438「クラッシュ」(3月11日(土)晴れ)

「「ミリオンダラー・ベイビー」といえば、その脚本でアカデミー賞にノミネートされたポール・ハギスが、脚本だけでなく、監督も担当した「クラッシュ」が本年度のアカデミー作品賞に選ばれました。見事な群像劇で、非常に興奮させられました。一見をおすすめします。」という内容のメールを映画好きの友人から貰った。早速出かける。

ロスのハイウエイで起きた交通事故、その近くで発見された黒人の死体、それらをきっかけにさまざまな人種、階層、職業の人々が連鎖反応を起こす人間ドラマ。
白人のベテラン警察官は、黒人夫婦の運転する車をとめ、臨検に名を借りて夫人に強姦まがいの行為をする。しかし彼は自宅では前立腺疾患に悩む父を看護し、のちに交通事故で車に押しつぶされそうになった女性を火災から救おうと身をなげだす。ところがその女性があの夫人で・・・・。
黒人の車窃盗犯二人組み。車を盗むほか、中国人をひき逃げするなど悪事を繰り返す。しかし別の車を盗んでデイーラーに持ち込んだところ、後ろの荷台には奴隷に売られる予定の多くのアジア系難民が詰め込まれていた。車を売らずに彼らを解放する。
白人検事妻は人種差別主義者で文句をいつも言っている。しかし彼女は一人になったとき階段で足を踏み外して転倒、意識を失い病院に担ぎ込まれる。そして介護するメキシコ人オバサンのありがたみを認識する。
雑貨店のオヤジも人種差別主義者で、中国人錠前屋に「鍵ばかりでなく、ドアを変えなければだめだ。」といわれ腹を立てる。しかし自分の店が、何者かに襲われ店はめちゃめちゃ、保険会社からは防御を怠っていたのだから、保険金は下りない、といわれる。怒りに狂い錠前屋を襲うが、とめに入った女の子のやさしさに自分を取り戻す。
若手刑事は、当初のベテラン警察官の行為に愛想をつかした。彼は人にやさしくしようと心がけるが、ヒッチハイクの黒人とふとしたことで口論になり、彼を殴り殺す羽目に・・・。

登場人物がすべて主役となっている感じのこの劇では、さまざまな人種、階層、職業の人々が、自分とは違う環境にある人々と対立し「クラッシュ」を生む。「クラッシュ」なしではお互いの距離を縮めることもできぬ。しかしそういう人々が、すべて悪人というわけではなく・・・・そこに製作者の温かみを感じる。

この映画をみていて「踊る捜査線」を思い出した。同じ警察物で、そこを中心にさまざまな人々がおり成すドラマ・・・・しかし決定的に違うのは、人種のルツボのロスアンゼルスと平和な日本という社会。ドラマの構成という点では日本版が問題を警察署内部に限定しているのに対し、こちらは社会全体の問題として捉えている。

この映画は、最後にまた交差点でおこる追突事故を映し出す。車から飛び出してきた女性
の一方が「急に停車なんかするな、このメキシコ女め!」と叫べば、もう一方も負けていない。「前方不注意だ、クロンボ女!」とやりかえす。映画はこういった問題を提起しただけでそれではどうすればいい、というところに踏み込むまでにはいたっていない。観客が自分で考えろ、と突き放している、と見ることも出来る。

非常に展開と場面の切り替えが早く、最初は理解しにくいかも知れぬ、しかし友人の言うとおり、お勧めの映画と感じた。2004年アメリカ映画。監督ポール・ハギス。出演もしくは声の出演サンドラ・ブロック、ドン・チードル、マット・デイロン、ジェニファー・エスポジート他。

最後にクイズを一つ。この映画の原題は次のうちどれでしょう。またそれぞれの単語の意味は?できた人に私はclapを贈るよ。
1)CRASH 2)CRUSH 3)CLASH 4)CLUSH

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