527「家元の集金システム」(1月28日(日) 晴れ)

先輩のA氏から、次のようなメールをもらった。
「ふと考えました。家元が居て免状を出し高い金を取る。これが日本の常識だったわけです。ごたぶんにもれず、囲碁のほうにも日本棋院という家元があります。しかし最近免状を取りたいという人が少ないのか商売が成り立たないようです。
昔はやたらに免状を欲しがったものですね。
小生がまだ大分弱かった頃、同じ師匠の所に兄弟弟子で金持ちのおじいさんが居ました。この人は初段の免状を欲しがっていて師匠に推薦をしてくれといっていました。推薦すれば謝礼ももらえ師匠もうれしいのですが、肝心の腕前は初段はおろか3.4級といったところでした。それで師匠がどうするのか注目していましたが、結局推薦して初段の免状を取らせました。そのときの師匠の言葉
「貴方はまだ初段に達していませんが、ご熱心で勉強家です。このままのペースですすめばいずれ初段になるでしょう。ご高齢なので今回はそういう意味で先付け発行という形で推薦させていただきました。これからもお励みください。」
なんとうまい理屈ではないですか。しかし、こんなことをあちこちで進めてきまして、中には6段の免状を出しますが、他流試合はしないようになど、柳生新陰流のようなことを発行条件にすることもあったと聞きます。結局いまは日本の段位はドイツの段位に比べて三階級も落ちるそうです。日本の5段はドイツでは2段でしか通用しないとのこと。これは友人が実際にドイツで戦ってきてのはなしです。それで結局価値がなくなってしまったのですね。
家元制度の崩壊の足音が近づいています。踊りやお茶、花などにも波及してくるでしょうね。この件はどう思われますか。」

家元制度を結局は高度な集金システムくらいにしか考えていない私は、さもありナン、と思った。
私の裏千家入門時の話。私は近くのY文化センターで行われている講習会に参加した。1回2時間の講習謝礼が確か4000円か5000円についたと思う。講習は週に1回、和室が用意されていて、数人の生徒が集まり、お茶を練習するスタイル。先生はもう70くらいのちょっと太りすぎが心配のおばさん、裏千家ではそれなりに力があるらしい。
入門して2ヶ月くらい経つと先生が言う。
「阿笠さんもそろそろ資格をとらねば・・・・。準備は私がしますから」1ヶ月くらい経つと「入門許状」「小習16か条許状」「茶箱雪月花許状」の三通がしめされた。和紙に墨痕あざやかに資格付与の件が書かれ、裏千家今日庵主利休居士十六世千宗室との署名がある。私が終えていたのは、ほんの入門程度、茶箱はグループで行うが、先にならっている生徒の数がたりぬからそこに座ってみておれ、と言われた程度である。「とても免状を貰うほど練習していないが・・・・」と言うと「これから練習すればいいではないか。」と、Aさんの紹介する碁のお師匠と同様の発言。
このとき本部に納める費用が、確か3万円、ところが同じ額を先生の謝礼に包まねばならぬのだ、という。ほかにもこの教室は、なかなか金がかかった。新年会とか特別講習とかそんなものがあるたびに金を取られる。Y文化センターのパンフレットには「講習会では授業料以外に一切費用がかかることはございません。」と記してある。話が違うではないか、と抗議しようとも思ったが、やめにした。しかしその時、結局家元制度と言うのは、風流をダシにした集金システムだ、と感じた。
それからしばらくたって、ひざが痛くなり、正座に耐えられなくなったこともあって、お茶を止めてしまった。許状は亡くなった妻の残した水屋の隅にうっちゃってある。それでも別にお茶が嫌いになったわけではなく、今でも機会があれば呼ばれて見たいくらいには思っている。

個人で行うものが盛んになると大抵家元制度のようなシステムを作ってうまい汁を吸おう、と言うものが現れる。最近ではラジオ体操にまで一級、二級など資格制度が作られた。この場合は免許状で金はとらないけれど、資格試験で金をとるらしい。ラジオ体操は毎日元気にそれをやれば少々間違っていてもいいくらいに思っている。資格制度は私にはなんだかふさわしくないように見える。

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