温家宝中国首相の国会で演説した。演説の全文はインターネットで読む事が出来る。
この人の立場で随分苦労したのだろうなあ、と想った。国会には中国テレビ局が3台もカメラを持ち込み、中国全土に生中継されたという。とすれば、首相としては日本の国会以上に中国人民を意識しなければなるまい。さりとて国会もないがしろに出来ず板ばさみでいろいろ智慧を出したのではないか。
もともと今回の訪日について、最近の中国と日本の関係は政冷経熱、しかし経済の結びつきはますます進展し、いつまでも政冷ではいけない、と気がついたからだ、との見方もある。
演説で阿倍仲麻呂や鑑真和尚まで引っ張り出して両国関係の緊密さを訴える一方、「中日両国人民の2000年以上にわたる友好往来は、近代において50年余りの痛ましい不幸な歴史によって絶たれたことがあります。当時の日本が発動した中国侵略戦争によって,中国人民は重大な災難に見舞われ、おびただしい死傷者をだし、多大な損害を被り、中国人民の心に言葉では言い表せないほどの傷と苦痛を残しました。」といわざるを得ない。しかしそれでは日本国民が渋い顔をするであろうから「日本国民にも莫大な苦痛と痛みを与えたことは、年配の方々には今なお記憶にあたらしいでしょう。」と配慮をみせる。
さらに1歩踏み込んで「中日国交正常化以来、日本政府と日本の指導者は難解も歴史問題について態度を表明し,侵略を公に認め、そして被害国に対して深い反省とお詫びを表明しました。これを、中国政府と人民は積極的に評価します。日本側の態度の表明と約束を実際の行動で示されることを心から希望します。」「あの侵略戦争の責任は、ごく少数の軍国主義者が負うべきであり、一般の日本国民も戦争の被害者であり、中国人民は日本国民と仲良くつきあわなければなりません。」として、靖国問題等に強く釘を刺しているように思える。しかし他国の国会でよく言うものだ、との感じも免れない。
しかしながら日本との関係は重要であるから、戦略的語形関係の構築に向けて(1)相互信頼増進(2)大局的、長期的視点(3)平等互恵志向(4)交流強化などの重要性を訴えている。ここは問題なく受け入れられる。しかし「台湾当局による「台湾の法的独立」および他のいかなる形の分裂活動にも断固として反対します。」とする点は注目すべきだ。有事の際に日本は手を出すな、といっているに等しい。それに依存はないけれども有事は困るし、有事になれば難民問題など日本にだって少なからず影響がでる!
最後に「氷を溶かしに来た。」・・・・・首相が言ったこの言葉は意味が深いように思う。
エールを送り続けていたのは日本である。それを靖国問題などを理由に高飛車に出て、しかも一方で国防費を年々増強してきたのは中国である。だから氷を溶かす必要があるのは中国のほうだ、と感じるからだ。
早朝のジョギング姿や市場での野菜の値段拝見などで温家宝首相が見せたきさくな人柄が中国の良い宣伝になったことは間違いない。
もともとは中国人は庶民的、気さくで気の置けぬ民族なのだ、と思う。10年以上前、現役時代に中国に何度か出張した。蘭州、柳州、内蒙古の包頭、フフホトなどまで行った。それなりに温かい歓迎を受けた。しかし権力に弱いことも事実だ。「物言えば唇寒し」を知っている。われわれは中国に言論の自由がない、ことを知っている。常に自分の立場、国家の立場を念頭におく。
首相は、1942年生まれ、天津市郊外出身、北京地質学院大学院(地質構造専攻)卒、エンジニア。中国情報局のページにはこのように紹介されている。現在の中国首脳は技術系出身が大半、年代は氏のように我々の年代の者が多い。非常に実直さが感じられた。
今回の訪日は氷を溶かすことにある程度の役割を果たしたが、これからの問題は多い。
靖国問題を日本はどうしようというのか。東シナ海の油田開発問題は・・・・・。
それらは今回は表面をなぞっただけで素通りにした。台湾問題も一筋縄では行かぬ。
・・・・・・果たしてこれからどうなるか。友好はよいことだと思うし推進したい。しかし中国に対する油断は禁物、今回は特にそれを再認識した。
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