680「自己主張と共感」(7月22日(火)(晴れ))

「山は登りがあるから余り行きたくないわ。海は肌が焼けるといや、やめにしてね。近場でお金がかからなくて涼しいところはないかしら。公会堂にあるカフェで本を読んですごすですって。お勉強ばかりじゃないでしょう?」
ガールフレンドのAさんの条件を満たすところを色々考えて、ブリジストン美術館、新宿歴史博物館を考えた。ところが昨日が旗日だったからだろうか、どちらも休みなのである。すると彼女から「水族館はどうかしら。」と珍しく提案。「そうおっしゃるなら。」と、急遽葛西水族館に行くことになった。

厚さ26センチもあるアクリル製の水槽の中でマグロやかつおなど大きな魚が泳いでいる。「あれはいつも本能で泳ぎ続けるようになっているのかしら・・・・・。」考えてみれば不思議だ。1日泳いでいればいくら頭が悪くたって、水槽の世界の限界は分かりそうなものだ。「魚はこちらを見ているのかしら。」アクリル板をたたいてみるが反応なし。
外に出るとむっと来る熱気。「ペンギンはこの暑さに平気なのかしら。」知らない。しかし暑くは感じているのか、皆水の中に入っている。あの首はよく曲がるものだ。鴨などのように180度くるりと後ろに首をむけ背中をつっつくし、人間にも関心があるのか首を上にむけ、大口をあけ、ぐわっ、ぐわっとなく。水中から見てみると妊婦みたいに腹を膨らませている。「ね、水族館は近くて安くて涼しいでしょう。」彼女は自分の主張が正しかった、とご機嫌。

観覧車には、そばに行くまでに「冷えたビールが手に入るなら乗ろう」と考えた。そのビールは売っていたけれども、なんとなく彼女の気が進まぬ様子をみてやめにした。20分ばかり空中の密室で彼女と二人きりになる喜びと期待は、暑さとよる年波に打ち負かされた・・・というのは文学的表現といえるかどうか・・・・。

帰りに東京駅に出た。この前、娘婿のお父さんが「八重洲口もずいぶん変わりましたよ。」と言っていたので、一度見てみたいと思ったからだ。変わった、変わった!東京駅周辺にはグランノースタワー、サウスタワーがたち、大丸も新店舗に移動した。懐かしくて昔通っていた日本橋のTGビル辺りに行ってみた。TGビルは確か昭和29年にできたことはびっくりするくらいモダンなもので、竣工式には宮様も見えた、などと聞いた。しかし今ではもう古臭いさえないビルに見える。そのむこう東急の跡地に、曲線的な超モダンな高層ビル。近づいてみるとCOEDOとあった。複合ビルのようだがよくはわからない。私は大満足だったが、彼女は「こちらにビールのライオンがあると言うから来たのよ。ないじゃない。」しかたなく昔いったことのあるレストランで乾杯。夜は、一緒にあのCOEDOビルの地下のパン屋で買ったパン等で食事をした。彼女は楽しそうではあったが、ふと時々ため息をついていることに気がついた。

帰り道に彼女が言った。「人類の創生について、聖書の解釈には二つの考えがあるのよ。最初、神は人間を作られたが、あるとき男と女を同時に作り出したとする説、もう一つは最初に男を作り、それでは淋しいだろうとその肋骨から女を作りだしたという説があるのよ。」少々疲れていた私は、いい加減な答えをする。「そんなの、どっちだっていいじゃないか。2000年以上前の人間が考えたことだ。」すると彼女はオカンムリなのである。「良くはないわよ。後者は男が自分たちに都合のいい社会を守るために作り上げた幻想なのよ。あなたとはもうこの問題は話さない。」
彼女との意見の相違は2,3日前にもあった。彼女によると「世界の水問題が深刻である。日本は金にものを言わせて旱魃国の食糧などの輸入を通じて横取りしている。そのうち水戦争が起こる。」というから、私は「そもそも水と石油では大きく違う。後者は有限でなくなるが、前者は地球規模で見れば絶対量は変わることなくリサイクルしている。水がある場所に少ないのは、気候もあるがインフラの問題が大きい。食糧の輸入は、金を払っており当然のことだ。」などと、ぎゃあぎゃあ言ったら「いいわよ、私はバカだから・・・・」と怒った。

帰宅後、書斎でメールをあけると同期のB君からメールが入っていた。先日鳩山首相を死神と呼んだ新聞記事をもとに書いたエッセイにコメントをくれた。それを私のホームページに載せていいか、という問いかけに対する答えである。匿名ならかまわないとした上で、「私の考えは、ある意味で不動ですが、同期の仲間との考え方のズレで、いまさら議論したくはありません。」。それを見ながら、なんとなく彼女のため息を考えた。私は自分の意見を少し通しすぎ、彼女が鬱陶しく感じていたのではないか。

私も彼女も、これでなかなか自分の意見が強く、押し通さないと気が済まぬところがある。そのために時々ぶつかる。自分の意見を通すことも一方で大事だけれども、無理をしないことも大切・・・・・・。まだまだ修行がたりぬ。B君のいうとおりか知れぬ。自己主張の強い人ほど、他人に共感してもらいたいと願っているのかもしれない・・・・・。

註 ご意見をお待ちしています。
e-mail agatha@bekkoame.ne.jp
home-page http://www.bekkoame.ne.jp/~agatha