636「エリザベス ザ・ゴールデンエージ」(2月19日(火)晴れ)

映画「エリザベス  ザ・ゴールデンエージ」を見る。
この作品は1998年に公開された「エリザベス」の続編である。監督のシェカール・カブール、主演のケイト・ブランシェットは共通。私は2003年にみて、感想を歴史的背景についてのコメントをつけて通信の170に掲載した。

昔シュテファンツヴァイクの「メリー・スチュアート」を読んだ。
メリー・スチュアート処刑の場面は、ツヴァイクの書き方のうまさで今でも思い出す.
「刑吏の斧による死は、つねに恐ろしいぞっとするようなもの、俗悪な屠殺と言ったものになるのである。首切り役人の最初の一撃は当たり所が悪く、首に食い込まずに鈍い音をたてて後頭部に落ちた。咽喉のゴロゴロとなる音、呻き声が苦しみもがく人の口からむせるように漏れ出たが、高い声にはならない。第二撃は深く首に食い込み、血がさっとほとばしる。が、第三撃でやっと頭は死体から切り離される。そしてもう一度ぞっとするようなことが起こる。刑吏が髪の毛を?んで頭を持ち上げて見せようとしたとき、彼はかつらだけ?んだので、頭がとれてしまったのである。」
そして刑吏が死体を隣室で香油をかけるために運び出そうとしたとき、女王の愛犬が流れ出た血でびしょびしょになって着物の下から飛び出してくる。
「彼は吠え、噛み、きゃんきゃん、わんわんとなき、そして死体からはなれようとしない。・・・・彼女のむすこや彼女に忠誠を誓ったいく千とない人たちよりも熱情的に、かつ立派に、この小さな動物は、その女主人のために戦ったのだ。」
映画はもちろんここまで描かれているわけではなく、首切り役人の斧が振り下ろされたところでオシマイ。この小説を読んだ経験に加え、ウエストミンスター寺院、幽閉されたロンドン塔、エジンバラのホリルード宮殿などメリースチュアートゆかりの地を、けっこう訪問したので非常に面白く感じられた。

大分話がずれたが、映画は得意の絶頂にエリザベスからスタートする。ローリー郷が新大陸に植民地を開拓したと報告し、「ヴァージニアと名づけました。」と言うと、女王が「私が結婚したら、マリッジニアになるのか」と答えるところなど面白い。
しかし16世紀後半、世界の覇権は、フェリペ2世をいただく旧教国スペインが握っていた。イギリスはこれに敢然と立ち向かうような行動をとる。新大陸から持ち出した貴金属などを積んだ船を、海賊ドレーク等が襲うのを黙認した。またオランダの独立を影ながら助けたなどである。
フェリペ2世は、イギリスをいつかたたこう、と画策し、スコットランド女王メリー・スチュアートと連絡を取るのである。しかしエリザベス女王側のウオーシンガム郷を中心とする秘密警察が黙っているわけもなくスパイを次々に摘発してゆく。最後にはメリー・スチュアートを、女王殺害の企てがあったとして捉え、最初に述べた処刑を行う。

これを機にスペインはいよいよ無敵艦隊をイギリスに差し向ける。イギリスは、圧倒的に劣勢である、ここで負ければ私は、スペインの牢で一生を終えることになるかも知れぬ、と女王は苦悩し、取り乱す。しかしローリー郷の勇気等に支えられ、敢然と立ち向かう決心をする。預言者が「嵐にあうと必要以上に恐れる人物とそれを利用する人物がいる。」との言葉にヒントをえたようだ。上杉謙信張りで白い甲冑に身を固め、全軍の前に現れ、アジるところはなかなか迫力がある。当初劣勢に陥るが、風上にたったところで火をかけた無人船を繋留中のスペイン船団に送り込んで逆転、無敵艦隊を壊滅させる。これを機にイギリスは、まさにザ・ゴールデン・エージを迎え、逆にスペインは凋落して行く。

この活劇に加え、ケイト・ブランシェットは一方でローリー郷にひたむきな愛をよせ、それが破れると怒り、しかし結局は前作と同様にイギリスと結婚すると決心するなどまさに七変化の大活躍である。ストーリー展開が明快であるし、テンポもよくそれでいて品もある歴史活劇、是非一見をお勧めする。

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