557「亀戸天神の藤の花」(5月4日(金)晴れ)

赤い小さな太鼓橋を渡ると、青い銅ふきの本殿の前の池のまわりに藤がたわわに咲いている。時折風に揺られて厚手のカーテンを思わせる。朝早くから相当の人手。道の両側にお祭り気分で露店がたくさん開店準備をしている。
亀戸天神の藤と言うのは昔から有名らしい。安藤広重もそれを錦絵に描いているとか。戦災で全部焼けてしまったけれども、昭和30年頃から地元有志が集まって徐々に復興させた。
その藤の花に押され、今日ばかりは菅原道真公の像も陰が薄い。天神の名物の亀の方は池の中から「どうして人が集まるのだろう。」と見上げている・・・・。

ガールフレンドのAさんはなかなか強情である。
昨日は、彼女は足利の藤を身に行くことを主張したが、結局大洗になった。そこでとにかく藤と言うことで、今日の亀戸天神行き、とあいなった。

庭の向こうのほうでは地元の人が集まってセレモニーを開いている。今日こうやって藤の花を公開することを祝っているらしい。
藤はなかなか写真に取りにくい花である。花一つ一つに桜のようなあでやかさもない。においもないように感じる。色の違いもほとんどない。集まって初めて美しく見える。太鼓橋や本殿あるいは築山などを取り入れて画面構成に苦労する。それでもこれだけ集まるのだから、日本は幸せと言うべきか、物見高い、というべきか。
・ ゆうれいの でる天神も 藤さけば おすなおすなの 人でガッポリ
これは江戸時代太田南圃の作ではなく、平成の御世、阿笠太夫湖南の作とか・・・。

わが国には奈良時代から藤の花を観賞する習わしがあった。万葉集にも藤を詠んだ歌が20数種あるそうだ。そういえば藤娘と言う人形もあった。あれはどういう由来なのか。
あの藤原系一族の家紋は藤である。もっとも藤の模様もいろいろあるようで、垂れ下がるのは気に入らないと、上り藤を家紋にしている家系もあるとか。
もっとも現代は、藤圭子に藤純子に藤あや子・・・・全部知っている人は私と同世代。

藤は豆科の蔦性落葉樹で山野に自生し、なかなか強い植物とのこと。特に土壌は選ばない。水はけがよく、通気が良く、腐植土がおおければいい。根粒菌が共生するので基本的には肥料を施さなくても良く生育する。ただそれだけでは、つるがのびるだけでよりよい開花は望めぬから、花が終ったあとや落葉後にリン酸やカリなどの肥料をほどこす。
種類が何十もあるのはインターネットで初めて知った。亀戸天神の藤はナガフジというごくオーソドックスな物のように見えたが、本当かどうかはあてにならない。
静岡県の藤枝市は、名前にちなんでか日本一藤の美しい町にしようとしているのだそうだ。そこにでも行けばいろいろみられるのであろうか。

見終わって鳥居近くにある船橋やで葛餅。名物らしい。こってりとした蜜がうまい。腹ごなしにと帰りは蔵前橋通りを西へ。蔵前橋、鳥越神社を過ぎ、昭和通を右に曲がり、御徒町、寿司を食って帰った。

付「アカシア、ニセアカシア、エンジュ・・・・」(5月18日(金)晴れ)

妙正寺公園の東北の隅に背もたれが丸くなっているベンチがある。丸くなっている部分に背中や腹を乗せて、屈伸運動が出来る。私も最近は毎朝上向きになって10回ほど伸びをするのだが、頭上の木の枝に白い花がさいていることに気がついた。昔調べた記憶があったから「ニセアカシアの花が咲いている。」と嬉しくなり、周囲の人にも宣伝した。
噂に由れば山形県出身らしいおばさんがいる。私より10くらい年上かもしれない。彼女はなんとなく私が気に入らない様子。いつかも「あんたの体操は腰ばかり振っておかしい。周りの人も真似して仕方がない。」くらいのことを言っていた。彼女と並んで背もたれベンチで屈伸運動をする機会があった。すると彼女は大きな声で「アカシアの花が咲いている。誰かさんがニセアカシアなんていうけれどおかしいわねえ。家の回りにエンジュの紫色の花が咲いているけれど、ニセアカシアというのはあれよ。」と聞こえよがし。その場は適当にごまかしたが、これはもう一度確かめておこうと考えた。

ウエブサイトを10件くらい調べた。昔から問題になるらしく写真入で多くのサイトで説明している。やはり公園の木はニセアカシアと思われた。
ニセアカシアは北アメリカ原産の樹木で日本には明治の初めに導入された。成長が大変早く花も美しいので公園の街路樹や、荒廃した山地の緑化によく使われる。マメ科の植物で、根に根粒バクテリアが共生していて、肥料分の全くないやせた土地でも生育できる。樹高は20-25mになる。公園には3本ほど並んでいるが確かに大きい。「アカシアの雨がやむとき」のアカシア、札幌のアカシア並木、いづれもニセアカシアだそうである。2006年7月現在、外来生物法の「要注意外来生物リスト」において「別途総合的な検討を進める緑化植物」に規定されている。
サイトの写真を見ると丁度藤の花のように白い花が垂れ下がっている。「左右対称の蝶々のような花をつけますが・・・」とある。現物もそのように見える。

この木は、日本に持ち込まれた頃はアカシアと呼んでいたが、その後本来のアカシアの仲間がいろいろ持ち込まれるようになり、区別をはっきりさせるためニセアカシアと呼ぶようになった。ただ「ニセ」と言う言葉を嫌い、托葉の変化したトゲが目立つという特徴をとって、ハリンジュという名前もつけた。公園のものはもう一度見直すがトゲがない。しかしサイトには園芸用に改良されたものにはトゲのないものもあるというからその部類なのだろう。

アカシアは暖かいところに生育する植物で、オーストラリアに特に多いのだそうだ、種類が全部で1200種あるがそのうち700種はオーストラリアとか。いろいろな花のものがあるが写真で見ると黄色い花のものが多いようだ。「オジギソウやネムノキのように花弁は小さく目立たず、それよりも長いオシベが目だった、タンポンのような花をつけます。」
またおばさんのエンジュも、マメ科の植物で中国原産。台湾、韓国、日本などに分布。和名は古名エニスの転化したもの。白色の花が咲くとあるが写真は薄紫色になっていた。
マメ科といえば藤やあのいつか山でみかけたジャケツイバラなどもそうらしい。それらについてもおりがあれば調べてみたい。

註 ご意見をお待ちしています。
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読者から次のようなメールをいただきました。彼も藤を見に行ったのですが

「・・・・・小生の目的は升本で亀戸大根の漬物を買うこと、および佐野味噌で味噌を買うこと
その二つが主で藤はおまけでした。」

大根の漬物と味噌が名物とは知りませんでした。