447「150歳まで、元気で生きたくないですか。」(4月11日(火) 小雨)

小雨が降り続き、薄ら寒い一日。やっと三井洋司「不老不死のサイエンス」を読み終える。オビに「老化はなぜ起こるのか?ヒトの寿命の限界は?ES細胞、再生医療・・・・才神知識を分かりやすく解説」とあるが、なかなか分かりやすくない?以下に少々くだくだしいが私の学習の意味もかねてポイントを記してみる。

はじめにで「不老」と「不死」は遺伝子の観点から全くの別物、とするところが興味をひく。カマキリは交尾を終えるとオスがメスに食べられ、そのメスも産卵を終えると一生をおえてしまう。まさに「不老」のうちに「死」が訪れる。
再びオビの後ろに「ヒトが200歳まで生きられるようになるのも、そう遠い未来ではないと言っていいと思います・・・50年先には病気というもの世の中からなくなっているかもしれない。100年先には自由に寿命を選べる時代が来て、150年先には200寿者が現れているかもしれない」とびっくりさせる。しかしふたたび「はじめに」で映画ハリーポッターの一説「不老不死の妙薬は、捜し求め、捜し求めたあげく、手にしてもそれを利用しない者こそ、受け取れるのだ」・・・・つまり「次世代に命をつなぎ、自身は死に絶える」という進化上の自然の摂理を変更することに疑問をなげかける。
まえおきが長くなった。

第一章「基礎知識編」は「寿命の謎にご招待。」カマキリの例のように、生物では種の保存が何よりも優先される。ここでは細胞を「分裂細胞群」と「分裂細胞終了群」に分けている。進化した生物は生殖を目的とする「生殖細胞」とその機能を守る「体細胞」を持っている。機能を守るとは、傷ついた遺伝子を修復する作業、傷害因子を消去または除去する機能などである。これらの働きは個体が生殖可能となるまでは絶対に必要で、人間で言えば15-16歳まで、その後は必然性は薄れてくる、つまり老化が始まる。
しかし目の老化、筋肉の老化など種類によっても、また周囲の環境によっても老化の速度は違う。細胞を構成する生体成分は正常ならばある寿命をもって作られたり壊れたりを繰り返す。そのもとになるたんぱく質が、メチル化、アセチル化、クロスリンキング,糖化など、DNAについても切断などの変質を生じ、老化の原因となるのだ。

第二章「最新の知識編」は「ここまでわかってきている。」赤血球は120日、腸の上皮細胞は3-5日、胃は18時間程度の細胞寿命である。分裂細胞は、分裂を続けるが分裂回数には限度がある。分裂寿命を終えると代謝を繰り返してゆき、やがてアポトーシス(細胞死)を迎える。アポトーシスには外部からの傷害による死とプログラム細胞死がある。後者はどのような遺伝子が関与するかが分かってきた。
細胞が分裂してクローンを生じる。しかしクローン全体にも無性生殖の竹林やゾウリムシに見られるように寿命がある。羊のドリーは卵子の核を取り除き、乳腺細胞から核を取り出し、卵子の中にいれてできた新しいドッキング細胞を代理母親の子宮に戻すことによってできた。新しいドッキング細胞が分裂を繰り返し、完全な羊になるのは遺伝子スイッチがすべて初期化されたためと考えられた。しかしそれが完全でなかったためにドリーは早死にしたと考えられる。
細胞が分裂する際に二重螺旋のコピーが出来るがテロメアと呼ばれる末端領域が短縮されるときがある。これが分裂寿命等をつかさどるので、テロメアの短縮を遅らせるための遺伝子操作をすると、線虫などの寿命を延長する事ができる。幹細胞があり、これが分裂して各臓器を作り出す。幹細胞を発生初期の細胞までさかのぼると、ES細胞にいたる。クローン羊ドリーの乳腺細胞核の初期化はES細胞状態に戻す事が目的であったわけである。
このことは自分自身の発生初期のES細胞を採取し、無限に増やす事ができる、人為的にいろいろな臓器を作る事が可能になる等を意味する。
余談だが、がん細胞は正常細胞が不死化細胞に変わり、がん細胞にかわると考えられる。がん細胞は不死化細胞と違って場を読む能力がなくドンドン増殖を続けてしまう。しかし最近ではがん抑制遺伝子が発見され注目されている。
人の寿命についてまとめると、活性酸素の役割、糖の利用にかかわる遺伝子、カロリー制限にかかわる遺伝子が重要な役割を担う。寿命を延ばすには遺伝子操作を行う、臓器移植なども含めて細胞のレベルで移植を行う、環境要因を変えるなどが考えられる。素人でもコントロールできるのは環境要因。具体的な例はカロリー制限。70%程度がよいとされるにいたっている。また赤ワインの効用などもささやかれるが確とはしない.

第三章「未来の知識編」「こうすれば寿命はグングン延ばせる。」この章では寿命遺伝子の将来の可能性などについて述べている。ただしサプリメントなどのアンチエイジング療法、ホルモン療法などについてかなり否定的な見解が述べられている。低カロリー食、適度な運動、睡眠などが大切で、性ホルモンや成長ホルモン投与は「もっての他!」と断じる。

皆さん、長生きはしたくありませんか。手始めにまずこの本を読んで、カロリー制限に赤ワイン。それから専門医にかかって遺伝子操作でもしてもらって、100歳は当たり前、120歳、150歳、けちなことを言わずに200歳くらいまで生きてみたら・・・・・。でも私はつきあいきれそうにない。

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