658「末期の品格・・・鳴虫山登山余話」(5月10日(土)晴れ)

昨日は日光の鳴虫山=1103mに、高等学校同期12人で行ってきた。格別高くはないが、下りがきつい山であった。まだ足が少々痛い。
レポートを書く役目をおおせつかって書き上げ、幹事に送ったばかりだ。自由に書いたつもりだが、あまり細かいこと、品のないこと、意気地のないこと、会の尊厳を損なうようなことは書けぬ。簡単に言うとボンネが書けぬ。ところでこれは裏のホンネのレポート。

今日のコースは実は中高年に人気がある、と幹事が話していた。急なところもあるが、距離が短く、途中からの展望がよく。躑躅などきれいな花が咲き、緑が多く、草花も変わったものが多い。しかし誰かが「我々は中高年じゃなくて高老年だなあ」と揶揄かった。我々はもうすぐみな67歳になる。もう年齢相応に対処することを考えなければならんのかもしれない。

一行下山して、温泉に行き乾杯が始まる。
「皆さん、このような旅行で事故が起こった場合、どうしたらよいでしょう。生命を落とした場合はどうでしょう。会として何かすべきですか。」
これは自己責任である、の一言でけりがついた。死ぬならかってに死ね!それも天命!
「しかし動けなくなって、ヘリコプターを呼ばねばならぬ場合はどうでしょう。」
これは結論は出なかったが、呼ぶこと自体には仲間としてみな協力するだろう。
「みんな保険に入っておくのはどうでしょう。一人300円か500円と安いものです。」
幹事がそういうことを紹介してくれるのは、大変ありがたいことだ、となった。それでも入りたくない者が、そのような状態になれば、費用は全部彼に請求する・・・・・。
幹事のA君などは山登りのベテランだからは山の恐怖を十分理解していたのだろう。議論が終えると、みな怪我もなく下山し安心したのか、居眠りを始めた。ご苦労様!
今日無事に楽しめたのは天候によるところも大きいのかもしれない。誰かが「幹事が、地元にまで天候を問い合わせて、今日山に登ることを決断したのは大した決断だ。」と誉めていた。これがもし途中で雨が降ったら、あの下り道は川になっていたに違いない。すでに雨によってむき出しになった階段の土止めが、往来の邪魔になっていたではないか。

会話で「日本の品格」以来、品格本が何十と出版された」という話になった。「男の品格」「女の品格」「夫婦の品格」「子供の品格」、中には「女体の品格」・・・読んでみたい?
「我々も一つ書こうではないか。「老人の品格」。みんなで書けばそれぞれ考えがあって面白いではないか。」ひどいことを言うやつがいた。「「末期(まつご)の品格」というのはどうだ?」
品格という言葉を調べてみた。品という字は口三つ並べて、いろいろの名をあらわしたもの。一説に口ではなく四角い形三つでいろいろなものをあらわした会意文字。
品に上下があるのは、昔中国で官位の等級に品を使ったかららしい。一品から九品まであり、おのおの上と下、または正と従に分ける。九品官人法(三国から隋初まで行われた官吏登用法)
品格は、そのものから感じられる厳かさ。品の意味が一般化してできた言葉なのだろう。

あの日光山を開山した勝道上人は、807年の旱魃に際し、日光山(つまりあの男体山)で祈雨を修法し、その功により伝灯法師位を授けられた。このとき72歳。
上人のことは、想像もつかないが、自分のなかで「老人の品格」なるものを少し考える。根本的には「身の程を知る」ではないか、と思う。終わりのある人生、いつかは死ぬ、墓場まで金は持ってゆけぬ、子達に迷惑はかけたくない、GNP(元気長生きぽっくり)を実践することは「末期の品格」を保つために一番大切なことではないのか。

帰りの列車の中。時々足がつり、ツムラの68に厄介になる女性会員の話。
「本当に今日はついてゆけるかどうか心配だった。しかし行けば楽しい。山の空気を吸うと、まったく開放される気分になる。普段から、できるだけ歩くようにするなど準備をしてきた。それでも膝がだんだん上がらなくなる。今日も下り坂、木の根が多く、何度も躓きそうになった。ひっくり返ったりしたら、あの山の中、どうなったかわからない。しかし下を見て慎重に歩を進めたのがよかった。前と後ろに幹事がついていたから、それに遅れないように歩いたこともよかったのかもしれない。」

みんな同感、という風だった。次は7月に那須に登るという。耳に挟んだだけだからよくわからぬが、茶臼岳、朝日岳に登り、三斗小屋あたりで一泊するらしい。幹事はロープウエイを使うべきか否か迷っているようだった。必要なら使うべし、と思う。高老年が品格をもって山歩きをするために、金と時間は惜しんではならぬ。

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