666「最高の人生の見つけ方」(6月1日(日)晴れ)

ガールフレンドのAさんに誘われて、映画「最高の人生の見つけ方」(THE BUCKET LIST)を見た。
仕事に人生をささげた大富豪エドワード(ジャック・ニコルスン)は、経営の悪化した病院の買収話の席で「自分の病院は二床一室の原則を崩さず、うまいものを食え、最高の評価を得ている。」と自慢、その後、喀血し倒れてしまう。抜群の記憶力を持つが、家庭の事情で自動車整備工になった黒人のカーター(モーガン・フリーマン)も、元気の様子だが、病院からの検査結果の連絡に愕然とする。二人とも癌、余命はよくて6ヶ月。その二人がエドワードの病院で同室となる。

「他人と一緒はいやだ、個室がいい。」「それはあなたが決めた考え方と違います。」「自分のこととなると考えも変わるさ。」と不満たらたらのエドワード。理想の病院のはずだが、「インゲンのスープがまずい」、「担当の医師はすぐに来てくれない。」とカーター。
ところがこの二人が時間がたつうちに妙に意気投合してしまうから、出会いとは不思議なもの。エドワードが「どうせ死ぬんだ、やりたいことをやろうじゃないか。」二人は「やりたいことリスト」を作成、ただちに実行しようと、病院を飛び出してしまう。世界旅行をしたい、ライオン狩りをしたい、スカイダイビングをしたい、夢の車ムスタング?に乗りたい、最高の女とキスしたい等々。「あなたにお勧めすることは、有能な秘書に全財産を残すよう遺言することです。」としゃあしゃあというその秘書に手配させていよいよ実行・・・。

エドワードは、結婚歴はあるが、性にあっていると今は独身。カーターは、看護婦のカミサンと優秀な子供たちがいる。病院でのカーターの話「天国に行けるかどうか判定するため、二つの質問をされる。あなたは人生を楽しんだか。もう一つは、人生の楽しみを人に与えたか。」この答えらしきものが、最後に家庭と結びついて出てくるが、見てのお楽しみ。

監督はロブ・ロイナー、1947年生まれ、あの「スタンド・バイ・ミー」の監督である。主演二人は37年生まれ、地で行っている感じもし、なかなか役柄にはまっている。御伽噺のようなものだが、そこから何かを考えさせるところが素晴らしい。

人生に目的なんてない、と最近考えるようになった。ただその時々に夢はある。夢は時間と共に少しづつ変わる。人はその夢を追っている間に、色々なルートを通り、歳をとってゆく。よく成功した人がこうすれば君も成功する、なんていうけれどこれは後から談義。

ただ死の直前になって映画のような元気が残っていまい。そこが夢物語に見える。ラジオ体操で一緒でもう80を越えようかというお医者さんが、また一人での海外旅行を企画している。今度はヴェトナムか、ポルトガルに行きたいと言う。「カミサンに相談したら、いけるうちに行っておきなさい、といわれました。」正解、と思った。「それなら、両方行ったらいいじゃないですか。」と言ったら「仕事があります。」といわれた。そんなもの、無視したらいいじゃないですか、といいそうになったけれど失礼と思ってやめた。

ところで映画を見ながら、後6ヶ月の寿命となった二人が考える「人生でやりたいこと」ってこんなものなのか、と疑問に思った。これはきっと脚本家が、机の上で頭をひねって考え出したことではないか。人がやりたいことは何か、という疑問に我々が直面するのは定年前後ではないか。会社で、家庭で、なんとなく感じる目標に向かって頑張ってきた。それが大体終わり、さて自分の自由なことをやっていい、という年代になる。結構元気で、その上貯えもそれなりにある。語られる夢は、そんなときに考える夢のような気がする。あるいはあの主演の二人はスーパースターになり、まだまだ元気、リタイヤ直後の我々なんかより、ずっと若く見える。そういう人が考える夢ではないか。

6ヵ月後に死ぬとなれば、考え方もずいぶん変わってしまうはずだ。しかし、じゃ、君はそういう状況に置かれたら何と考えるのさ、といわれても答えがあるわけではない。そのときにならないとわからないが、なんとなく違うように感じる。
もっとも映画でも小説でも、必ずしも現実を描く必要はないのかもしれない。そのような現実が来たらどうすべきか、と漠然と不安を持っている予備軍に語りかけるものだ。予備軍が共感して見に来てくれないことには話にならない。その意味では正しい脚本か?

帰りにAさんが「後、6ヶ月といわれたら、ああいう風に考えるかもしれない。」というから「私だってもう言われている。後長くて30年だろうって・・・・」すると彼女は「30年も生きるから、お金のことも考えなきゃいけない。」と急に現実的になった。
私は、終わりが来ることがわかっているのだから、やりたいことは、もう考えておいた方がいいのかもしれぬ、と思った。あと6ヶ月といわれてからでは遅すぎる。昼食は少しばかり張り込むことにした。

追記 通信の162に私のやりたい事みたいなものが出ています。

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