テレビで、あの「中陰の花」で芥川賞をとり、福聚寺の副住職をしておられる玄侑和尚が、名前は忘れたが尊敬する人の書を紹介していた。四角と三角とマルが並べて書いてあるだけだ。三尊の仏様にたとえるなどいろいろな説があるらしいが、私はおでんのこんにゃく、はんぺん、大根を思い浮かべた。これなら私にも書ける一つ書いてみようか、と思った。ナン百年かあとで、それを見つけた人が「おお、21世紀の日本と言う特殊社会の悩みを象徴している。」などと感心するかもしれぬ。
部屋をどう飾るか。
部屋は何に使われるのか、その飾りは何のためにあるべきかを考えるべきと思う。
和室は我が家で一番立派な部屋である。亡くなったカミサンが表千家で師匠の免状をもっていた。その彼女が家を建てると聞いて、思い切りわがままを言った。お茶を出来るようにして欲しい、と言うのだが、「和室には床の間が必要でしょう。」「箪笥や蒲団を入れるところは必要だけれど、そういうところは部屋に入ったとき見えてはいけないのよ。」「廊下があるといいわね。」裏庭ににじり口が必要、といわないでくれただけ助かった。とにかく8畳の和室は15畳くらいの面積を占めることになり、おかげで隣の洋室が狭く壁の並びがでこぼこになったりしてしまった。
その彼女が、長い病の末亡くなって、もう10年以上がたつ。その和室に私は一人で寝ている。客が来たってみな洋間で対応するから、普段はもっぱら寝室である。そういう部屋には自分で書いた自分の趣味にそったものを展示してみたい。
掛け軸には、カミサンの頃からあるどこぞの坊主の書いた「水急不流月」との色紙が飾ってある。あれを私の書いたものにしよう。
文字がうまい下手はどうやって決める。私はそんなものに決まりはないものと思う。テレビで風林火山をやっている。最初に出る風林火山の文字はうまい、と言えるだろうか。個性があっていかにも風林火山らしいからありがたがるのであって、うまいかと言われれば分からぬと答えるしかない。
ただきれいな字は、ある本に由れば(1)右に6度あげる。(2)右下に重心をかける。(3)等間隔にする。が原則だとあった。それからもう一つあるとすれば一つは書き順だろう。
せめてそれくらいは頭の隅においておくことにしよう。
最近4字熟語で覚えたものを書こうと決めた。「磨穿鉄硯 円木警枕」筆が少し小さくて、それだけではどうも収まりがつかぬから「通暁暢達 温柔敦煌」・・・・鉛筆で大体の書く位置をきめて後、必要なのは筆勢とばかり、一気に書いた。我ながらへたくそ・・・・
しかし妙に満足して床の間に書け、その床の間は西むきだから気に入らぬと、足を東にむけて本日はご就寝!天井を見ながら、あのふちに丸と三角と四角を書いておくべきだったか、などと考える。
追記 どうも文字だけの掛け軸は色気がない。墨絵をやったわけではないけれど、何か描けないものかと考え、お正月に買った絵手紙セットを取り出し、庭の柚子の絵を描いた。絵が少し小さかったから四隅が余った。名前と落款で一箇所、姫ゆずの文字、それに神無月と書いたが、まだ右下が白い。母の残した俳句の本を取り出し「どこやらに 柚子の香がして 厨ごと」と書いた。ついでに掛け軸の下に自作の抹茶茶碗を置いてみた。この次は俳句も自分で考えたいものだ。
註 ご意見をお待ちしています。
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読者から次のようなメールをいただきました。
書道は難しいですね。
小生は生まれながらの悪筆で、今はパソコンに助けられていますが、
肉筆は見られたものでは有りません。昔一念発起して書道の先生に
通ったのですが、物にはなりませんでした。
そのときのことですが、先生が日展に出したというので入場券をもらい見に行きまし
た。
ココの作品は殆ど何という字か読めませんでした。素人に読める程度では
立派な作品とはいえないのでしょうか。それで先生の作品も読めずに帰って
きました。
本来字というものの目的は何かと考えたときに不思議な気がしたのです。