65 クローン人間とロボット…・技術に期待する

T「クローン人間」(5月6日 晴れ)

技術の進歩は長足で、数年前まで夢物語であったことの多くが、今では現実になろうとしている。しっかりマークしておかないと、年よりは時代遅れになってしまう。クローン人間という言葉も、映画のタイトルになるなど、すっかり人口に膾炙している。インターネットで断片知識を寄せ集め、整理しておくことにした。
1996年、英国・エデインバラ近郊ロスリン研究所は、成長した羊から取り出した細胞を使って、元の羊とまったく同一の、クローン羊を作ることに成功した。その羊はドーリーと名づけられ、最近、左後ろ足に老化による関節炎を患っていることが明らかになったが、実験はおおむね順調であった、といえよう。
生物学におけるクローンという言葉の定義は
「一個の生物から無生物的に増殖した生物の一群。また遺伝子組成が完全に等しい遺伝子・細胞または生物の集団。」
ここで重要なのは「無生物学的に増殖した」という点にあり、オスとメス区別ある生物がひとたび受精してしまえば、その時点で両親の遺伝子が混ざってしまい、遺伝子自体が変化するから、両親と同じクローンは生まれない。つまり、いわゆる試験管ベビーはクローンにははいらない。ドーリーの場合、成長した羊の乳せんから取り出した細胞からDNA(遺伝子の本体)が入った核を取り出して使ったという。
この技術が発展し、現在ではクローン人間が技術的には作れるようになった。
米国とイタリアのある医師の発表によると、不妊カップルの男性の体細胞の核を使って胚を作り、相手の女性の子宮に戻し、クローン人間を作る研究が進められており、すでにクローン人間妊娠に成功している。平成14年4月5日現在8週目に達し、史上初のクローン人間が誕生するのは時間の問題だそうだ。
クローン人間が、もとの「親」と、その容貌、性格、知能、才能などの点で100%一致するか、という問いにはNOである。育つ環境によって違ってくるからである。ある神経科医師はつぎのような例で説明している。
「モーツアルトがパプアニューギニアの部族として生まれていたら、決して交響楽など書かなかったろう。」
IQ、特殊認知子能、学業成績、創造性がどの程度遺伝によるか検討したデータもある。大体30−40%のようである。つまり親の責任はこのくらい?
クローンがなぜ必要か、というと、まず臓器移植である。
現在行われている移植は、臓器が正常に機能したとしても移植をうけた人間にとって、その臓器は、あくまで異物である。当然免疫系という生物防御機構が働いて異物を除去しようとする。一般にはこれを防ぐために免疫抑制剤を投与する。ところがこれを持続的に行うと、生体を無防備にしてしまうから、他の細菌やウイルスの攻撃にさらされるようになって、結局実験は失敗に終わってしまう。
そこでもし自分と同じ遺伝子をもつクローン人間から臓器移植を受けられたら、免疫問題を考慮することなく完全な健康人に戻れるのである。
ほかに自分と同じ子孫を残したい、あるいは優秀なクローン人間を作ってそれを利用したいなどという希望にも応えることができよう。子孫作りの試みは先述のとおりで、もうすでに始まっている。
クローン人間作りに対する反対理由は大体つぎのようなものだ。
一つは出来上がったクローン人間の人格の問題である。人間を「臓器の提供」としかみない考えが許されるのだろうか、という問いかけである。
1982年に日本公開された「ブレードランナー」という映画がこの問題の答えのヒントを与えている。生まれながらにして4年間で死ぬようにプログラムされている人造人間(レプリカント)たちが、何とか自分たちの寿命を延ばそうと戦い続ける。レプリカントのボスが製造元に交渉に行くところが圧巻である。
さらに「優秀な人間を作る」という考えは、ヒトラーのたとえば「アーリア人が優秀だから世界を支配するべきだ」というような世界観につながるともいえる。このように世界的には「人間を作るということは、神への冒涜である。」という考えが主流のようだ。
ある知人の女性が言っていた。
「でも面白いわ。心臓か何かが弱かったとして、ある母親が40のときにクローン娘を作ったとする。それが20年経つ。さて心臓をほしいと母親が娘に言う。するとクローン娘が「お母さんが生きているより、私が生きているほうがこの世のためになると思わない?お母さん、変わりに死んで頂戴よ。」」
うん?・・・・・・確かに大変だ!
クローン人間がいけないとするなら、その効用をクローン人間を作ることなしに得られないだろうか。
臓器移植について、パーツだけをクローン製造するという方法がある。
ブタの臓器を人体に入れた場合、わずか数分で超急性拒絶反応が起こる。過去に数例あるがみな失敗している。
そこで拒絶反応を抑える人間の遺伝子を持つ子ブタを作る研究が進められている。また拒絶反応はブタのもつある種のたんぱく質を標的としておきるのだが、このたんぱく質をもたないブタを作る研究が進められている。また免疫反応メカニズムを解明し、これを利用した拒絶反応を抑える方法も研究されている。
子孫を残す、という機能についてはたとえば長寿命化は一つの方策かもしれない。また「バイアグラ」のようなものをさらに開発して歳をとっても子孫を作れるようにすることも考えられる。・・・ところで、女性版バイアグラというのは出来ないのかな?
しかし、パーツのほとんどすべてを変えてまで人間を生かしておく必要があるのか、神の摂理に従って死なせたほうがいい、それから死んだ後のことなどどうでもいい、子孫作りなど関係ない、せいぜいバイアグラの範囲でおさえたい、という考えのほうが、私には正常に見える。
確かにクローン技術というのは、人類の未来を変えかねない重要な技術である。
わが国では「人に関するクローン技術等の規制に関する法律」が制定され、懲役刑も含めた罰則が適用されることになったが、技術そのものの研究を阻害するものではない。

