「薬害エイズ訴訟」、「アスベスト被災者訴訟」、「被爆者訴訟」、「激甚災害」・・・・・国が裁判で敗れると、マスコミは正義が通った、というような調子で報道する。多くは仕方ない、と思うけれども、しかし考えてみればその賠償は我々の税金から払われる。筋の通らない要求にはそんなものに金を払ういわれはない!と怒鳴りたくなる。
そのようなニュースのひとつに、漁業関係者が、原油が高騰しているから、燃料費を免税にせよと要求してストライキまでするという話。免税にすれば漁業関係者は満足し、与党は票を失わないですむかも知れない。しかしそんなことに我々の懐を痛める理由がどこにあるというのか。安易に対策をします、などと約束しないでほしい。
マグロ漁船が相次いで休業し、刺身マグロに危機が迫っていると訴える。しかしそもそも大西洋、インド洋の沖まで行ってまで魚を取るべきなのか。業界団体の調査では現在燃料費は総コストの43%余りを占めるという。半分近くは燃料費!つまり半分は魚そのものを食うのではなく石油を食っているようなものだ。そういえばその頂点たるトロには油の多いこと!そんなエネルギーの無駄使いがほめられた行為といえるのか!
極端になると日本の食卓から魚が消えるかも知れぬ、などと騒ぐ。消えるものか。
近海ものの魚がいくらもある。高いものを売りたいのか魚屋だってマグロばかり並べている。値段の安い小さい鯵や鯖は、隅の方で小さくなっている。しかしマグロがなくなればそちらに目が行くに違いない。それで売れないというのなら、そもそも魚が肉などに比べて日本人の好みに合わなくなってきているのだ。そんなことは仕方がないではないか。
刺身が消える、という言い方も嘘。刺身はマグロと誰がきめた。けちん坊の我が家の食卓に乗る刺身はイナダであり、鯵であり、烏賊であり・・・・・。
またマグロは世界的に資源が減っているようだ。そのために高級魚のクロマグロとミナミマグロは、国際機関が漁獲枠の削減に乗り出している。今回影響を受けそうなのはメバチ、ビンナガ、キハダといったスーパーや回転寿司で最も流通し、食されている種類だという。しかしそれらだって世界的に見れば資源は減少していると報じられている。
ある漁業関係者は「ネギトロに、マンボウに似たアカマンボウの赤身を使う悪質な店も出るだろう。少量のラードを加えればネギトロそっくり。またマグロで利益を出せない分を他の魚で稼ごうと、巨大淡水魚のナイルパーチをスズキ、ティラピアを鯛、アメリカナマズをヒラメとして盛り合わせにすれば誰にも見分けがつかない」という。しかし客が満足しているならそれでいいではないか。漁獲の少なくなった魚を他の魚でごまかすやり方は、鯛でも柳葉魚でもしょっちゅうやってきたではないか。鮮魚店は常習犯だ!
またマグロの養殖技術も色々研究されているらしい。この前のTVの放送では鯖の腹を使ってマグロをつくるような研究もされていた。まだ難しいのかもしれないが、いつの間にか鯛も鱒も鮎も養殖でいくらも取れるようになった。蟹やいくらまで人工でできるようになった。人間の能力を侮ってはいけない。大西洋、インド洋まで行かなくても代替手段はある。
燃料費の高騰でマグロの値段が上がり、需要が減って困るのは、マグロ漁業の関係者だけだ。廃業に追い込まれるものも出るだろう。しかしそれは自由市場の習いではないのか。
フランスやスペインなどでは、料油の高騰やEUの漁獲規制に抗議する示威行動が広がっている。フランス政府は燃料費の補填措置を約束したが、漁師側は納得せず、抗議行動が続いている。地元スーパーに押しかけ、魚の販売を中止するよう要請したり、輸入漁の運送をやめさせるよう道路の封鎖を行うことまで行われているという。もうこうなるとエゴむき出し、フランスでは知らないが、日本で支持を得られないことだけは確実だ。
燃料代高騰といえば沿岸イカ釣漁業者らの全国組織「全国いか釣漁業協議会」も18日と19日一斉休業を行い、窮状を訴えた。しかし集魚灯を昼のように照らし、烏賊をおびき寄せて漁獲するやり方は、見方によってはまさに乱獲である。とてもほめられたこととはいえない。そもそも烏賊の場合、消費者が食わなくなったことの方が問題なのではないか。烏賊はマグロと違って調理しなければならず、しかもマグロほど珍味?というわけではない。ついつい鶏肉などに需要がシフトするのは当然のことのように思う。
こんなことで原油高に税金をまけるというのなら、運輸業界も要求するだろう。船舶業界も要求するだろう。我々だって要求したい。「近頃の物価値上げは異常だ!激甚災害に指定しろ!」みんな値上げで大変な「被害」を被っている点では同じではないか!
