肉屋と違って、魚屋で魚を買うときにはどうやって料理するかを考えてしまう。それが思いつかなかったり、面倒くさいと感じると買わない。いつかはヤガラというものを売っていた。鰻の親分みたいに長く、1メートル以上もありそう。おいしいということだが、とても買えない。ヤガラほどではないけれども、尻込みする食材に烏賊がある。
一つには料理の仕方をそれほど知らない。
私のお得意の烏賊の料理法は壇一雄の「壇流クッキング」に出ていた。烏賊を一杯、内臓と一緒にぶつ切りにし、塩コショウしてしばらくおく。フライパンにオリーブオイル、大蒜、唐辛子をいれて煙が出るほど強熱する。そこにすべてを、ぶちこむのである。
そのほかの料理もできないではない。しかし大抵は内臓などゴミが一杯残る。すぐに回収してもらわないと台所が臭くなる。これが第二の欠点。三番目はやっぱり料理に少々時間のかかる点。ここのところはうまいものを食おうと思えば耐え忍ばねばならぬ。
先日「ためして合点」で烏賊の料理の仕方を放送していた。
函館は、烏賊の産地である。我々は烏賊の刺身を作るときに皮をむいて烏賊を横に、普通は7mm幅くらいで切り、醤油わさびで食う。ところがこのやり方で調理したものを函館人に見せたところびっくりした様子。彼らはたてに幅1mmくらいに細切りにする。まるで烏賊ソーメンである。これに大根おろし、摩り下ろした生姜、醤油をかけ混ぜ合わせる。ご飯にかけて食うと何杯でも食えるというのである。
九州のどこやらの島。烏賊の天麩羅は、何とか言う烏賊を使うとうまい、と言う。値段も大分高い。しかしそれが手に入らない場合、普通のするめ烏賊でもおいしい天麩羅が作れるそうだ。島で烏賊の天麩羅を作らせたら一番うまいという老人が、観光客に作って見せていた。十分熱くなった油に衣をつけた烏賊を入れること、わずかに7秒、長くても短くてもいけない、それで取り出してしまう。烏賊の肉は熱しすぎると硬くなる、それを避けるために中が60度になるくらいで取り出すのがいいのだそうだ。
烏賊の茹で方の紹介。足と胴をばらばらにし、冷たい水にいれ、火にかける。水がだんだん温まってくると、胴はふっくらと膨れてくる。足は微妙に動き出す。その段階で料理はオシマイ、取り出してしまう。これもそのような状況のときに烏賊の内部の温度が、ほぼ60度になるのだそうだ。
茹でた烏賊を輪切りにし、それをレタスなどの野菜の上に乗せ、熱した油をかける料理を紹介していた。また適当なたれをつくりかけてもおいしいようだ。下足の方はぶつ切りにする。あらかじめ別にしてあった烏賊の内臓を裏ごしする。これにみりん、醤油などの調味料をいれて加熱する。下足に絡ませると和え物ができるという。
自分も作ってみようと今日は魚屋でやり烏賊を二杯買ってきた。烏賊は実は種類によって大分味が違うのだそうだ。隣の白烏賊は、魚屋はうまいというが値段が3倍以上、あきらめた。
紹介された料理全部を一時に作る分けに行かぬから、刺身とぬた和えにすることにした。
それほど難しくもなく期待通りの味が出たようだ。唯一つ気がついた点、烏賊をソーメンのように細く切るには、よく切れる包丁が必要だ、ということ。私は、いつも使う柳刃包丁を使ってできるだけ細く切るようにしたけれど、それでも少々太く感じられた。細く切った烏賊と大根おろしはびっくりするくらい相性がいい。
ぬたの方は内臓が酒と加熱されて上品な味になり、なかなかいけるように思う。
最後に夕食を一緒にとったガールフレンドのAさんが心配するのである。
「おいしいけれど、大丈夫かしら。烏賊は消化に悪いんでしょう。」
そこでウエブサイトでいくつかのページを調べたところ、これは間違いのようで、消化率はほかの魚と大差なく、血中のコレステロールを下げるタウリン、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)などが多く含まれ、たんぱく質としても良好、低脂肪でダイエットにむいていると結構ずくめであった。
またここに書いた料理方法とは逆になるが、長く煮れば肉も柔らかくなる、とあった。どのくらい長く煮るのかは分からなかった。
私の通信にも過去に烏賊を扱ったものがいくつかある。それらを今あわせ読んでみると少し薀蓄の幅がひろがるかもしれない。
(106)イカの話、(299)イカの塩辛、(571)ホタルイカが弁当箱二つ
(後記)後日に烏賊の天麩羅を作ってみた。7秒、正確に腕時計で測りながら作った。決してあげ方が不足している様子はない。やわらかく烏賊らしくおいしい。
註 ご意見をお待ちしています。
e-mail agatha@bekkoame.ne.jp
home-page http://www.bekkoame.ne.jp/~agatha