691「戸田海岸でご清遊」(9月10日(水)晴れ)

一泊で静岡県戸田(へだ)村に行ってきた。
伊豆半島西海岸、土肥より少し北、大瀬より少し南にあるこの村は、砂州が海に突き出て小さな湾を作っている。
高校生のときに一度、大学生のときに一度、戸田の海に泳ぎに行ったことがある。
T大学の寮が砂州の先端近くにあったからだ。
砂州のおかげで相模湾の荒波をさけ、戸田湾は驚くほど静かである。
西伊豆はかっては秘境といわれたほど。いまだに鉄道がない。
高度成長時代小田急が進出するなどという話もあったが立ち消えになった。交通機関はバスと船だけ。そのバスも、戸田の場合、どうやら修善寺と連絡しているようで、沼津との連絡は一日3便か4便の船のみ。

沼津の魚市場で寿司の昼飯を食べた後、沼津港の切符売り場に行く。
往復の切符を買おうとしたら「明日は船の定期点検なので欠航です。変わりにタクシーでこちらまで送ります。」乗船。高速ホワイトマリン・・・・名前は格好いいけれど、漁船を連絡船に変えたような代物。昔と変わらない気がする。
大きな音をたてて、波をちらしながら海を豪快に進む。ガンガンガンと大きな音を立て、確かに船に乗っている、という気がすることは間違いない。
大瀬にも戸田にも小さな灯台がある。それらを回るようにして船は戸田湾に入り込む。

ホテルは高台にある「きむらやつわぶき」だが、なかなかよかった。
崖に覆いかぶさるように建てたホテル、フロントは4階、私たちの部屋は二階だが、そこから海に降りてゆくことができる。
岬の相模湾側には堰堤がずっと続いており、海上はるかに今日はちょっとかすんでいるが、富士山が見える。ここと大瀬は富士のきれいに見える場所としても有名だ。
灯台の少し手前で堰堤をおり、戸田湾の海岸に降りる。
クレーン車がきており何かと思ったら、夏の「海の家の取り壊し」らしかった。
親子連れが一組だけ、広い海を独占して水遊びをしている。実を言うと戸田湾で砂浜が残っているのは砂州の内側だけである。そのほかはみな港の設備などになり味気ない。
森の中にあるのがT大寮らしい。建て替えたようだが、なんとなく懐かしい。
小さな神社があり、堰堤に再び登り、歩み続けると砂州をまわり、逆方向から灯台に出る。
T大寮と神社はいいところにある。いつまでもおだやかな砂浜を守ってほしい。開発されて巨大なホテルでも建てられた日には目も当てられない、と他所の例を思った。

旅のお目当ては夕食。海の幸を使った懐石料理がテーブル一杯に並んだ。しかしここの名物はなんといっても高足蟹。
以下はあとからインターネットで調べた話。
高足蟹は駿河湾を代表する世界一大きな蟹である。
もっとも生息区域は千葉犬吠埼から九州南部にまで渡る。
呼び方も地方によって異なり、駿河興津ではシマガニ、神奈川県三崎ではバンバガニ、高知県ではクモエビ、千葉県房総半島ではシビトガニ、そのほかにもオオガニなどと呼ばれる。
大きいものでは3m以上あり、水深200-300mくらいのところに生息している。
もっとも巨大になるのは雄だけ。又大きいといっても足がひどく長いだけ。よく捕獲されるサイズは1-2mのものとか。その生態はほとんど解明されておらず、活かし続けておくことも難しい。トロール船による底引き網漁か籠を仕掛けて取る。
ボイル、焼き、刺身で食べられるが、放っておくと、どんどん身が溶けて水になってしまうから料理の仕方が難しいのだそうだ。
そんなことで値段も高い。ホテルで売っているが一匹2-3万円とか。
ズワイガニと一緒に茹でて足の一部がふた切れほど出てきた。やや水っぽく、ズワイ蟹のような肉のぷりぷりした感触はなく、物足りなく感じられたがまずは話の種。

翌日、きれいな富士を見たいと、浜に下りたがやっぱりかすんでいた。
好天に恵まれ、素晴らしい旅であったが、富士だけが残念!伊豆は不便と書いたが、道路だけはかなり整備された。昔は曲がりくねっていたものを、トンネルを作るなどしてずいぶん便利にした。タクシーといっても現実は小さな乗り合いバスで沼津に戻った。

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