542「南紀パック旅行」(3月25日(土)雨後曇り)

クラブツーリズムなる旅行会社の企画するパックツアーで南紀を旅してきた。
タイトルには「新幹線グリーン車で行く世界遺産高野山・熊野古道と熊野三山めぐり4日間」とある。ご丁寧に脇にはさらに「大洞窟温泉「忘帰洞」のホテル浦島に宿泊」とある。

観光旅行は「企業から個人へ」といわれる時代とか。
バブルの頃は企業ぐるみの旅行が盛んであった。1000組を越す客を宿泊させ、余興を提供し、お土産街も作って落とすべき金はすべて落とさせようと言う巨大ホテルが各地に建設された。宴会場がつきものであった。崩壊と共に巨大ホテルは客が集まらなくなり、倒産したり、身売りしたりするものが増えた。しかし最近個人グループツアー客を対象に、このようなホテルが復権しているらしいのだ。
南紀勝浦にあるホテル浦島は、まさにそれだと思う。2500人の収容能力、今日は少なくて1000人余りとか。安く宿泊させるために、食事はすべてヴァイキング、指定された部屋に、各自で行くとそこに鍵がおいてあり、手がかからぬシステム、大きな風呂は6つあるから湯めぐりを薦め、かわりに内風呂は省略、とそんな具合である。とにかく客を集めねばならぬから、最近金回りのいい韓国、台湾、中国、世界遺産に指定されたことをきっかけに欧米にまで声をかける。すると食堂も風呂も、いも洗い状態になり、各国語、しかも庶民のずーずー弁まがいが飛び交う。様子が分からぬからバスタオルを体に捲いたまま温泉に入る娘まで現れて、日本人おばさんが目を白黒させるとか。

旅行は南紀の世界遺産に指定された宗教的霊場めぐりの感。
初日には高野山に行った。弘法大師が1200年前に唐からもちかえった真言密教をひろめるために建てた一大寺院群。海抜900mもある高地で少々寒いのだが、そんなところでも青い目の外人が目立つ。ホテルはないからみな宿坊に泊まり、ツンツルテンの浴衣を着て、お坊さんのサービスで精進料理を食べ、なれぬ足を組んでおつとめに励む・・・・これも経験、経験!大体ここは墓からして国際的。宗教を問わず受け入れるからか、土を盛り上げたような韓国の人のお墓も目立った。説明する修行中の坊主は十分心得ていて、数珠の持ち方から供花の色まで、立て板に水で説明し、最後には霊験新たかなお札をどうぞ。

続いて行ったのが熊野古道。世界遺産となって単なる田舎の山道が途端に脚光。とはいえ大辺路、中辺路、古辺路に伊勢路、膨大な距離に難所続き。参加者は定年退職後のじいさん、ばあさん一歩手前が主力だから、無理はできない、時間はない、ということで有名な大門坂を200mも歩いてオシマイ。これでも「熊野古道を歩いた」ことには変わらぬ。過去世救済、現世利益、来世加護を説く熊野信仰は、中世皇室、公卿、武士中心に栄えた。中身は、熊野古道を難行苦行の末、熊野三山、つまり那智の滝のある那智大社、速玉神社、本宮大社を訪れることであった。ただ行き着く先周辺には遊女宿なども沢山あったようだから、「蟻の熊野詣」の裏に、よからぬ目的があったのかも知れぬ。

一番最後に伊勢神宮。こちらは江戸時代にお伊勢参りとて旅行大ブームを巻き起こした。天照大神を祭る内宮と、そのお食事の世話をする豊受大神を祭る外宮よりなるが、人気は前者。板垣、外玉垣、内玉垣、瑞垣の4重の囲いの奥に、何が祭られているかは分からぬが、ありがたや、ありがたや。とにかく押すな押すなの大盛況。式年遷宮と称し、20年に一度神様は隣の空き地に移ると聞けば、その空き地までデイジタルカメラにおさめて庶民はご満悦。もちろん門前のおはらい町も、今がかきいれどきと、客を誘いまくる。

あっという間に4日間がすぎて、帰りの新幹線グリーン車。旅行ブームにわく東南アジア諸国、こんな時代に北朝鮮にでも生まれたらとんだ災難だあ、と幸せ一杯に缶ビールをぐい!

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