624「陶器の出来るあらまし」(1月11日(金) 曇り)

陶芸のA先生は大分前から穴釜にこっている。最近はそれが昂じて備前焼まで楽しんでおられる。だんだん粘土の焼成そのものに興味をもってきているようで「陶芸に関係する金属の融点を教えてくれ」と尋ねられた。そのこと自体は、以下にしめすように簡単であるが、この際、ごく簡単にウエブサイトをもとに粘土焼成の化学をまとめてみたい。
(主な金属の融点)Al 660.37度C、Fe 1540、Si 1410、Cu 1083.4、Ni 1450、Na 97.81、Pb 327.502、Pt 1064.43、Au 1064.43
(主な金属酸化物の融点)酸化物は結晶構造によって融解温度が異なる。ここでは代表的なものを上げる。
αアルミナ(Al2O3) 2054度C、FeO(酸化鉄) ~1370、Fe3O4 1538、SiO2 1726(但し同様の化学組成であってもクリストバライト 1713、水晶・石英 1550)、CuO 1236、NiO 1984、Na2O 1275で昇華、K2O 350で分解(以上「化学便覧」)

さて、本論。粘土は基本的には酸化アルミニウムと酸化ケイ素と水が複雑に絡み合ったものである。実際にはこれらの成分に加えて、各種金属の酸化物、有機物等が絡み合い、複雑・多様な構造をし、特色をしめす。
一般的なよい粘土には次のような条件が求められる。
1 可塑性があり成型しやすいこと
2 乾燥・焼成により収縮率が少ないこと
3 焼成によりガラス成分ができて強固になること。
4 耐火性が高いこと
これらの特色を備えた粘土としてカオリナイトが挙げられる。これが多く産出したことにより中国では陶器産業が古くから発展した、といわれる。カオリナイトの組成はAl2O3・2SiO2・2H20である。これを焼成してゆくと、最終的にはムライト3Al2O3・2SiO2(融点1850度)となる。しかしカオリナイトとムライトを比べてみると、前者のほうがSiO2が大分多いことに気がつく。そのため、正確にはムライトとあまったSiO2、つまりガラス質の結晶が残ることに気がつく。ちなみにAl2O3が極端に多い場合、コランダムとムライトが残るが陶芸では余り考えないでいい。

最初と最後をおさえたところで、粘土を焼成した時の変化を追ってみる。
粘土は十分乾燥させたつもりでも、「結合水」と言う水分か残っている。結合水は素地表面とある種の総合作用によって結ばれている吸着水および沸石水、および結晶構造の一部となっている結晶水に分けられる。吸着水や沸石水は200度程度まで加熱する間に除去されるが、結晶水は500-600度まで温度を上げないと除去できない。
温度をさらに揚げてゆくと573度で石英の構造変化(α型からβ型転移)が起こり、体積が若干膨張する。そのため温度を早く上げすぎると、素地にひび割れを生じる事がある。ここを越えるとさらに焼結が進み、カオリナイトAl2O3・2SiO2・2H20は完全に脱水、いわゆる焼結が進みAl2O3・2SiO2になる。これをメタカオリンと呼ぶが、他のメタカオリン粒子や長石、石英と焼付けを起こして凝集するため、表面および内部にかなりの空孔を含んでいる。この段階で一旦焼成をやめた状態が素焼きである。1000度前後でメタカオリンはケイ酸の一部を遊離させ、再び結晶化してムライトを生成する。
3(Al2O3・2SiO2)'3 Al2O3・2SiO2+4SiO2
ムライトは素地の骨格となり、ケイ酸分はその間に溶け込んでゆき、急速に焼き締まって行く。昇温停止後、冷却過程においてムライトや結晶化したケイ酸分の析出が進むとともに一部はガラス転移によって固化し、焼結反応が終了する。

最後に私が陶芸を行いながら感じた素朴な疑問について。割れた茶碗は元の粘土に戻るだろうか。これについて書いた文献はなかった。しかし2000度を越える高温と不純物と水分のゆっくりとした反応によって可能なのだろうか。自然界ではそのようにして土ができたのだろうから・・・・。

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