670「私の京都ご清遊」(6月20日(金)曇り)

「何でまた京都に・・・・」とガールフレンドのAさんは言う。
何となくこの前「世界一幸せになる法」と言う映画を見て「時間と体力とまだ若干の余裕があるうちに遊んでおこう。」と考え、とりあえずぶらっと日常から離れてみる気になった。
京都は何度か行った。今まで旅に行くと新しいところ出なければ損をするような気がした。しかし自分の長く住んでいるところすら、しばしば新しい事に気がつくのに、数回行ったくらいで分かるわけが無い。ゆけばそれなりに発見があり、楽しいに違いない。旅とは日常とは違う環境に自分をおいて楽しんでみることではないか。

それでもどんな寺をまわるくらいはあらかじめ考えておかねば、と迷っていたところ日本経済新聞に「源氏物語おすすめすスポット」と称し10のスポット。
1位 京都御所 2位 石山寺 3位 野宮神社 4位 平等院 5位 廬山寺 6位 渉成園 7位 大覚寺 8位 宇治川 9位 清涼寺 10位 鞍馬寺
大抵みな一度は行ったことがある。しかしもう一度行けば別の感興もわくに違いない、と考えた。京都御所は無理だが、これにそって行ってみることにしよう。
宿は嵐山にある「らんざん」というところにした。後から考えるとこの選択はなかなか正しかった。桂川に面し、天竜寺の側、全体がゆったりとしており、朝飯がうまかった。

初日に宇治の平等院。平等院は、光源氏のモデルとされる源融の別荘があった場所に立つ。藤原道長が受け継ぎ、頼道が寺院に改めた。源融は、嵯峨天皇の12男、別名河原左大臣。左大臣に登ったが、藤原基経が太政大臣になって権力を握ったため、政治的衝突を恐れて貞観18年(876)頃より自宅に引きこもった。光孝天皇の御世になって基経と融との政治権限分担が明確化されたため、再び政務に参加するようになった。

「これが平等院?別にあるんじゃないの?」一瞬そう思った。私の記憶にある平等院は満々とたたえた水の向うに、翼を広げたように広がる平等院だった。世界遺産だが、ひどく貧弱に見えた。後で聞いたところによると池を小さくしたのだそうだ。有名な定朝の阿弥陀如来は今では別料金を払い、しかも1回50人づつ区切って入れる。上品下生の印を結ばれた丈六の如来は、木製で全体は金色に塗られていて、昔のままで気品がある。4年をかけて修理したそうで、これ以上の劣化をとめる一方、額にある玉も水晶に変えたとか。しかし脇にあった仏様や壁にかかった何枚かの雲中供養菩薩もより払って何か寂しい感じがする。

二日目の朝、天竜寺の庭園を見た後野宮神社をのぞいた。ここは光源氏23歳のときに、30歳の愛人六条の御息所と別れた場所。今はひっそりとしている。

三日目、石山寺に行った。紫式部が源氏物語の構想を練ったところといわれる。折から1000年紀で、客がバスなどでドンドン押し寄せている。参道には透明プラスチックにしろペンキで式部の和歌など書いたものをずらりと並べ、建物の中は源氏物語回廊と称し、貝あわせの貝、田辺聖子の源氏物語解説、彼女の依頼で描かれた岡田画伯のあでやかな絵画、巻物風の解説、はては源氏物語のロボットでも作るのかその展示まである。石段を登ると本堂、後ろの山にさらに登ってゆくと多宝塔など、頂上近くにはご丁寧に紫式部像まである。
京都に出て廬山寺。これは京都御所の裏にある。入口に紫式部とその娘と言われる大弐三位の和歌を掘った石の立派なレリーフがあるがどうも読めぬ。中に入ると白砂のところどころに桔梗がすくすく育っている庭。幾つか紫色の花をつけている。
ついでに平安神宮。ここは平安遷都1000年を記念して明治28年1895年に建てられ、桓武天皇と孝明天皇を祭神とする。社殿は平安京の大内裏の正殿である朝堂院を、8分の5の大きさに縮小して作られたものとか。しかし御所を偲ぶことはできようか。

最後の日に雨の中を清涼寺。仁王門が立派。くぐると脇には法然上人の像。ここは浄土宗知恩院派の古刹。光源氏のモデルであるとの説もある源融の山荘後に、阿弥陀堂を建立、棲霞(せいか)寺としたのが始まりとか。
続いて大覚寺は真言宗大覚寺派の総本山。もともとは嵯峨天皇の離宮であったものを清和天皇のときに大覚寺と改めたものである。大沢池は日本最古の庭池として作られたもの。中国の洞庭湖を模して作られたところから「庭湖」とも呼ばれる。

このほかに2日目には友人と一緒に所謂嵯峨野めぐりをし、保津川で取れたらしい季節の鮎なども賞味してきた。それなりに大変楽しい4日間でまた機会があれば行きたい。しかし世界遺産に指定されるなどして、人がたくさん押し寄せるようになると、風情がなくなり見物も制限されるようになる・・・・・その辺が心配である。

註 ご意見をお待ちしています。
e-mail agatha@bekkoame.ne.jp
home-page http://www.bekkoame.ne.jp/~agatha