私は定年までガス会社に勤めていた。
しかし我が家の前にガス管が敷設され、ガスの恩恵にあずかるようになったのが何時であったか覚えていない。小学生の頃か?ガスは工場から高圧で送られ、地域ごとにおかれたガバナーで何度か減圧され、家庭に届くときには低圧になっている。正確には水中圧で200mmくらい。この辺のガスもどこかの工場で作られ、どこかのガバナーで減圧されてきたものだけれど、それがどこなのか、具体的にはよくわからない。長い間に我が家のガスも3600kcalから5000kcal、さらに天然ガス転換を行って11000kcalになったはずだけれども、もう遠い昔のことのように感じられて記憶もあやふやである。
私にとって、都市ガスは空気みたいなものである。そんな私が会社では、未供給区域の都市ガス普及に取り組んでいたから皮肉なもの。都市ガスが普及しない地域の人たちの不便などわかったものではない!
1週間くらい前、我が家の前のガス会社の委託を受けた工事会社の男がガス管を交換する、と言ってきた。どうやら1ブロック北から1ブロック南まで200mくらいらしい。
1日30mか50mずつ工事を行い、さらに一昨日「今日、家の前の工事を行う、ついてはお宅のアパートはオートロックになっているからあけておいてくれないか。」と要請された。
思えばガス管もずいぶん進歩したものである。
鋳物管だったものが鋼管になり、それに腐食防止のために亜鉛鍍金が施されるようになった。所謂白ガス管と呼ばれ、約20年が寿命といわれる。昭和50年頃からプラスチック被覆(PLP)鋼管が使われるようになった。管の表面に腐食の原因である電気回路を形成させないようにポリエチレン樹脂でコーテイングしたものある。会社で一時リサイクル関係のセクションに回されたことがある。そのときに同僚は古くなって堀上げ回収したPLP管のポリエチレン樹脂を回収できないか、と奮戦していた。
しかしそのPLP管も今では退場し、全部ポリエチレン樹脂のPE管が、阪神淡路大震災以降急速に使われるようになった。可とう性(曲げや引っ張りに強いこと)が高く、地震などにより地盤が変化した場合でも破損しにくいことや、敷設の手間が省略されるなどの利点がある。ただ直射日光には弱いため埋設管で使われている。PE管は今では水道にも使われているが、あちらは青色、ガスは黄色だからすぐにわかる。
呼び鈴がなって、外に出るともう工事の準備が整っていた。もう60cmくらいの幅のカッター線に従って道路の掘削を始めている。「10時頃から3時間くらいガスが止まります。」「点火はどうして確認するの。」「あれはガスメータのところでできますから」オートロックを開けて私は「後はよろしく」とスポーツクラブに向かった。
1時頃に戻ると工事がかなり終わっていた。黄色い4インチらしいPE管がもう敷設されている。掘り出したガス管がトラックに積まれている。「供給管は現場あわせで接続したの。」と聞くと「そうだ。」との答え。穴の中を見ると本管と供給管の間を上手につなげている様子がわかる。今回の工事は本管だけのようだ。夕方には仮復旧が終わり、幅60cm、深さ80cmの穴はキレイにふさがれ、アスファルトで覆われていた。そういえば埋め戻す土も問題。掘った土をそのまま使って埋め戻すわけではない。別の土を持ってくるのである。しかも今までの土の処分にも困るから、リサイクルセンターには運んで、再生させる。
私は無精で家の前の掃除を余りしない。側溝の淵に土砂がたまり雨水が流れにくくなっていた。それもキレイに取り去られ、清潔になっていた。なかなか丁寧な工事のようだ。
ガス管は道路に敷設されている管を本支管という。道路から家庭の地境までの部分を供給管という。それから家庭の中のガス管を内管といい、さらにメータまでを灯外内管、それ以降を灯内内管と区別する。工事はすべてガス会社が行うが、金額は原則本支管と供給管はガス会社、内管は家庭の負担となる。そのくせ、もし内管からガスが漏れ、事故でも起ころうものなら、ガス会社が呼び出され、保安責任を追及される羽目になるから苦しい。
実を言うと私の家もガス会社からそろそろ内管の交換をお願いします、と言われているが懐の関係もあって待ってもらっている。そのうち考えなければいけないのだろう。そういえば内管ももちろんPE管である。内管にはロケーションケーブルというのがついているのだそうだ。そのケーブルを頼りに後から管の埋めてある場所をみつけるのだそうだ。
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