571「ホタルイカが弁当箱二つ」

父の日など誰も覚えておるまい、と思っていたら、二人の娘からお祝いが届きうれしかった。ところが長女のものはホタルイカである。
大きなプラスチックの弁当箱二つ。ぎゅうぎゅうに氷で固めてつめてある。
一体独身一人住まいで、どうやってこれを食うんだろう。一度に戻しては、とても食いきれぬ。

とりあえず味見をしようと、あのイタリア料理屋ベットラの主人の書いた本に、ホタルイカのスパゲッテイがあることを思い出した。
弁当箱の端のほうに流水をかけて懸命にもどす。力をいれるととたんに身が切れてしまうからいけない。それを20匹ほど。本当はレシペにはホタルイカの目と軟骨を一つ一つ取り除け、とあるがそんな面倒くさいことはしない。
オリーブオイル、ニンニク、唐辛子でアッリョオーリオを作り、ホタルイカを入れ、白ワインを大匙2杯ほど入れ、加熱すればタレ?の出来上がりである。はらわたが出てきてアッリョオーリオとまじり赤くなり、それなりの風味もでてくる。
これにゆでたスパゲッテイをいれ、からめると、それなりの昼飯を楽しめた。
ホタルイカは、本当はナマがうまい。
しかし7%くらいの割合で寄生虫がいるそうだから油断できぬ。

以下例によって例のごとく、ウエブサイトなどで得た情報。
富山湾のものが有名だが、オホーツク海、北海道、関東、北陸の以北から朝鮮半島にかけて分布している。送られてきたものも山陰沖産でこちらも有名としていた。
昔は松の肥料にしていたから「マツイカ」と呼ばれていたが、明治38年に生体研究で有名な渡瀬庄三郎博士により「ホタルイカ」と命名されたという。学名は博士の名を冠して「ワタセニア・シンチラチス」と呼ぶ。

確かホタルは、メスを引き寄せるためオスの尻が光るのだ、と聞いた。
ホタルイカは違う。光っているのは、皆メスである。
本来はホタルイカは、200-1000mの深海にすんでいる。1-3月頃オスは生殖腕と呼ばれる右側第4腕から、精子の入ったカプセルである精夾をメスの体に植えつける。産卵期になるとメスは群生して浅場に来る。これを人間様が定置網などでごっそりいただくわけである。オスはカプセルを渡した後、メスは産卵後、まもなく一生を終え、寿命は1年である。
産卵は1回あたり2000粒ほど。1個体では約1万個。水温10度で約2週間後に孵化し、2日目には泳ぐようになり、墨を吐くようになる。光は一対の足の先に3個づつある発光器からでている。網に絡まったり、海岸に打ち上げられたりすると発光することから、外敵に対する威嚇のためと考えられる。また左右の目の腹側にもそれぞれ5個並んでいるが、こちらは人間には識別できぬほど弱い。上部からの明るさに対して、外敵から身を守るために下部方向に光を発し、周囲の明るさの中に溶けこんでしまう作戦である。

最後に我が家のホタルイカ大作戦。・・・・・まだ続いている。夜はガールフレンドのAさんを呼び、炒め物にしたり、ゆがいてサラダ風にしたりして食ったけれどまだまだ沢山残っている。どうしたものか。長女にお礼の電話をして「一人では中々食いきれぬ」と言ったところ、凍らせたまま放っておけばいいでしょう、と言う。品質はおちないのかなあ。

後記 どうやって加熱したら言いのだろう。湯に通すと体と足が分離し、内臓がでてしまってバラバラになってしまう。崩さないように蒸してみたが、結果は似たようなもの。
やっぱりレシペにあるように、目玉と軟骨はとらないとだめだ。食べたときの気分が違う。食べきるのにだいぶ時間がかかった。最後はしょうゆと塩で濃い目に味付けし、10日位で食べきった。お腹は幸いなんともなかった。

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