アジサイの美しい季節になった。
いかにも日本的な美しい花だが、私は深く関心を持ったことはなかった。
若い時、ガールフレンドの葉書に紫陽花と書いてあったが読めなかった。あの花はもともとガクである、青い色になったり、ピンク色になったりするけれども、土壌がPHによって変るのだ、と学校で習った。我が家の奥の方にも青いのが打ち捨てられたように植わっていた。アジサイで有名な鎌倉の明月院に行ったことがあるが、季節ではなかったから余り印象に残っていない。私とアジサイのご縁はせいぜいこんなものだ。
ところが最近知人の花好きの女性から墨田の花火というアジサイの話を聞いた。
「事業で失敗したある人が、アジサイの花を見ているうちに自分の心のようにブルーだ、と感じたの。それでアジサイを研究する気になって日本全国を歩いた。あるところで変わったアジサイの株をみつけ、改良していってこの花を作り出したの。ほら、この花の先がとがっているところが花火みたいでしょ。最初は花火というなで売りだしたんだけれど売れなかった。そこで園芸業者と相談して墨田の花火とネーミングしたら、爆発的に売れるようになった。そのおかげで件の男の人も幸せな老後を送ることが出来た。5年位前の新聞に書いてあったわ。」
小さな白い八重咲きの花で、なかなか可憐である。
それからアジサイをしげしげ眺めるようになり、少し調べてみようと思った。また図書館にインターネットである。
まずアジサイはユキノシタ科アジサイ族に属する。なぜ落葉低木のアジサイが多年草のユキノシタと同じ種族なのかは分からない。
名前は「アズ(集まる)」と「サイ(藍色)」から生まれたともいわれている。万葉集にはアジサイについての句がすでに二首あるそうだ。
もともと日本の植物だが、中国にいってヨーロッパで品種改良されたものが西洋アジサイ。これは花屋では英語名「ハイドレンジャー」の名で売られていることが多い。
アジサイは大きく分けるとガクアジサイ、山アジサイ、西洋アジサイなどに分けられる。ガクアジサイは、真ん中に結実する小さな両性花がひっそりと咲き、周囲におしべ、めしべが退化し、ガクばかりになった中性花をつける。我が家にあったのもこの手だった。山アジサイや西洋アジサイは中性花ばかり。すると種ができるのかどうか知りたいがわからなかった。
アジサイの不思議といえば先述の色変り。江戸時代には七変化とか八仙花と呼ばれた。
変化の原因は土壌のPHなどだが、少し詳しく書くと以下のようになる。東京学芸大学教授の武田幸作著「アジサイはなぜ七色に変わるのか?」から抜粋しているのだから、ちょっとばかり専門的。
花の色を支配するものはフラボノイド、カロチノイド、ベタレイン、クロロフィルで4大色素といわれる。
フラボノイド・・・白からクリーム黄、黄、橙赤、赤紫、青まで、いろいろな色をだす。
カロチノイド・・・黄から橙、橙赤をだす。
ベタレイン・・・・黄から赤、紫をだす。
クロロフィル・・・・緑をだす。
フラボノイドは白からクリーム色をだすフラボン、白からクリーム色をだすフラボノール、黄色から橙赤を出すカルコン、オーロン、それに橙赤から赤、紫、青、水色まで広範囲の色をだすアントシアニンなどに分かれる。この中のデルフィジン型アントシアニンがアジサイの紫から青みがかった赤い色をだす。
しかしアジサイの色はアントシアニンだけで決まるわけではない。アントシアニンに補助色素およびアルミニウムがそろうと、はじめてアジサイは青色の花として開花する。補助色素やアルミニウムがかけると赤くなってしまう。
アジサイの色についての疑問はほかにも「咲き分けはなぜ起こるか」「土壌にみょうばんを添加するとなぜ青くなる?」「きれいな青になることを妨げる物質がある」「花が咲き始めるにしたがって花の色が黄緑、緑、赤、青、退色して薄い色と変化するのはなぜ。」などいろいろ考えられるが、興味のある人は原本を読んでほしい。
ところで知識のない私はアジサイなんて二、三種と思っていたが大違い。
和歌山県の救馬渓観音では今年「あじさい曼荼羅園」をオープンするとかで、立派なホームページを作っている。そこでは現在57種8000株のアジサイが栽培されているそうだ。種類がリストアップされ、それにリンクする形で花の写真が見られるようになっている。アジサイ(手まり形)、ガクアジサイ(ガク)、先述の墨田の花火(ガク)のほかカシワバアジサイ(円錐形)、クロアジサイ(手まり形)、アナベル(手まり形)ラブユーキッス(ガク・・・・何を想像する?)等々。
私が調べたばかりの話をすると、くだんの女性はわが意を得たりとばかり「近くのお寺の後ろにある道路にそって、いろんな種類のアジサイが植えられているところがある。ちょっと見てゆきましょう。」と誘ってくれた。
名前がすべてわかるわけではないが、青いもの、赤いもの、白いもの、緑色のもの、丸いもの、四角いもの、とがっているもの、フレアスカートのようになっているもの、おおきいもの、小さいもの等、様々なアジサイが今を盛りと咲き誇り、道行く人の目を楽しませている。
先述の本にあじさいの青や赤や緑について説明があったが、白については何も書いてなかった。フラボンかフラボノールでも出来て影響しているのかも知れない、と考えた。アジサイ学もなかなか奥が深そう、皆さんも研究して見ませんか?
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