京都文化博物館(京都市中京区三条高倉)で、6月8日まで(月曜休)で「源氏物語千年紀展」というのが開かれているのだそうだ。
それにちなんでか、著者がわからぬが日経新聞文芸欄に「源氏物語千年の波紋」というシリーズエッセイが6回にわたって掲載された。以下はその抜書き
「源氏物語は平安貴族の文化の精花といわれ・・・・1000年の歴史をさかのぼれば源氏物語を読み楽しんだのは貴族だけではない・・・・武家をはじめ時代の政治権力が源氏物語と深い関係を結んできた。」
紫式部の執筆を後押ししたのが、時の権力者藤原道長であることは知られている。「式部を自分の娘である中宮彰子の女房としてスカウトしたのは、一条天皇が漢詩、和歌に通じ文芸を好んだためとされる。道長にとっては、外戚政治を強固にするための手段でもあった。」
「足利義満は、京都・北山に壮大な御殿と庭園を建設した記念に、後小松天皇の盛大な行幸を挙行した。そのハイライトが、空前の規模で行われた源氏物語ゆかりの青海波の舞いであった」
「織田信長は、上洛をした1574年、上杉謙信に都の文化を誇示するかのように狩野永徳筆の源氏物語屏風と洛中洛外図屏風を贈っている。」
徳川家康は、飛鳥井家から源氏物語の講義を受け秘伝を授かり、大阪城落城後も冷泉家や中院家に源氏物語の注や購読を頼んでいる。豊臣対徳川の対立の中で「公家の王朝文化を徳川が継承し、豊臣に変わって庇護・掌握することを朝廷や貴族に、大名らに示す身振りだった。」・・・・なにやら信長・秀吉の茶の湯利用を思わせる。(この辺三田村雅子フェリス女学院大学教授)
江戸時代末に、柳亭種彦の「偐紫田舎源氏」。これは足利将軍の落とし子「光氏」を主人公とする源氏物語翻案作品。爆発的なベストセラーとなり38編刊行された。この登場人物の髷の結い方や衣装の柄、小道具が流行のさきがけになるなどして、源氏物語は民衆に広く浸透した。必須の教養書となり、吉原の遊郭の多くが源氏物語にちなむ名をつけた。幕末には登場人物を援用した歌舞伎や錦絵なども出回った。
「明治15年源氏物語の初の英訳本が英国で出版された。「Genji Monogatari」ただ全訳ではない上、訳者が末松謙澄なる文学界では無名の人物であったため重視されなかった。」
しかし調査の結果、末松謙澄は伊藤博文の娘婿で、出版費用の一部が伊藤博文から出た可能性が高い。さらに序文を読むと徳川慶喜の弟「徳川昭武」も後援していたらしい。
「当時欧米には、日本の社会レベルは欧州の中世どまり、文化は中国の亜流、封建的で女性の地位が低い・・・・といった程度の認識しかなかった。それを改め、列強の仲間入りをするために用いられた。」そういえばこの時代が鹿鳴館時代であったことを思い出す。
「ただし「本家」である文学の担い手たちは、この時代意外なほど源氏物語に冷淡だった。尾崎紅葉や樋口一葉ら一部作家を除けば、近代文学の創造を志す人々は「源氏」を古い時代の遺物と見がちだ・・・・大正5年、正宗白鳥は「源氏のどのページでも開けて読んで、自己の芸術慾を少しでも刺激されるであろうか」とこきおろし・・・・「文学の世界で源氏が復権するのは1930年代以降」・・・・近代文学の行き詰まりに加え、英国人アーサー・ウエイリーによる「英訳本」が逆輸入された影響が大きい。」
時代の流れは源氏物語にも大きく影響したようだ。
「昭和8年、東京で上演予定の「源氏物語」が突如警視庁から中止命令を下した。宮中の生活を描いている、登場人物が皇族である、というのが主な理由だ。・・・・単に禁中を舞台としたから「危険」なのではない。源氏物語には「皇統の乱れ」が描かれている。・・・・国文学者橘純一は昭和13年「源氏物語は大不敬の書である」という論文を書いた。臣下である光源氏が父帝の后と密通した上、その不義の子、冷泉帝が即位する。源氏は太上天皇に準じる準太上天皇にまで昇進する。この三点をあげて「不敬文学」と断じた。」また谷崎潤一郎は、昭和14年に源氏物語現代訳を出したが、検閲によって大幅に削られたそうだ。
現在「ケータイ小説」の「あるサイト」で6人の作家が、源氏物語を翻案した小説を連載しているそうだ。紫の上など6人の女君を現代の女性に置き換え、今風の恋愛亜小説が進む。出だしは「いつごろだったろう・・・・たくさんのキレイな人たちが、帝と付き合っていたのに、その中でも一番愛されまくった女の子がいた・・・それがアタシ・・・「桐壺」」
いやはや、とても私にはついてゆけません。
「今年は「千年紀」にちなんで関連本の刊行が相次ぎ、「源氏」の名を冠した酒や料理も登場、紫式部のロボットまで開発されている。」
千年紀展には時間の関係で行けそうもないが、独居老人の私、可愛い式部や源氏物語登場女性のロボットには興味があるかも・・・・。
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