註 ご意見をお待ちしています。
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読者から次のようなメールをいただきました。
(A氏)久しぶりに感想を送ります。
「漁業関係者に対する燃料費補填(直接補助)」には私も反対です。
原油価格の高騰は需給バランスに依るものか、投機の影響が大きいのかはたまたその複合か。
私は複合的なものではないかと思っています(このまま進めば、平成の「米騒動」になるのではないかと危惧します、本当に打ちこわしにならなければ良いと思っています)
今回の洞爺湖サミットで具体的な対策が打ち出されなかったことには失望しました。(各国の利害、思惑もあると思いますが原油を投機商品にしないようなシステムを作るべきではないでしょうか)それにつけてもアメリカの対応には疑問が残りますね。
私は若いころ日中石油に出向して、石油ビジネスに関係しましたが、当時は油田開発は油価と連動していて、油価が上がれば掘削条件が厳しいところでも開発が進み、油価が下がれば開発が縮小するというのが基本でした。昨今の産油国側の資源保護の動きと発展途上国の需要の増大、それと投機筋の暗躍でかってない不透明な状況になっているとみています、
(19世紀、20世紀前半でしたら、産油国を武力で制圧する事態が起きたかももしれませんね)
さて、本題の漁業ですが、燃料をたくさん使っての漁業はこれからは淘汰される運命にあるのではないかと思います。
高い燃料を使っても市場で利益を確保できるのであれば格別(そもそも、今のような漁業形態になったのは安い燃料価格が前提だったのではないでしょうか、省エネ、環境対策を考えると再考する時期かも知れません、養殖漁業なども今後の一つの方策かもしれません)、災害対策みたいな緊急対策は今後に悪しき例を残すのではないでしょうか。
原油高騰を激甚災害に認めるとすれば、阿笠さんが言われるように、製造業、運送業をはじめ国民すべてがその対象になります。声を上げたところだけに対症療法的な補助金を出すことは如何なものでしょうか。ここは燃料費を補助して従来の漁業を守るのではなく、漁業の転換を図るべきだと思います。(とは言っても現実に廃業、転換を図る漁業者にはセフティネットを用意しなければならないと思います)
省エネ型の漁業、エンジンに対する補助金なら賛成です。
(B氏)族議員というのは漁業にはどのくらいいるのでしょうか。
建設とか道路はそういう議員がいるので、なかなか正しい方向にむかえませんね。漁業は偶々少ないのではないですか。
日水や太洋漁業も会社の体質として我が国で一匹も魚が取れなくても経営は持つようになっているそうですね。
それはそれとして訴訟なんかでたたかれているのもそういう族議員のあまり居ない分野みたいですね。
むしろわれわれ納税者の一番の大敵というか、垂れ流しの元凶はそういう族議員のいる分野ではないでしょうか。大騒ぎしているタクシーチケットなんか、要らないダムにくらべれば罪はちいさい。こんなことでマスコミがエネルギーを使うのは大局が見えていないからだとおもいます。
この前の戦争のときに開戦すると食料の問題も起きるという経済企画院の見解のに対して日本は周囲が海だから魚を取ればいいのだと軍部が言ったのを思い出します。
長期的に見て漁業をどう扱うかは何がベストかがわかりませんが、農業と同じ程度の扱いは必要かと思います。