521「はやぶさ」を読む(1月7日(日) 晴れ)

火星と木星の間には多数の小惑星が帯状に分布している。太陽はどうやってできたか、太陽系はなぜいくつもの惑星をかかえているのか、地球はなぜ3番目の位置にあるのか、そういった問題を知るために最適なのが、実はこの小惑星群である。そのうちの一つイトカワは、1998年に米国で発見され、発見者の名をとってこのように名づけられた。地球から3億キロのかなた、太陽を中心に回っているが、楕円軌道を描き公転周期は1.52年。外形は550m*270m*210mのじゃがいも型である。素材?は珪素汁質あるいは石質で反射率の高いS型小惑星と呼ばれる星である。宇宙科学研究所で、衛星を打ち上げ、この惑星の「現物」を採取して地球に持ち帰る計画「サンプル・リターン計画」が提案された。その結果、2003年年5月に本書の主題である「はやぶさ」が打ち上げられ、2005年11月にイトカワに着陸した。本書は日本の宇宙開発歴史とともに、この偉業を出来る限り要領よくまとめ、一般読者に紹介するために書かれたものである。(幻冬舎新書 吉田武「はやぶさ」)

最初にわが国の宇宙開発研究の歴史を振り返っておく。研究は1955年に国分寺で、東京大学糸川教授等がおこなったペンシル型ロケットの水平発射に始まる。1964年に宇宙航空研究所が新設される。67年に糸川教授が退官し、ポストイトカワ時代を迎える。1970年に試験衛星おおすみの打ち上げに成功し、以来30個近くの衛星が打ち上げられることになる。
1981年に官庁主体の研究機関が立ち上がり官民すみわけが行われるようになった。宇宙科学研究所は鹿児島県内之浦の基地で科学衛星や惑星探査機を開発する。自前技術で固体燃料を用いる。こちらは全国の大学が利用する共同研究機関でもある。一方実用衛星は、特殊法人宇宙開発事業団が担当する。種子島に基地をおき、液体燃料を用いて、気象衛星、放送衛星、通信衛星を打ち上げる。2003年に二つの機関と航空宇宙技術研究所が統合一本化され、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が設立され現在にいたっている。

2003年5月9日1時29分25秒 「はやぶさ」を乗せた「M-V-5」ロケットが打ち上げられた。ロケットは、全長30.8m、直径2.5m、全重量140.4ton、打ち上げ能力1850kgの三段式ロケットである。610秒後衛星「はやぶさ」を分離、14-20分後、太陽電池が拡げられ、「はやぶさ」は「太陽補足」に成功。
「はやぶさ」は1.0m*1.6m*1.1mの本体に、姿勢制御用の化学燃料70kg、イオンエンジン用のキセノンガス60kgを積んで、二葉の太陽電池と複数のリチュウムイオン二次電池を電源に、総重量510kgの機体を制御している。2004年5月地球に最接近。高度3700km、スウイングバイ成功。これは惑星の重力と運動エネルギーを利用して探査機の航行速度を加速する航法で技術的難問の一つである。衛星は地球軌道をはなれ宇宙空間に。

2005年8月12日 イトカワまで3万5000km。38m/sで接近。9月30日上空37km地点「ホームポジション」に降下した。しかしリアクションホイールに故障発生!はやぶさには、日常的に軌道修正を行うリアクションホイールと呼ばれるはずみ車が3基、互いに直行するようについている。そのうち二つが制御できなくなった。
姿勢制御用推進機を作動させて活動再開。小惑星探査ローバ・ミネルバによる探査は失敗するものの、11月26日に秒速10cmでイトカワに着地。しかし上昇後燃料漏れが発見される、化学スラスタ不調などで動作確認が困難になった。ついに12月9日連絡を断った。それでも奇跡の復活を信じて連絡を待っている。幸運に恵まれれば2010年に帰還する。

「おわりに」で示しているが、著者は「ミッション」を軸にした教育手法を何とか定式化できないものか、と思案しているという。たとえば「入学試験に通る」というテーマを与えられると、学生は突如として逞しくなる。「ロボットコンテスト」や「鳥人間コンテスト」などもそうである。自分自身を目標として学ぶ学生は素晴らしく伸びている。そういった教育的見地から、宇宙研の仕事に興味をもったという。そして「はやぶさ」が持つ様々な要素に魅了されたそうだ。多少読みにくいところもあるけれども一読し、関連するウエブサイトなど開くことを薦めたい。

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