私たちはこれからベッドインをしようといいムード。顔と顔が近づく。
ポンピロピンノポンポンノパ・・・・。
「何だ、何だ・・・」「携帯電話よ。私のじゃない。あなたのよ。」
あわてて飛び起きる。携帯電話はとこだった。やっとカバンの底から取り出す。
発信者「XXアパート」・・・・何だ、これは。
「あのー、すみません。106号室のXXですけれど、鍵をなくしてしまったのですけれど、あけてもらえないでしょうか。」
「え・・・・、そんなこと言ったって無理だよ。僕は今、旅先なんだよ。」
「そうですか、分かりました。」
やれやれ、ムードも何もぶち壊しだ。それからしばらく詳細省略。彼は30近くの独身サラリーマン。親は裕福らしいがそれだけにボンボン風。私のアパートに住んでいる。少し世の中に甘いのかなあ。
仰向けになるとけだるさが体をおおう。なんてこの旅行はついていないんだろう。
今日は8時半に我が家を出て箱根路に向かったものの、高速道路に乗ると雨模様、連休の割には車はそれほどではなかったが、海老名のパーキングでは本降り。仕方なく一服して、さて、出ようと思ったところ、何をぼんやりしていたんだろう、ガチャン・・・・・ガソリンスタンドそばの縁石に乗り上げてしまった。下りて調べると、見事に前輪がパンクしている。スタンドのお兄さんが飛んできて「こりゃあ、バーストですよ。ほら、こんなに切れてる。」仕方なくタイヤ交換。1時間もかかり、万札が吹っ飛んだ。
「でも直ってよかったじゃない。値段も思ったより安かったし・・・」という彼女の言葉もうらめしい。ポーラ美術館に向かうのだが、霧の山道に大苦戦。「そういえば箱根は霧で有名だって言っていたわ。頑張ってね。」涼しい彼女の顔にくーっ!
しかもやっとの思いで到達したポーラ美術館はやけに作品が少ない。福岡の美術館で印象派展を開いていてそちらに多くを貸し出しているらしい。貸出料をとっているのだろう。それならその分入場料を安くしろ!
終って強羅のホテルに向かったのだが、ナビが間違えて・・・・・ナビの専制独断的解釈に従えば私が間違えて、大苦戦、やっとの思いで4時頃ホテルについたものだ。そんなことをぼんやり考えながら、私はやっと眠りにつきかけた。
そのときである。またポンピロピンノポンポンノパ・・・・。
あわててでると、またあのXXアパートである。
「どうしたらいいでしょう。休みなもので誰もいないのですよ。それにどうしてもというなら鍵を壊さなければならないらしい。お金もかかるし・・・・。」
「そんなこと言ったって無理だよ。明日遅くなるよ。」
「何時頃になりますかねえ。仕方ない、待ってますよ。」
もう携帯電話の電源がなるのはかなわんと、電源をきってしまう。友達のところでも行けばいいだろうが、深夜営業のファミレスもあるじゃないか、と考えて気がついた。鍵をなくした、と言ったから、財布ごと落としてしまったのかしら・・・・バカ目!
3日は昨日とはうって変わったよい天気。近くの強羅公園を散策した後、御殿場プレミアムアウトレットによった。しかし二人で買い物をしながらも、やっぱりXX君に事が気にかかる。仕方なくかなり早めに出る。荻窪駅近くまで来てまた、ポンピロピンノポンポンノパ・・・・。
「あの・・・・。」「ええい、もうすぐ帰るから。」「戻ったら連絡を・・・」「わかってらあ。」
四時頃戻ると彼は道路のガードレールに腰掛けて所在無く待っていた。いろいろ聞こうと思ったけれどやめにした。「鍵はスペアを作って、こんなときのためにどこかに隠しておいたほうがいいよ。」と言いながら、ドアをあけてやる。
そうしながら、旅には携帯電話を持ってゆくべきか否か、電源は切っておくべきか否か、彼は本当はいくつなんだ、なんてぶつぶつ・・・・。
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