629「「小町村芝居正月」を見る」(1月26日(土) 晴れ)

国立劇場で通し狂言「小町村芝居正月」をみてきた。
「見てきた」と行っても、ガールフレンドのAさんが切符を用意してくれて、私は用心棒よろしく腕組みなどして後ろからついて行く結構な役。成人式と違って和服姿のよく似合うお姉さん方も沢山お出ましだけれど、そちらの方に気を取られているとどやされるから注意!歌舞伎は、やっぱり本物をみるのがいい。テレビは、長い時間落ち着いてみるには、向いていない。本物はいやでも舞台に長い時間ひきつけられるところがいい。
それにしても株式市場が大暴落していると言うのに日本はのどかなもの・・・・。ぼやきは、腹の中にこの際しまいこむ。

出し物は「小町村芝居正月」。1789年江戸中村座の顔見世狂言として初演されたもの。219年ぶりの再演であるとか。場面の寄せ集めでなく、通しである事がうれしい。
平安時代の初め、文徳(もんとく)天皇が重い病にかかわり次の天皇を決めなくては成らない。本来は兄の惟喬親王が継ぐべきだが、日食のうまれだったために、これを嫌った先帝は弟の惟仁親王に帝位をゆずるよう遺言を残していた。だが大伴黒主は兄新王が帝位を継ぐべきだと、主張。その家臣は、遺言書を盗み出し関寺の太刀自婆に預ける。またその息子の名虎は、大内の宝蔵から帝位の即位に必要な「叢雲の宝剣」を盗み出し東国に逃げる。
人々が入り乱れる暗闇の中、黒主が現れて呪文を唱えて竜神を筒の中に閉じ込め、日照りを引き起こし世の中を混乱に陥れる。宮中では遺言状がないならと惟仁親王を追い出し、惟喬親王が帝位につき、惟仁新王をおす藤原良房、小野小町等と対峙する。ドタバタ劇が続き、やがて大伴黒主が本姓をあらわし、帝位につくのは自分だ、と宣言する。
東国での小町等の苦労話が続き、大団円は神泉苑での対決。大伴黒主が即位し、抵抗しようとする惟仁親王、小町等を切ろうとするが、そのとき小町の恋人、深草少将の忠臣、孔雀三郎が「しばらく」と声をかけて登場する。大団円における「暫」というのは一つの約束事だったらしい。

話はこじつけ、荒唐無稽な感じもするけれども、新春の狂言としてなかなか楽しめる。考えてみれば、昔はこんなもので日本人は生活を楽しんでいた、と改めて思いいたさせる。
半分役者の顔見世もあるようだ。ずらりと並び、様々な衣装で見栄をきるところは楽しい。俳優のメークアップもなかなか楽しい。
舞台がゆっくりと回転し、雲海を飛びながら、大伴黒主が自分の目的を告白し、あわせて竜神を閉じ込めて見せる場面など舞台の仕掛け等も面白い。なんだか俳優と観客が一緒になって盛り上げている感じがする。もっとも最後の竜神が現れ、雨を降らせる場面などは厚紙の絵のバックが出てきただけで、随分とチャチイけれども・・・・。
筋立てはインターネットの解説ではひどく複雑に見えるけれど、実際は分かりやすい。イヤホンガイドなど不要の話の展開。結論もこうなるだろうと予想がつく。それを見越してか最後に転ぶはずの大友黒主は舞台に居座ったまま、中途で幕切れになった感じでも観客はやんやの拍手。現代風のギャグもふんだんに取り入れられて、まさに紀元2007-8年の、おらが「小町村芝居正月」、よく考えてみるとこの題名もふさわしい。

菊五郎は、黒主と深草少将、松緑は、紀名虎と孔雀三郎など敵味方二役を一人の人間がこなす・・・・大変だろうなあ、と思う。もっとも私は俳優の名前をよく知らない。だから彼らスターが登場すると大向こうから「**屋!」などの通ぶった男の声が飛ぶ。打ち上げ花火じゃあるまいし、「静かにしろ!」と叫びたいが問題のようで・・・・・。
正月興行特有のおひねりだか、おもちだかも幕間にばら撒かれた。もっともこちらは席が二階でぜんぜん届かなかったけれど・・・・。

昔は歌舞伎だ、狂言だ、といってもそれは大衆芸能だった。庶民が気楽に楽しむための者だった。入場料もきっと今みたいに高くなかったに違いない。役者もふんぞりかえっていたわけではい、などと考えた。あたっているだろうか。とにかく自分としては楽しいひとときを過ごせてハッピー、と言う思いであった。

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