U「桜子」(4月30日 晴れ)
私が桜子と一緒になってもう10年になる。
暖かい朝、私が起きると桜子はもうとっくに起きていて、浅黄色の紡ぎの和服に着替え、食堂でくつろいでいる。整ったすこし小さめの顔が、おかっぱ頭とよくあっている。おとなしやかだが、いたずらっぽい目が生き生きとしている。
「お目覚めですか。トーストでよろしいですか。卵はスクランブルにしますか。目玉にしますか。コーヒーになさいますか。それとも紅茶?」
「今日は和食がいい。昨日のご飯の残りがあるだろう。あれを温めて、後は味噌汁と鯵の干物と半熟卵と・・・。」
「かしこまりました。」
新聞はすでに机の上に運ばれている。私はゆっくり目を通し、テレビのスイッチを入れる。やがて桜子の手作りの朝食が運ばれてくる。うまい!
「夜中に公園に行かれたこと覚えています?」
「いや。そんなことをしたかな。」
「気がついたからよかったけれど注意してくださいね。」
「はい。」
私はどうやら最近夜中に徘徊するようになったらしい。困ったことだ。
「今日はどうなさいます?」
「朝のうち本でも読んで過ごすさ。午後は小説家のK子さんと約束している。」
「あら、あの美人の誉れ高いK子さん?妬けること!それで私は何をすればよろしいのかしら。」
「うん、掃除と洗濯、それから庭の草が伸びてきたからむしっておいてくれないかな。ナマゴミ収集の日だからだしておいて・・・。」
本当に桜子は働き者で役に立つ。実を言うとその上力も強い。
2年ほど前、夜中にふと気がつくと茶の間に見知らぬ男が入っていた。「おい!」と声をかけたが、こちらは肝がちじみあがった。振り向いた男が包丁を持っていたからだ。
すると台所から出てきた桜子が、私を押しのけて男の前に進み出て、いきなり包丁を持っている男の手をねじり上げた。
「あなたね、この辺を荒らしまわっている泥棒は・・・。」
泥棒氏は40くらいで、体も大きく強そうなのだが、150センチもない桜子に押さえつけられ手も足もでない。桜子は私の持ってきた紐で泥棒氏を簡単に縛り上げ、警察に突き出してしまった。
桜子はその上頭がよく、経済的でもある。
いつかヨーロッパ旅行に桜子を連れて行ったが、桜子の航空券を買う必要はなかった。チッキにして送ったからだ。
パリでは桜子は得意のフランス語を駆使し、私を楽しませてくれた。レストランの予約も鉄道の切符購入も宿探しもついでに荷物運びもすべて桜子がやった。
今日は、K子が夜仕事があるとかで、私は早めに帰った。桜子は玄関に三つ指をついて「お帰りなさいませ。」と頭をさげた。庭はすっかりきれいになっていた。食卓には会席料理風の夕食。色もあでやかである。酒も入って、私はほろ酔い加減になった。
風呂から出てきた桜子は、浴衣に変えており、ひどく色っぽい。私は桜子を抱き寄せ、浴衣の中に手を滑り込ませる。桜子はもうあえいでいる。いつの間にか浴衣がはだける。丸い形のいい乳房があらわになる。私は手をゆっくり下のほうに這わせる。浴衣が体から完全に落ちる。白いなめらかな肌が湯上りでほんのり色づいている。
「ベッドに行きましょう。」
私は桜子を抱き上げ、ゆっくりと寝室のベッドに運ぶ。桜子の体は驚くほど軽い。桜子はされるままになっている。
「電気を消して!」
桜子がつぶやく。私は桜子の上に倒れこんでゆく。若草のあたりは、もうしとどにぬれている。それをかきわけ、挿入!そのとき急に意識が遠くなるのを感じた。
気がついたとき私は病院のベッドの上にいた。桜子が私を覗き込んでいる。
「お目覚めですか。」
「ああ、おれは一体どうしたのだ?」
「私の体の上で倒れられて・・・・。」
桜子は私の額を優しくなでてくれる。私は再び意識が混濁してきた。すると、なくなった妻のことが思い出された。彼女と過ごした楽しかった日々が思い出されてきた。
「少しそのままお待ちになってくださいね。」
桜子がそんな風に言って部屋からでていった。戻ってきたとき、桜子の顔が、亡くなった妻のそれと入れ替わっていた。背が少し小さく丸みを帯び、ピンク色のミニスカートをはき、結婚したころのなくなった妻の体になっていた。意識が再び混濁する。
「あなた、あなた・・・・。」
遠くで桜子だか亡くなった妻だかの声が聞こえる。私はもう死ぬのだ、と自覚する。
「桜子、桜子・・・・・本当にお前はいいロボットだった。買い物だったなあ!」

ソニーさん、ホンダさん、桜子みたいなロボットを今後もどんどん売ってください。沢山売れますよ。儲かりますよ!

これを読んだ女性友だちの意見
「何よ、男の身勝手ばっかり書いて!ソニーやホンダが、女性のロボットだけ発売する訳ないじゃないの。男性の同じようなロボットだって発売するに決まってるわ。」
「そしたら、私、ケチだからバーゲンで3台買ってきて、TPOに応じて使いかえるわ。」
「でも男性のロボットなんてすてき。ロボットだったら精力衰えないんでしょう?」
むむむむっ!