新聞記事は、かなり勉強していないと分からないものが多い。ここ数日新聞を賑わしているWTO関連記事もその一つだ。自分自身の学習も含めてウエブサイト等でおさらい。
WTOの前身であるガット(関税および貿易に関する一般協定)は、戦後まもない1948年に締結された。成立の背景には、1930年代の世界経済のブロック化が、第二次大戦への一因となったことに対する反省があった。関税その他の貿易障壁を軽減して、貿易上の差別待遇を撤廃し、持続的な経済成長等を目指す多国間協定である。
第5回目あたりから、ガットにおける多角的自由化交渉は「○○ラウンド」と呼ばれるようになった。鉱工業製品・農林水産品の関税引き下げが実現され、また関税以外の貿易関連ルールも整備された。特にウルグアイ・ラウンド(86-94年)はきわめて包括的な内容を有すると同時に、農業が主役に躍り出たことが特徴であった。背景にはECが農業輸入圏から輸出圏に変わる中、米国の農業が苦境に陥ったことが上げあげられる。また関税引き下げの成熟化に伴い非関税障壁が、サービスや知的所有権に関しても議論されるようになった。
ウルグアイラウンドのもう一つの目的は、設置根拠を有する貿易に関する国際機関を設置し、これを通じてガット体制の機能強化を図る点にあった。ガットは実は暫定的な機関として設置されたもので国際機関としての設立協定を備えていなかった。そのために総会、理事会等に法的根拠が存在せず、その規制力は弱いものにならざるをえなかった。
ようやく95年1月に世界貿易機関(WTO)が発足した。本部はジュネーブ。
@WTO協定を運用して、貿易がルールの基づき円滑に行われることを支援し、あわせて各国の貿易政策を監視すること。Aパネルを設置して、政府間の貿易紛争を解決することB貿易交渉を再開すること、等を任務とする。
2001年11月のドーハ閣僚会議でWTO発足後初となるラウンドが開始された。参加国数は第1回交渉時には23に過ぎなかったものが150に迫ろうとしていた。
ドーハ・ラウンドでは市場アクセス交渉3分野とその他の交渉5分野に交渉分野が設定された。問題の前者は農業部門、NAMAとして知られる非農産品市場アクセス、サービス3部門に別れる。2005年1月までに終わる計画だったが、2006年になっても合意できず一時中断されることとなった。交渉凍結の原因は「争点の三角形」と呼ばれる三つの問題@農産物の関税引き下げA農業分野における国内補助金B非農産品への市場アクセス(NAMA)で主要6カ国(豪州、ブラジル、EU、インド、日本、米国)の意見が一致しなかったことである。
2007年1月に再開され、2008年中の合意を目指して行われたのが今回のジュネーブ会議。
今回、わが国で問題となったのは重要品目の扱い。重要品目というのは関税削減幅を例外的に低く抑えることができる農産物品目のことである。調停案は重要品目の数を原則4%とし、低関税の輸入枠を増やす代償措置を取れば2%の上乗せを認め、最大6%を確保できるとした。米国、EU、食料輸出国がいづれも妥協し、日本は受け入れざるを得ない状況になった。
日本の品目数は、米をもみや玄米、精米などのように細かく分類した場合の全部で1332品目。200%超の高関税をかけているコメや小麦、乳製品など101品目のできるだけ多くを重要品目として保護したい考えだった。しかし「4%」なら53品目しか重要品目にできない。
幸か不幸か、日経新聞(30日)によれば結局今回も閣僚会議は決裂した。
「最大の原因は、インドなどが関税削減で輸入が急に増えた場合、緊急輸入制限の発動を途上国や新興国の判断で行えるよう求めたが、米国は拒否。逆に中国は、米国が行っている国内農家にむけた農業補助金一段の削減を求めたが折り合わなかった」交渉再開の目途は「最短でも米国の新政権が軌道に乗るまで難しい。」そうだ。
日本は農業分野では高い関税を維持できるものの、新興国の工業製品への高い関税を減らすことができなくなった。一方でFTA・EPA交渉が各地域で進み、経済のブロック化が進展していることを考え合わせれば、ガット以来の目標であった世界の自由貿易推進の気運もしぼむ恐れが出てきたといえる。
最後に個人的見解。それでも交渉は、いづれ再開されるように感じる。日本の食料自給率が低く向上させる必要がある、との話は理解できるにしても、たとえばコンニャク芋はわずか4200戸の農家の利益を守るために1700%もの関税をかけているという。米も700%を越えるとか。そこまでしてこの方針を貫かなければいけないのか。それにこのような保護政策を続ければ日本の農業が競争力をつける努力をしなくなる。また一般消費者の立場は無視され続けるのか。守るべき国益とは一体何なのだ・・・・・・。その辺、皆さん、どう思われますか?
(参考資料)樋口 修 GATT/WTO体制の概要とWTOドーハ・ラウンド農業交渉、日本経済新聞記事ほか
註 ご意見をお待ちしています。
e-mail agatha@bekkoame.ne.jp
home-page http://www.bekkoame.ne.jp/~agatha