昨日の夕方、マーケットの魚屋での話し。
「二つ、買って行きなよ。2500円にするからさ。」
「二人で食うんだぜ、そんなには食えない。」
「調理して、冷蔵庫に入れておけば大丈夫さ。」
耳元でささやくように言う、お兄さんの強引な商法に押されて、大きな生のタラバ蟹を二杯買ってしまった。ずっしりと重い。
私とガールフレンドのAさんの間の協定で、木曜日は私が夕食を作ることになっている。ところが今日は午後、陶芸教室があり、急がしい。それなら日ごろから魚屋の店頭で威張っていて、一度は食ってみたい、と思っていたタラバ蟹を買ってきた。卵をどっさり抱えた雌である。
夕方、あらかじめAさんから借りておいた、大型の蒸し器につっこむとやっと一杯だけ押し込むことが出来た。蟹は両目でこちらをにらんでいる風情。蒸しあがるにつれて、赤黒かった甲羅が鮮やかな赤に変わってゆく。二つともゆでて、我が家の一番大きな皿2枚にでんとすえた。
食べきれるものではない。「蟹を思い切り食べたことがない。」と言っていたAさんも足を4本くらいでギブアップ。残りを、明日でも食べようと二人で分けた。Aさんは「卵はどうも気持ちが悪いからいらない。」という。私は明日でも挑戦してみようと思う。
Aさんが帰ってからまた得意のインターネット。
タラバ蟹はその昔、鱈漁にかかるやっかいものだったことから俗に「タラバ蟹」と呼ばれるようになった。しかしこの蟹は実はカニではなくてヤドカリの仲間なのだ。はさみを除いた足の数を数えると三対6本、カニは4対8本である。一対のはさみ足は右が大きく、左が小さい。
あわてて冷蔵庫の中の食いくさしの蟹を取り出す。間違いなく三対6本!足は・・・、もう切り離してあってわからないけれど、そういえば大小があった。
北海道沿岸より、千島、カムチャッカ、ベーリング海、アラスカ海沿岸に渡り分布する。水深200-400メートルで、水温1-3度の海底にすむ。足を伸ばすと1メートル以上にも達し、別名キングクラブ。我が家のは大分小さいほうだな。北海道のオホーツク沿岸では、流氷が岸から離れる「海あけ一番」にタラバ漁が始まる。
ついでに調べるとズワイガニというのは本当の蟹で、はさみを除いた足は、長めで4対8本。雄の方が大きい。雄は関東・福井方面では越前蟹、関西・山陰方面では松葉蟹、なんと秋田・新潟県ではタラバ蟹と呼ばれている。
甲羅に対して足が長いのが特徴。漁期は基本的には11-3月、日本海からオホーツク海、アラスカ沿岸までと非常に広い。
毛蟹は別名「オオクリガニ」。10センチ*9センチくらいの大きさでとがった顕粒と短い羽状毛でおおわれている。北海道沿岸に多く群生し、1年中食べられる。
ついでにまがいものの話。
毛蟹に似た蟹に、クリガニというのがある。食味は比較にならないほど落ちる。クリガニはツメの部分が赤い。
タラバ蟹に似た蟹に、アブラガニというのがあり、アラスカでたまに獲れるが、味は水っぽくて落ちる。この見分け方が難しい。甲羅をじっと見ると凸凹の谷の部分がHがたになっていることに気がつく。そのHの下の部分のふくらみにある突起の数が6のものがタラバ蟹、4のものがアブラ蟹・・・。
あわててまた冷蔵庫に飛んでゆく。食いくさしの蟹を再度引っ張り出す。ああ、よかった。突起は6つあった。
最後にタラバ蟹の中に黄色い内臓があるが、これは蟹味噌。ただしタラバ蟹の場合は食べられない。メスが抱えている卵魂は外子と内子があるが、三杯酢またはポン酢で食べる外子は蟹通には珍味中の珍味として喜ばれているのだそうだ。
昔、香り大賞というエッセイに応募したことがある。香りについてエッセイを何でもよいから書け、というのである。入選作の中に蟹を思い切り食べたら、青い蟹のにおいのするオナラが出た、というのがあってすごく面白いと思った。今日は私のオナラのにおいはどんなにおいがするだろうか。
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