「予想外の事故であった、なんて言ってはいけないんだよ。そんなことを言うと一般の人は原子力発電を危険なものだと思ってしまう。」
今回の中越地震で柏崎の東京電力発電所が大きな被害をうけた。それについて大手ゼネコンに勤めていた某君の言葉である。
そうかも知れない、とうなづきながら、じゃあ、どう言えば良かったんだ、と疑問に思った。地震報道の直後、別の友人に聞かれて同じように「東京電力は安全指針を守っていたようだが・・・・・」と答えると「原子力発電所が絶対安全なんて言ったのはだれだ。」と食って掛かられたことを思い出す。
今日の新聞で、柏崎に復旧には炉心まで点検するから最低1年かかる、との報道が流れていた。それを聞いて、TVで主婦らしい女性が「電気は必要ですけれども安全が第一ですし・・・・」と言っていた。仕方のないことと思うが早くして欲しいものだ。
ところで事故により東京電力の株価が大きく下がった。原子力不信に伴う風当たりに加え、安い原子力に変えて他社からの融通電力、石油火力の復活などの施策をとらざるを得ない。そのため原価が大幅に上昇してしまい、損失は2000億にも及ぶという。これが財務に悪い影響を与えるから株価が下がった、というのだ。
「そんなに石油が高いのなら石炭を使えばいいじゃないの。炭鉱を閉山したりするから、いけないのよ。」と例の友人。
「石炭でやればもっと高くつくさ。日本の炭鉱を閉山したのは、採算がとれないから。船で持ってきた石炭にさえ対抗できない。」これが私の知っている限りの答え。
そんな時面白いことを聞いた。イタリアのサッカーチームが日本に来ることを取りやめた、と言うのである。「今度の地震で、原子力発電所から大量の放射能が漏れたらしい。日本は危険だ。」というのだ。そんなことはない、と説得したが一部の選手は聞き入れず、結局中止になった。柏崎市長の要請などもあって日本政府は、オジャマムシにも見えるIAEAの査察を受け入れることにした。誤解を解く上では必要なのかな,など思った。
そのイタリアは、実は、国民投票で原子力発電による電力の供給を行わないことに決めたのだそうだ。その結果大量の電力をフランスなどからの輸入に頼ることになった。結構なのだが、送電線があるときトラブルで電力供給不足を招いた、さらに一般の電力価格はスペインやフランスの倍と言う。
安全に絶対はない。直下型地震が起これば、どこに設置しても、絶対安全とはいえまい。
すると原子力に頼らない電力供給。ずっと将来を考えたとき、まず第一に石炭石油火力に頼る・・・・すると電力料金はどの程度に上げなければならないのか、次ぎに地震のない国に頼んで電力を輸入する、その場合、価格とともに安定供給の保障はどうなるのか、そんなことを考えた上での国民の選択になるのだろうな、と考えた。
もちろん、自然エネルギーは素敵で、一番大きいのは太陽熱である。しかし余程広い海をソーラーパネルで覆わなければなるまい。自然の海もまた太陽の恩恵をうけており、その環境等を犠牲にしなければどうにもならないことは確実である。
電気は使わない、50年前の生活に戻ればいい、と言うのであればそれはまた別の話だが・・・・・。
註 ご意見をお待ちしています。
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追記 549「待ち行列は難しい!・・・爺の意地編」について読者の一人から興味あるメールをいただき、私も検討してみました。それについて追記として今回掲載しましたので、興味のある方はホームページをご覧ください。
読者からいくつかメールをいただきました。皆様の了解を得てそのまま掲載します。
A氏 中越沖地震で被災した企業のマネージメント
去る7月16日の午前10時過ぎに、新潟県中越沖でマグニチュード6.8の地震が発生した。震源の深さが浅かったこともあり、柏崎市を中心に震度6強を、また新潟県、長野県の各地でも震度5強から6弱を記録した。
首都圏でも周期の長い横揺れを感じた人も多かった。テレビの画面には東電柏崎の刈羽原子力発電所構内で発生した火災の黒い煙が映し出されており、住民はもとより視聴者の不安を煽るような事態となった。時間の経過とともに、被災状況が明らかになり多くの死傷者、家屋の倒壊、電力・ガス・水道や道路などのライフラインが寸断され、現在も復旧作業が続けられている。私は刈羽原発の被災実態から見て、今夏の稼動は難しいのでないかと思った。夏場の電力供給に赤信号がでると、休止している石油火力の再稼動や他電力会社からの融通並びに節電や大口需要家への電力カットなどの措置が必要になる。一時、エネルギー価格の高騰で採算性の悪くなったコージェネへの回帰もありうる。そして、東京電力は莫大な広告費を使ってテレビやメディアで宣伝している「オール電化キャンペーン」を早急にやめて、安定供給や安全管理についての取り組みや原子力発電の被災実態と復旧情報に切り替えるべきとの認識を持った。
ようやく、「オール電化キャンペーン」は自粛するとの発表があったが、後段の取り組みは未だなされていない。また、柏崎市に工場がある自動車部品メーカーの「リケン」が被災し、エンジンや変速機などに必要な主要部品が供給できなくなったために、トヨタを始め自動車メーカー6社が一時、生産停止に追い込まれた。「リケン」は世界の自動車メーカーにピストンリングを供給しているが、市場占有率が6割を超えており、しかも柏崎の工場で集中生産していたことが災いした。ここでリスクマネージメントについて考えて見たい。仕事がら工場などを訪問した際に、「万一工場に火災が発生して、消防隊によって消火された後に、工場の再開に向けて具体的に何をすべきか決まっていますか」と質問すると「それは現場に任せてあります」という答えが返ってくることが多い。それは何も決まっていないのと同じことだ。