黒鯛はわたしにとって悔しい魚である。
もう何年前になるのだろうか、会社の先輩の一人が、魚釣りが好きで、その人に何度か江の島の磯に連れて行ってもらった。
「飛ばし浮きがいい。」というので、買い求めたり自分で作ったりした。
竿を投げることなど最初は分からなかったから庭で練習した。
しかし余り遠くへは飛ばなかった。それにこませを釣り針が落ちるあたりにまくと言うのだが、へたくそであらぬ方向にばかり投げた。
結果、ちっともかからぬ。しか適当なところで揚げてみると,餌だけはちゃんとなくなっていた。一匹も釣れなかった。
時折、ぐいと強い引きがある事があったが、ヒイラギと言う骨と皮ばかりの魚であったり、あるいは右にも左にも動かずただ震えていると思ったら子蛸だった。
先輩はシーズン30匹とか言っているのに、なんで私の竿にはかからぬと悔しかった。
あれは悪食だ、スイカの皮でもひっかかる、というのに。
今日、私は66歳の誕生日を迎える。
ガールフレンドのAさんとはあさって高尾山のうかい鳥山にゆくことになっているけれど、とりあえず今日は自宅で気軽に祝おう、と言うことになった。
彼女が、赤飯を炊き、ケーキを用意してくれる。
私のほうは、おかず。魚屋に行くと奥のほうに大きな黒鯛が威張っていた。40cmもあろうか。江の島で釣れるものは、あんな大きくはなかった!
養殖なのだろうか、大きさの割りに安い。隣の真鯛に比べると3分の1だ。
「黒鯛は真鯛にくらべる味が余程おちるかね。」とお兄さんに聞くと「黒鯛は黒鯛の味さ。真鯛は真鯛さ。」と素っ気のない返事。
一度思い切り食って見たいと思っていたし、値段にも惹かれたから黒鯛になった。
「立ってる者は親でも使え、魚屋もどんどん使え。」と三枚におろしてもらった。のみならず頭は二つに割ってもらった。
家に帰って一服していると、もう時間がない、あわてて料理。
頭は、きれいにして、塩コショウし、ニンニクみじん切り、赤とうがらし、レモン、オリーブオイルをまぜた特性のたれをかける。これを180度のオーブンで13分。これはあるイタリア料理の本に書いてあった方法。
骨、脇の肉は醤油、酒でにつける。脇の肉は少しとっておいてスープにする。
さて本体、皮をむけばいいのだけれど、堅い、堅い。最後は包丁で皮と身を切り分けるみたいになってしまったがしかたがない。
それでも滑り込みセーフで何とか出来上がった。
「おめでとう」「乾杯!」
黒鯛の刺身は、少々きれいに並ばなかったけれど、味だけはなかなかだった。
後記 スポーツクラブで知り合った焼き鳥屋をやっているという男に、聞いたところ「切り身は皮のついたまま熱湯につけ、すぐ氷水につけるとよい。こうすれば皮もたべられ、冷蔵庫に入れておけば2,3日もつ。」との事だった。
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