513「私流年賀状の作り方」(12月10日(日)晴れ)

今年も年賀状の季節になってきた。
子どもの頃、年賀状と言うと干支を版画で彫ったものである。やがてプリントごっこができた。さらにパソコンを使う方法に変わった。どの方法も出た当初はみな目を丸くした。こんなにきれいで独創的なものが出来るなんて・・・・・。しかしどれもすこし飽きられてきている。「版画に比べてきれいなのはあたりまえさ。でも味がないな。」「パソコンで写真を貼り付けたものを見るとみな同じで厭になる。」
パソコン年賀状にも少しは工夫を加えようと、昨年は私自身の60年前と今の写真を二つ並べた。60年前、戦争で家を焼かれて信州に疎開していた頃の写真、隣のお百姓の家の石壁の下で撮ったものから引用した。今年はどうしよう。手作りの味を残したい、しかし100枚以上の年賀状を一つ一つ書いているわけには行かぬ・・・・。

そんなことを考えているうちに絵手紙というものを考えた。1枚作ってそれをパソコンに取り込んで必要な文章をつけコピーすればいいではないか。
吉祥寺のユザワヤで絵手紙用の絵の具と筆を買ってくる。やった事はないのだから、もちろん入門者用のセットで一番安いものである。スタートしようとして困った。筆はどうやって扱うのだろう。昔中国に旅行した書用の筆セットが、1,2度書いただけで穂先が墨で固まったものが出てきた。これをきれいにしてみようと水につけてしばらく放置すると墨が流れ出し、絞ったりするうちにだんだんきれいになった。穂先に買ってきた絵の具をつけ、恐る恐る書いてみる。

しかしいのししというのはどういう形をしているのだろう。みな横に走っている絵を描いているけれど、まともに現物がそうしている様子を見ることは少ない。豚と基本的にどう形が違うのだろう。前進するとき、一方の前後2本の足で行い、他方の足は共に地面をけっているのか。それとも前足がまえにでるとき、後ろ足は地面を蹴っているのか。また早く走るとき、前足をそろえて前に出し、後ろ足はそろえて地面をけるようなことをするだろうか。競馬で走る馬を見ているとそんなことをしないような気がする。牙も上向きか下向きか、難しい。それでもようやくイノシシが歩いているような絵が描けた。ユーモアがあったほうがいい、とメタボリック、シンドロームのいのしし、読書するいのしし、運動するいのししなども頭の中で考えたがとても絵にならない。画面にも入らぬ。

いのししだけでは寂しいと背景を入れることにする。絵の具を薄めて気がついたのだけれど日本絵の具はぼかして描くともっともらしい味が出る。後方に雲とお月さん、前方に岩山らしきものを描いて悦にいる。
今度は挨拶も墨で書いてみたくなった。細筆で丁寧にあけましておめでとう、と書いてみる。絵手紙用の葉書に書いたのだが、字がにじむ。おそらくこの方が味があっていいのだろう。両方ともパソコンに取り込んで上下に配置し文章を印刷で入れてみた。

出来上がったものを見ると、なんだか落款が欲しくなった。日本画にはちゃんと作者の赤い印が押してあるではないか。そこでもう一度ユザワヤ。篆刻コーナーに行く。石と鑿などがセットになったごく初心者用の者を買ってくる。鑿は木版用の鑿と違って先端が山形に尖っている。解説に由れば、印象に字の色により白文と朱文がある。もちろん簡単な白文、これなら文字を裏から見たよう削ればいいだけだ。印床と言うのがある。ねじなどで彫る石を固定するものだが、高いから買わなかった。そこで指を切らぬようにカーボンとレースされた逆さ文字の後に鑿を入れる。それでも失敗したらもう一度やすりで削りなおして彫るなどしているうちに、どうにかそれらしきものが出来上がった。イモみたいないのししの絵とミミズののたくった「あけましておめでとう」・・・・。

パソコンの絵を落款を押したものと差し替える。それでもまだ全体間延びした感じだったからヴェトナムで撮った自分の写真も入れてみた。写真の意味はおかげさまでまだ元気ですよ、くらいの気持ちである。
年賀状に絵手紙とパソコンの組み合わせ・・・・皆さんもいかが。案外面白いかもしれませんよ。

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