リスクマネージメントというのは非常に単純化すると、何から守るかという視点である。従って、リスク要因を洗い出して分析し発生確率やインパクトを考える。しかし、刈羽原発や「リケン」の場合、震災により被災したという事象に対して「何を守るか」という切り口でのマネージメントが出来ていなかったと言える。企業が震災や火災等で操業が出来なくなったという事象を、事前に分析して事業継続のマネージメントを確立しておくことが肝要である。専門用語ではBCM(ビジネス事業継続の管理システム)というが、ある事故が発生して操業がストップした場合を考えて見たい。BCMは許容される期間内にどのようにすれば事業が再開できるか、事故後も必要最小限度の稼動水準を維持させるにはどうすればいいかという視点で社内のプログラムを確立しておくことだ。これまでの危機管理や地震対応は主として、人身救助や財産保全については検討していても、事業を継続するという視点が抜け落ちてしまっていることが多い。
リスクマネージメントやBCMは企業のニーズというよりも社会のニーズで出てきたのだと思う。そもそも企業に社会的な有用性がなければ、誰もその存在を望まない。その上で、その企業が存続しなくては社会的に困るケースがある。
当社も常に社会性というものを視点において、「何から守るか」そして「何を守るか」を追求していかなければならない。
B氏 地震発生後直ちに止まったのだから、それなりの安全装置が働いたと思うし、炉心に事故が無かったのがなによりで、耐震設計に関し旧基準でもこれだけ安全だと世界に訴えた方がいいのではないでしょうか。どうもテレビは煽り過ぎている様な気がします。
柏崎の人たちは言いたい事を言っていますが、東電が柏崎に落とす金で財政がとても豊かで恩恵に浴しています、原発を移動できない事を承知の上で、言いたい放題ですね。私にとって痛いのは株が下がった事です。
C氏 今回の中越地震で柏崎の東京電力発電所のメディアの報道については、例によって不安を煽るような表現となる。火災発生は放射能漏れとは関係ない、一般の発電所のちょっとした「ボヤ」のような
ものである。放射性物質の放出についても、
「そのレベルや人に与える影響はどうなのか」
「緊急対応処置ができる範囲なのか、暴走の可能性があるのか、周辺住民に対する危険性」
といったことに言及せず、放射能漏れあり、原子力発電所は安全ではない、杜撰な管理!!!等々の批判となる。
参考までに、東京電力のサイトをお送りします。こんなところが冷静な表現のようにもおもえます。本メールは、東京電力の生活情報リサーチサイト「TEPORE(テポーレ)」をご利用の方に、配信しておりす。
このたびの新潟県中越沖地震により、被災されました皆さまに、心からお見舞い申し上げます。
地域の皆さまならびに広く社会の皆さまには、当社柏崎刈羽原子力発電所においての火災発生や放射性物質の放出などにより、大変なご迷惑とご心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。
発電所は地震発生とともに運転中、起動中の四基が自動停止し、定期検査中の三基を含め、現在、七基全てが安全に停止しております。また、地震に際して放出された放射性物質につきましても法令レベル以下であるとともに、自然界から受ける放射線よりも十分低い値でした。
当社といたしましては、皆さまにご安心いただけますよう引き続き全社をあげて被害の全容把握に取り組み、その状況についてお知らせしてまいります。何卒、ご理解賜りますようお願い申し上げます。
平成19年7月27日
東京電力株式会社
取締役社長 勝俣恒久
C氏追伸 8月3日の読売新聞に「検証 柏崎原発地震被災」が3面に大見出しで掲載された。無責任な報道後でも、このような報道がされれば多少はメディアの罪も許されるか!?しかし、いったん報道されたものを戻すことは至難なこと、取り返しがつかない。そんなことは、無知で、傲慢な報道関係者には理解できない。報道による被害がどれほど重大で多くの人々が深刻な被災を受けているか、今後もメディアは、決して反省することはない。
「検証 柏崎原発地震被災」の主な記事を箇条書きにしてみる。原子力発電所内での火災や浸水、放射能漏れが大々的報じられたが、
・ 安全システムは正常に働いた
・ 原子炉本体などの最重要機器損壊もない
・ 被害は周辺設備にとどまっていた
・ 原発の耐震力の強さを示した
と総括し、具体的な検証として、マスコミ各社がトラブルの個々の重大性を十分吟味せずに大きく報道した。 地震など万一の際、原発に求められる最重要三機能がある。
・ 安全の炉を止める・・・想定を超える680ガルの揺れにもかかわらず無事に停止した
・ 安全に冷やす ・・・水の循環による冷却システムは正常に機能した。
・ 放射性物質を漏らさない・・・「放射能漏れの危険が報道された」
<確かに放射能漏れが2件あった>
1件は6号機の使用済み燃料プールから海に流れた・・・年間に自然界で浴びる量の12億分の12件目は、7号機のタービンを回す放射能を帯びた蒸気の一部が大気に放出・・年間に自然界で浴びる量の120万分の1で、どちらも微量で環境や人体への影響はない。しかし、まさに報道は間違っていないというのがマスコミの論理!!!!そして、「不適切な報道には、きちっと対応してほしい、これだけの地震に耐えたことをもっと示さないいけない」と原子力保安院や東電の勝俣社長に苦言!!!!!
国内外のマスメディアが「放射能漏れ」を大々的に報じ続けた。その結果、
・ 「旧ソ連チェルノブイリ原発事故のよう」
・ 「放射能の恐怖で周辺住民は夜も眠れない」
などなど、大げさな報道が、風評被害を引き起こした。イタリアのサッカーチームの来日中止、新潟の観光地での宿泊キャンセルの続出、臨海学校のキャンセル等々・・・しかし、報道業界としては全く無関係であり、よそ事である。