坂東真砂子という作家の日経新聞に載せた子猫殺しエッセイが話題になっている。
タヒチ在住の彼女は、飼い猫が産んだ子猫を裏のがけ下に棄てているというのだ。猫の生(性)を尊重するため避妊手術をしないかわりに、社会に対する責任を果たすために生まれた子猫を殺しているのだという。そのため自分は「殺しの痛み、悲しみも引き受けて」いる、と述べる。日経新聞者には抗議メールの電話が殺到し、動物愛護団体を中心に、坂東さんや日経に対する不買運動が起こっているのだそうだ。さらにポリネシア政府が賠償金を請求すると共に告訴することになったという。
ウエブで調べてみると、なるほど、坂東さんを死刑にせよ、などずいぶんひどい意見が出ている。わたしとしては開いた口がふさがらない。そんなに動物が可愛いならまず菜食主義者になることだね、と一言言いたくなる。
今日のテレビにも、なんて矛盾したことをするのだろう、とあきれてしまった。
野良犬がコンクリートの擁壁に迷い込んでしまった。急斜面であり、身動きできぬ。
それを救い出そうと消防車らしいレスキュー隊が出動している。網で犬を掬い取ろうとするが、犬は壁に打ち込んでるボルトを伝って隣のブロックに移動したりしてなかなかつかまらぬ。下では地元の人たちが固唾を飲んで見守る。ようやく犬が落ち、少し下にあった網に吸い込まれると「良かった」の大合唱。
しかしみんなは多くの野良犬が毎日捕らえられ、数日引き取り手が現れないと、炭酸ガスを吹き込んで殺してしまうことを知らないのだろうか。このレスキュー隊の活動費にも税金が使われていることを知らないのだろうか。
ほぼ同じ時間、民家に迷い込んだイノシシの捕獲作戦が写しだされていた。イノシシはもうあちらこちら血だらけになっている。ようやく麻酔銃が打ち込まれて動かなくなると小さな金属製の箱に押し込む。動物園などの引き取り手があれば別だが、そうでなければ結局イノシシ鍋にでもなる運命か。
さらに別のチャンネルでは大間のマグロとりの様子が映し出されている。かかっても力が強いから、上に下に横に大変な動き方をする。下手をすれば糸を切られたり、糸がスクリューに捲きついたりするから漁師は大変だ。しかしマグロにしてみればそれこそ必死の闘争。それも20分もすれば終りマグロは海面に引き上げられ、さらに銛鍵を打ち込まれる。血潮が海に広がる。160キロもある大物に漁師は「オラの勝ちだべ。」とうれしそう。
しかし人は野良犬もイノシシもまぐろもそのままにして、一匹の迷い犬には同情してみせる。私が犬だったら困ったら擁壁の上に逃げることにする?
ウエブのなかに「坂東氏を安易に批判する事が多い事がむしろ日本の問題点だと思います。」という意見があり、私は少しほっとした。まだまともな人がいる!
この事件、私なら・・・・最初から猫を飼わないか、不妊手術をするか、オス猫にするか、それでも生まれたら棄ててしまうかするだろう。要するに小市民的だから残酷なことはいや、分からなければそれでいい、くらいの安易に考える。坂東さんのように社会に対する責任を果たすとか、殺しの痛み、悲しみも引き受けて、など格好いい事を言うつもりはない。それでも棄てたりすれば少し後ろめたい。だからそんなことはエッセイに書かない。しかしだからといって別に坂東さんを批判する気にはならない。
他の生物に対するとき、どう考えたって人間はご都合主義だ。自分の好きなように彼らを扱う。まずそのことを自覚した上で、動物たちへの対処の仕方を考えるべきだ。冒頭の野良犬はアザラシのようにかわいいわけでもない、迷い込む方が悪い、それを税金を使って救い出し喜ぶなど、喜劇以外の何物でもない・・・・。
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