593「小至仏山も至仏山も同じ様なもの?」(9月24日、25日(月、火)雨、雲り)

大学生の頃泊りがけで尾瀬に行ったおり、先輩に山の名前を教えてもらった。どれでもいいからいつか登ってみたいと思った。その一つ至仏山(2228m)に登る、という案を聞いたとき、登れるだろうか、と思った。今66歳。高低差700m、山の頂上付近は蛇紋岩が露出しており、非常に滑りやすいのだそうだ。しかし同時に登るなら今のうちしかない、足腰次第に弱くなる、と感じた。

真っ暗な食堂で数人蠢いている。小屋の前のベンチは濡れている。午前5時。鳩待ち小屋、尾瀬観光の基点として非常に便利な場所。夕べは11時20分に新宿を小型バスででた。満員。すし詰め状態。「目をつぶって静かにしていれば、それだけで寝た効果がある。」といわれたので、そのとおりにした。寝たのかどうかわからぬ、いつの間にかついた感じだ。参加者16人。男女半分くらいづつ。皆それなりに自信のありそうな顔をしている。やっと食堂の電気がついて朝食。
5時50分に出発の予定だったが、その頃になって雨が大粒になってきた。幹事のA君が思案投げ首。天候が悪かったら尾瀬ヶ原散策に変えることになっている。しかし「ここまできて登らないで帰れるか。」と皆は強気。結局「とにかく手前のテラス台まで行ってみよう。朝のうち、前線が通過するが、昼頃からは天気が回復する、と言う話もある。」。ジーパン姿の私を見たCさんの「木綿は濡れやすいから、下も着たほうがいい。」と助言。上も下もレインコートをつけ、傘までさして出発。

もう十分に明るくなっている。山は、かなり木の階段や木道が整備されている。しかし通路は窪んでおり、雨が激しく降ったら濁流が流れてくるに違いない、と恐れさせる。蛇紋岩はまだ現れない。ようやく1時間以上かけて見晴らしの良いところに出た。近くに大きな岩がある。トカゲ岩とよばれているのだそうだ。
ちょっと薀蓄。後で調べたところによれば、蛇紋岩は暗緑ないし黄緑の蛇の皮のような岩、非常に風化しやすく谷川岳などでは滑落事故の原因となる場合が多い。蛇紋石が主成分。蛇紋石はカンラン石が変質したもので、カンラン石に比べ珪素分が少ない(45%以下)。代表組成は(Mg,Fe)3・Si2O5・(OH)4。砂が石になったようなものだ。
トカゲ岩からしばらく行くとオヤマ沢田代。雨がやみ天候が少し回復してきた。ようやくテラス台。見晴らしがよくベンチがおいてあるからそう呼ばれるらしい。白い雲が谷底から上がってきて、ところどころに晴れ間が見える。わいわいやりながら、みなちょっとした達成感で、お菓子など。ここから小至仏山まで30分、そこからさらに1時間足らずで至仏山である。少し遅れて出発したこともあり、至仏山は時間的に無理、ということで小至仏山(2162m)まで行くことにする。ここで付き添いを入れて女性3人が下山した。

階段を何度か登った後は岩場である。あの蛇紋岩の岩場で、その上濡れているからひどく滑りやすい。まともに平らな岩に足をつこうものならどうなるか分からぬ。岩場に苦戦しながらようやく到着。しかし頂上付近も完全な岩場で休むところとてなく、しかも雲がおおっているから何も見えぬ。13人そろったところで小至仏山の石の標識のまわりに群がり、記念写真。「至仏山まではこんな山道が続くだけですよ。」「じゃあ、どっちも似たようなものだ。」「この標識の小は隠して写真を撮ろう。」すぐ下山にとりかかる。
テラス台まで戻ると、雲の晴れ間からむこうに尾瀬ヶ原、燧ヶ岳が見えた。少し行くとまた雨が降りだす。しかしまだまだ時間は早いから登ってくる人たちにでくわす。一旦追い抜いたB君が追いついてきたから、先を行ってもらったが歩き方がおかしい。先ほど転倒しそこなって内股が痛いのだそうだ。そのせいか。木道に足を滑らせて二度もころぶ。二度目に転んだときに左親指に木片が刺さりこんでしまった。12時前に下山。B君は「破傷風にでもなるといけないから。」と沼田の病院に向かった。油断大敵。「皆無事に戻れて・・・」といいかけた幹事がニュースを知って渋い顔をした。

2時20分の迎えのバスまで大分時間があった。風呂に入ったり昼食をとったりして過ごす。一度晴れたがまた雨が降ってきたりで、山の天気の変わりやすさを実感する。帰りのバス・・・しかし楽しかった。私はいつまでこんな山歩きできるのだろう、など考え、幹事に感謝の気持ちで一杯であった。我が家には9時。お疲れ様。

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