477「文明の衝突と21世紀の日本」(7月20日(木)曇り)

2000年に第一刷がでたもので、今では古いけれどもその識見は現在の国際情勢を考える上で参考になるかもしれない、と考えて読んだ。
この本を読む上で前提となる「文明の衝突」(http://www.bekkoame.ne.jp/~agatha/MBUNMEIN.html参照)で、著者は、冷戦時代が終わりを告げ、国際政治が多極化し、多文明化する、これからは文明間の対立がより鮮明になってくるとした。文明とは中華文明、日本文明、ヒンドウー文明、イスラム文明、西欧文明、ロシア正教文明、ラテンアメリカ文明、アフリカ文明(存在すると考えた場合)である。
パワーを主体に述べるなら米国・ソ連の2極時代から、米国とそれぞれの地域の中核国をめぐる1極多極時代に移ってくる。米国はそれぞれの地域に反米勢力が台頭することをおそれ、地域のナンバー2である国と新密度を深めようとする。中国に対するため日本、フランスに対するため英国、ブラジルに対するためアルゼンチン、中東ではイランに対するためサウジ・・・などである。

その中で日本は独立した文明圏であることは誇ってよいが、所詮は小さな文明圏で、東南アジアでは中国に継ぐナンバー2である。仮想ストーリーでは中国と米国が戦争になり、日本は両者の間をふらふらし、結局は中国につき破壊される、となっていた。
この書では1歩踏み込んで次のように述べる。
おおまかにいって、ナンバー2の新興勢力に対して取る方法には勢力の均衡を維持してバランシングを図る方法と、新興勢力に追随して(バンドワゴニング)順応し、自国の基本的な利害が守られることを期待する方法があり、それらを組み合わせる場合もある。
日本の場合やはり中国の台頭があらたな危機となろう。そうしたとき日本は、アメリカが世界一であり続けることも、中国が軍事的プレゼンスを拡げようとするとき、これと戦うことも、そのような危険もなしに中国を封じ込める力があることも期待できそうにない。とすれば中国に順応する第二の方法をとることになるだろう・・・・。

西欧が生き残れるかどうかについて、前著では「自分たちの文明は特異であり、普遍的なものではないことを認め、非西欧社会からの挑戦に備え、結束して、みずからの文明を再建・維持しているかどうかにかかっている。」としている。
異文明間の大規模な戦争を避けるために著者は三つのルールを提案する。
第一は、中核国家は他の文明内の衝突に介入するのを慎むべきだ。特に米国にはこの点が要請される。
第二は、共同調停ルールで、中核国家が互いに交渉して自分たちの国家や集団がかかわるフォルトライン戦争(異なる文明圏の国家や集団の間で起こる、共同社会間の紛争)を阻止または停止させることである。
第三は、共通性のルールで、あらゆる文明の住民は、他の住民と共通に持っている価値観や制度、生活習慣を模索し、それらを拡大しようと努めるべきなのである。

今回、北朝鮮のミサイル発射問題で、国連安保理、サミット会議でどこまで効果が得られたかは疑問であるけれども、そこに向けての努力が感じられたのはとにもかくにもよいこと、と感じた。

しかしこの本の書かれた後、特に最近起こったそのほかの事件を考えると・・・・
ロシアがウクライナへの低価格でのガスの供給を断り、おかげでウクライナのみならず西欧も大きな衝撃を受けた。今年はロシアを通さず、カスピ海からトルコを通り、西欧へ石油を輸送する新カスピ海ラインが建設された・・・・・。
ヴェネズエラに左翼政権が出来た。「石油でえた利益は今まで米国の資本が独占したが、地元に還元されるべきだ。こういった会社は地元資本と50:50の合弁でなければ認められない。」と主張する。CIAはヴェネズエラの巨大資本化などと組み秘密活動を通して何とかこの政権を倒そうと画策しているらしい。
これらは、資源エネルギーにからむナショナリズムのうねりが、新しい戦争の可能性を秘めているようにも見える。
また最近はイスラエルがヒズボラの基地をたたくとの理由デレバノンに侵攻している。アメリカが懸命に弁護しているがアメリカの中東での支持を失っている。事件は著者の提言はなかなかに守られていない、と感じさせる。
「文明の衝突」と共に、この本は中西輝政の解説もあり読むに値する一冊である。しかし国際情勢は一筋縄では行かず、我々にはわかりにくい。

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