19日、4時過ぎ、イージス艦「あたご」が、房総半島沖でまぐろはえ縄漁船「清徳丸」に衝突した。どうやら前を横切ろうとした漁船の腹にほぼ直角にぶつかったらしい。漁船は真っ二つに裂けて沈没、操舵室がふっとび、運転していた二人の親子の行方は防衛省、地元漁協の必死の捜索にもかかわらず見つかっていない。
この事件を私はなんとなく2001年におきた「えひめ丸事件」を思い出しながら聞いていた。もっとも「えひめ丸」事件は一方的に潜水艦が悪く、似ている事件なら1988年の「なだしお事件」らしいから、興味のある人は調べたらいい。
今度の事件は、防衛省側の説明では漁船に気づいたのが12分前、そのまま自動操縦運転を続けていたが、1分前に接近していることを知り、あわてて回避行動をとったがぶつかってしまった、と言うことのようだ。航行ではこのような場合、右にむけて回避行動をとるべきだ、それを怠って直進したのはけしからん、ということで、イージス艦の航行に問題があったのではないか、との議論が目立つ。
またそもそもあのいつも混雑する場所を自動操縦で運行していること自体がおかしい、自動操縦はコンピュータに入力した進路を維持しながら航行するため、迅速な方向転換が必要な場面には不向きで、船の多い場所での航行には適していない、との見方もあった。国会で自動操縦不可論は石破大臣も認めた。このような議論の行く末は今後の展開を待つより仕方がない。
しかし亡くなったと思われる漁船員親子には心から同情するけれども、何か事件の状況を机上で考えただけで本質をついていないような気がする。
イージス艦は7000トンクラスの大型船舶である。対する漁船はごく小さい。二船の大きさ、あたったときの強さの関係を考えれば、陸上交通で言えばダンプと歩行者くらいの差になるのではないか。ダンプの運転手はどう考えがちだろうか。大きいからぶつかっても壊れるのは向こうくらいの気持ちでつい油断した気持ちにならないだろうか。これを裏付けるように、付近の漁船からは「ただまっすぐ進んでいるように見えた。」と証言し、別の漁船は「大型船はなかなか回避行動をとってくれない。衝突の危険を感じて、仕方なく自分は進路を買えて回避した。」と証言して、GPSにうつった自分の航跡を示している。
一方清徳丸の推定される航跡を見ると、直前で急回転し、護衛艦の前を横切ろうとした様子が窺える。しかしダンプが向こうから走ってくるときに、仮に青信号であっても歩行者なら立ち止まるだろう。とにかく相手が大きいのである。接触でもされれば死ぬのはこちら、とわかっているから・・・・。それを回避するより前を横切る危険を犯した・・・・。そこが分からない。その結果海では非常に稀な腹から衝突になってしまった!車だって腹からぶつかられる事故等そうあるものではない!
これは全く想像。午前4時というとあたりは暗い。しかもこちらは護衛艦に比べずっと低い位置に存在している。そのために護衛艦との距離を見誤った。とっさに前を突き抜けられる、と判断した・・・・。
イージス艦の見張りの責任が追及されているが、それなら漁船の見張りはどうなっていたのだろうか。すっかり安心しきって運行していて、油断があったのではないか。法や規則がどうであろうと、日ごろから安全運航を軽視していたのではないか。
イージス艦には向こうがよけてくれるだろう、と言う認識の甘さがあったことは事実だろう。それが不十分な見張りや伝達のミスに繋がっている。しかし現場海域にはイージス艦も、大型商船もタンカーも通る。それらの船がすべて規則を守ってくれるとは限らない。小型船の安全航行周知など再度検討する必要がありはしないか。
最後にこの事件の責任をとって防衛大臣は辞職すべきだ、というような議論は全く的をはずれている。事件を政争の具としても何の意味もない。大事なのは不幸な事件の原因追及とこれからの対策の確立である。
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