける。芝生の庭にうっすらと積もっている程度で、コンクリートの往来はぬれているだけである。まだ暗い。このごろ日のでは50分くらいらしい。
鴨は池の中央で寄り添うようにしている。朝いつも騒ぎ始めるカラスは今日は静かだ。池の向こうに黄色いレインコートが見えた。Tさんだ。Tさんは85歳くらい、最近奥さんをなくされ、息子さんたちと一緒に住まわれている。「でも食事は全部自分で作るよ。」と元気そう。Tさんと昔話をしながら池の周りを3周位して家に戻った。
Tombe la neige!
10時頃、このまま家にいても退屈と荻窪まで歩いてゆくことにする。またあの青いブーツをはく。雪は我が家の庭をもう真っ白に覆っている。ところが外にでると道路にはほとんど積もっていない。ボタ雪にはなっていないけれども、外気温がかなり高いのだろう。余り寒くは感じない。雪の積もった後できる足跡は丸く穴が開きそうだけれどもこういう日はずっと長くなる。着地するときにブーツで雪の表面をこすって行くからだ。
すごき気持ちがいい。昔、スキー場に行くと風がなおってしまうことがよくあった。「空気がきれいだからだよ。」と誰ともなく言っていた。今日も普段よりは大分キレイな気がする。スキーをやらなくなってもう何年になるだろう、と考えた。
街はこの程度の雪では普段と代わりがないように見える。相変わらずの人出である。相変わらずの車である。魚屋でキンメダイの頭を買う。塩コショウをぬりこみ、オリーブオイル、にんにくなどで作った調味料をかけ、オーブンで15分ほど焼くつもりである。買い物が終って喫茶店に行き窓際の席をとり、コーヒーを飲みながら本を読む。「ギリシャ神話」だけれど、やたら名前が多くて読みにくい。街の風景が少し違ってみえる。街路樹に雪がぽってりと積もっている。
Tombe la neige!
ビデオを借りてきた。「女帝キャサリン」。主演はあの「シカゴ」で抜群の演技をみせたキャサリン・ゼタ・ジョーンズ。女帝の衣装を身にまとった姿をみて、あらためて美人だ、と認識する。脇にジャンヌ・モロー、メル・ファーラーなど聞いた事のある名前が並ぶ。ハリウッド映画のようだが何時ごろで来たのだろう。18世紀の陰謀渦巻くロシアの宮廷とプガチョフの反乱などを交え、なかなか面白かった。
一人で餅を焼き、キンメダイの頭を焼き、それではビタミンが足りぬから野菜をいため、缶ビールをあける。意味もなく、自分自身に「ご苦労さん!」まだ積もらない雪が降り続いている。テレビでは、雪ですべって怪我をした人がいると伝えている。雪国ではどうということ無くても、都会では大騒ぎになる。おりから大学入試センター試験が行われている。「ここまできたらもうやるしかありません。」と女の子がちょっと寒そうに答えている。
食事が終ってガールフレンドのAさんに電話・・・。
「Tombe la neige!」思わず電話口で叫んだら、なんだか分からない風だった。
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